就職活動中のSPI試験対策として、多くの受験者がつまずきやすい非言語分野。その中でも特に「ある商品を定価の20引きで売った」といった割引や利益に関する損益問題は、頻出かつ誤答が多い分野として知られています。「定価の○%引き」と言われて混乱し、「利益が出たのか損なのかよくわからない」と悩んだ経験はありませんか?
この記事では、SPI非言語における損益問題の中でも特に典型的な構文である「定価の◯%引きで売った」というタイプの問題を取り上げ、基本的な用語から出題パターン、よくある間違い、そして本番での解答スピードを上げるためのテクニックまで、段階的にわかりやすく解説していきます。
まずは、なぜこの手の問題がSPIで頻出するのか。その理由を踏まえた上で、定価・原価・売価・利益・損益などの用語を整理し、混同しやすい「割引率」と「利益率」の違いを丁寧に見ていきます。さらに、出題傾向に基づいた複数の問題パターンや、時間内に正答を出すための暗算術、解き方のフレームワークなど、実践力を高めるための具体的なトレーニング内容も取り上げます。
SPI試験はスピード勝負でもありますが、それ以上に「構造の理解」が求められます。問題に出てくる数字や条件に惑わされず、どんなパターンでも「自分の型」で解けるようになるためには、本質を押さえた学習が不可欠です。
この記事を読み進めることで、SPI損益問題への苦手意識が和らぎ、自信を持って本番に臨めるようになることを目指します。次章から、まずはSPI非言語分野の位置づけと、損益問題の出題傾向を確認していきましょう。
1. SPI非言語でよく出る損益問題とは
SPI試験における非言語分野は、数的処理、論理的思考、データ分析などを問う問題で構成されています。なかでも「損益問題」は、現実世界に即したビジネスシーンを意識した出題として、多くの企業で重視されています。この章では、損益問題の基本的な位置づけと、なぜこのテーマが出題され続けているのかについて、順を追って解説していきます。
1-1. SPIに出題される非言語問題のジャンルとは
SPIの非言語問題には、いくつかの主要なジャンルがあります。代表的なものは次の通りです。
- 四則演算や割合計算を用いる「損益算」
- 仕事の分担と効率を考える「仕事算」
- 時間と距離に関する「旅人算」
- 複数条件を整理して正解を導く「集合算」
- 表やグラフを読み取る「データ解釈」
これらの中でも、「損益算」はとくに基本的かつ出題頻度が高いテーマです。理由は、売上・利益・コストといった企業活動の基本を数式で理解できるかを見極めるためです。SPIを実施する企業側は、単なる暗算能力だけでなく、「状況を読み解き、必要な計算を素早く正確に行う力」を求めています。損益問題はその力を測るのに適しているため、定番出題となっているのです。
1-2. 損益問題が就活試験で問われる理由
損益問題がSPIで問われる理由には、いくつかの重要な背景があります。
まず、ビジネスでは「コスト感覚」と「収益感覚」が欠かせません。商品やサービスを提供する際に、原価を理解し、適切な価格設定ができるか、どれだけの利益が見込めるかを判断する力は、あらゆる職種で求められる素養です。たとえ営業職や事務職であっても、数字の感覚を持っている人材が重宝されるため、SPIを通じてその素養をチェックしているわけです。
また、損益問題は、文章問題を読み解き、条件整理を行い、必要な計算を適切な順序で行う必要があります。この一連のプロセスは、実際のビジネス場面における問題解決力に直結します。たとえば、売上目標達成のために値引き戦略を検討する、仕入れコストを削減して利益率を改善する、といった場面での思考と同じ型を要求されるのです。
つまり、損益問題に強いということは、単なる計算力だけでなく、ビジネス的な思考力があることを証明できるというわけです。
1-3. 「ある商品を定価の20引きで売った」問題の特徴
今回取り上げる「ある商品を定価の20引きで売った」というタイプの問題は、損益問題の中でも基本中の基本といえるものです。しかしながら、初学者がつまずきやすいポイントが多く含まれています。
この問題文の「定価の20引き」という表現は、「定価の20%引き」という意味であり、販売価格が定価の80%になることを示しています。ところが、問題文が「20%引き」とだけ書かれている場合、利益率と混同してしまったり、原価との関係を見失ってしまったりする受験者が非常に多いのです。
また、この種の問題は、単に販売価格を求めるだけではなく、そこからさらに原価、利益率、損益額などを問う複合的な設問が出されることが一般的です。そのため、最初のステップである「割引後の価格の正確な把握」ができないと、後続の計算すべてがずれてしまいます。
この章では、まず損益問題がSPI試験でどのように位置づけられているかを確認しました。次章では、損益問題を正しく解くための前提となる「基本用語の整理」を行い、定価・原価・売価・割引率といった概念を具体的に理解していきましょう。
2. 基本の用語整理:定価・原価・売価・割引率の意味
損益問題に強くなるためには、まず基本となる用語を正しく理解することが欠かせません。定価、原価、売価、割引率、利益率、損益率といった言葉がきちんと頭に入っていれば、問題文を読んだだけで必要な計算式が自然に思い浮かぶようになります。この章では、これらの用語について具体例を交えながら整理していきます。
2-1. 定価と売価、原価の違いを具体例で理解する
まず最初に押さえておきたいのは、定価・原価・売価の違いです。言葉の定義と実際の数字を合わせてイメージできるようにしましょう。
- 定価:商品に最初に設定された販売価格。お店が「この価格で売りたい」と決めた金額です。
- 原価:商品を仕入れるためにかかった費用。つまり、お店側が商品を手に入れるために払った実際のコストです。
- 売価(販売価格):最終的に実際に売った価格。定価から割引されたり、特別価格になったりすることがあります。
具体例で見てみましょう。
たとえば、あるTシャツの定価が5,000円だったとします。このTシャツをお店が原価3,000円で仕入れてきたとすると、普通に売れば2,000円の利益が出ます。しかし、もしセールで20%引き(つまり1,000円引き)して売価4,000円で売ったとしたら、利益は1,000円になります。
このように、定価・原価・売価はそれぞれ違う意味を持っていること、そして問題文に応じてどれが与えられ、どれを求めなければならないのかを見極めることが重要です。
2-2. 割引率・利益率・損益率の正しい計算方法
次に、割合に関する用語を整理しましょう。
- 割引率:定価に対してどれだけ値引きされたかを示す割合。たとえば「20%引き」は、定価の20%分安く売るという意味です。
- 利益率:原価に対してどれだけ利益が出たかを示す割合。利益率は「利益 ÷ 原価 × 100」で求めます。
- 損益率:原価に対して最終的な損益がどれだけだったかを示す割合。利益が出ればプラス、損失が出ればマイナスになります。
これらも具体例で確認しましょう。
【例】
- 定価:10,000円
- 原価:7,000円
- 割引率:20%(2,000円引き)
- 売価:8,000円
このとき、利益は「売価8,000円 − 原価7,000円=1,000円」です。
利益率は「1,000円 ÷ 7,000円 × 100=約14.29%」となります。
ここで注意したいのは、割引率と利益率は全く別物だということです。割引率は定価に対しての割合、利益率は原価に対しての割合なので、問題文の中でどちらが求められているかを正確に読み取る必要があります。
2-3. 数字を見て混乱しない!用語整理トレーニング
実際のSPI問題では、数字がいくつも登場し、条件も込み入っていることが多いです。そのため、問題を読むたびに「これは定価の話か?原価の話か?売価の話か?」と立ち止まって考える癖をつけましょう。
おすすめは、問題文に出てきた数字の横に「定価」「原価」「売価」とメモすることです。たとえば、
商品を定価の20%引きで販売したところ、利益率は10%だった。
という問題文なら、
- 定価 → 基準価格
- 割引後の売価 → 定価の80%
- 原価 → 売価に対してさらに利益率10%の関係にある
というふうに、整理してから計算を始めます。
また、原価・定価・売価を単に「金額」として見るのではなく、それぞれの間にどんな割合の関係があるかに着目する癖をつけると、より素早く正確に問題を解けるようになります。
このように基本用語をしっかり整理しておくことで、複雑な損益問題にも柔軟に対応できる土台ができあがります。次章では、実際に「定価の20%引きで売ったとき」にどう考えればいいのか、具体的なアプローチを学んでいきましょう。
3. 「定価の20%引き」で売ったときの考え方
「定価の20%引きで売る」という表現は、SPIの損益問題で非常によく出てきます。しかし、このタイプの問題では、割引率と利益率を混同したり、定価と原価の関係を見失ったりするケースが多発します。この章では、割引後の売価を正しく計算する手順と、そこから利益をどう導き出すかを、順序立てて説明していきます。
3-1. 実際に売った価格はいくらになる?
まず押さえておきたいのは、割引率が与えられたら、それを定価に適用して売価を出すということです。
例えば、定価10,000円の商品を「20%引き」で売った場合、実際の売価はこう求めます。
- 20%引き=定価の20%分を値引く
- 値引き額=10,000円 × 0.2=2,000円
- 売価=10,000円 − 2,000円=8,000円
もしくは、
- 売価=定価 × (1−割引率)=10,000円 × 0.8=8,000円
どちらの計算でも結果は同じです。素早く解きたい場合は、「割引後の割合に一発で掛ける」考え方を身につけると時短になります。
つまり、「20%引き」と言われたら、「80%を掛ける」と反射的に動けるようにすることが大切です。
3-2. 割引と利益はどう違う?混同しないための視点
ここで注意したいのは、「割引」と「利益」はまったく別の概念だということです。
- 割引:定価に対していくら安く売ったか、の話。
- 利益:原価に対していくら得したか、の話。
たとえば、定価10,000円の商品を8,000円で売った場合、確かに20%の割引ですが、利益が出ているかどうかは原価によるのです。
仮に原価が7,500円なら、
- 利益=売価−原価=8,000円−7,500円=500円
- 利益率=500円 ÷ 7,500円 × 100=約6.67%
逆に、原価が8,500円だったら損をしてしまいます。
つまり、割引率だけでは利益が出たかどうかはわからず、必ず原価を考慮する必要がある、ということをしっかり覚えておきましょう。
3-3. 原価がわからなくても式で追える考え方
SPIの問題では、原価が明示されていないこともよくあります。その場合は、原価をx円と置いて式を立てるのが基本です。
例えば、次のような問題を考えてみましょう。
ある商品を定価の20%引きで販売したところ、原価の25%の利益が得られた。定価は原価の何%か。
まず、状況を整理します。
- 定価をD円、原価をx円とする。
- 売価はD円の80%(0.8D)。
- 利益は原価の25%なので、利益額=0.25x。
- 売価=原価+利益 → 0.8D=x+0.25x=1.25x。
ここから式を変形していきます。
- 0.8D=1.25x
- x=(0.8/1.25)D
- x=0.64D
つまり、原価は定価の64%ということがわかります。問題によっては「定価は原価の何%か」を聞かれることもありますが、その場合は逆に、
- 定価=x ÷ 0.64
を使って計算すればOKです。
このように、原価がわからない場合も、xやDなどの文字を使って式を立てていくことが、損益問題を確実に攻略するための基本手順となります。
ここまで理解できたら、次章では実際にSPIでよく出る出題パターンを具体的に整理し、それぞれの問題タイプに合わせた解法テクニックを解説していきます。
4. よくある出題パターンと攻略法
損益問題と一口に言っても、SPI試験ではさまざまな出題パターンが存在します。基本の式や考え方を押さえたうえで、それぞれのパターンごとに「どうアプローチすればよいか」を身につけることが、素早く正確な得点につながります。この章では、特によく出る4つのパターンと、それぞれに合った攻略法を解説します。
4-1. 「定価の〇%引きで売って利益が出た」タイプ
このパターンは非常に基本的ですが、利益率と割引率の関係を正しく理解していないと間違いやすい問題です。
【問題例】
ある商品を定価の20%引きで売ったところ、原価の25%の利益を得た。定価は原価の何%か。
【攻略法】
ポイントは、売価の式を2方向から考えることです。
- 売価=定価×(1−割引率)
- 売価=原価×(1+利益率)
この2つをイコールで結び、定価と原価の関係を式にして解きます。具体的な計算は前章で説明した通り、文字式を使って処理するのが鉄則です。
この型に慣れていれば、似た問題もすぐ対応できるようになります。
4-2. 「仕入れ値に〇%の利益を乗せたが割引した」タイプ
このタイプは、まず利益を乗せた価格(希望売価)を作り、それをさらに割引して実際の売価にする、という二段階の設定になっています。
【問題例】
原価に30%の利益を見込んで定価を設定し、そこから10%引きで販売した。利益率は何%か?
【攻略法】
この問題では、
- 定価=原価×(1+利益率予定)
- 売価=定価×(1−割引率)
という2段階で考えます。
最後に、実際の利益率は、
- 実際の利益=売価−原価
- 実際の利益率=(実際の利益)÷原価
で求めます。特に、割引が入ると「利益が想定より減っている」ことを意識しないと間違いやすいので注意しましょう。
4-3. 「販売価格と原価の関係を問う」逆算タイプ
問題文では直接割引率や利益率が与えられず、売価と原価の比率や差額だけが示される場合もあります。
【問題例】
商品を定価の20%引きで売ったら、売価は原価の1.5倍だった。定価は原価の何%か。
【攻略法】
この場合も、文字式を使って関係式を立てていきます。
- 売価=定価×(1−割引率)
- 売価=原価×1.5
この2つの売価が等しいので、定価と原価の関係式を作ることができます。
逆算タイプは数字を追うだけでなく、「何を基準に割合が設定されているか」を常に意識することが正確な解答への近道です。
4-4. 表や図で出題されるケースの読み取り方
最近のSPIでは、単なる文章問題だけでなく、簡単な表や図を見て損益に関する問いに答えさせる問題も増えています。
【問題例】
以下の表は、商品の定価、割引率、販売個数をまとめたものです。総売上高はいくらか、利益率はいくらかを求めなさい。
【攻略法】
表や図が出てきたら、まず「何の情報が与えられているか」を整理します。
- 定価×(1−割引率)=売価(1個あたり)
- 売価×販売個数=売上高(各商品ごと)
- 売上高の合計から原価の合計を引くと、総利益が出る
表にあるデータを一つ一つ丁寧に読み取り、順番に式を立てていく冷静さが求められます。
また、特にミスしやすいポイントは、「割引率を引き忘れる」「販売個数をかけ忘れる」などの単純な操作ミスなので、表計算をするときは一段一段チェックする癖をつけましょう。
このように、損益問題にはいくつかの典型パターンがあり、それぞれでアプローチすべき考え方が違います。次章では、これらの問題に共通して使える頻出公式と、公式の覚え方・使い方について詳しく解説していきます。
5. SPI損益問題の頻出公式と使い方のコツ
SPIの損益問題では、いくつかの公式や計算パターンを理解しておくことで、問題を素早くかつ正確に解くことができます。ただし、単なる丸暗記では応用がきかないので、「なぜこの式が成り立つのか」を納得しながら覚えることが大切です。この章では、損益問題に必須の公式と、その使い方のコツをお伝えします。
5-1. 基本の損益公式(売価=原価×(1+利益率))の意味
損益問題の基本中の基本が、この公式です。
売価=原価×(1+利益率)
ここでいう利益率は、「原価に対して何%の利益を上乗せするか」を示しています。
【例】
原価が2,000円で、利益率が25%なら、
売価=2,000円×(1+0.25)=2,500円
となります。このように、原価を基準に利益を加算して売価を求めるのが基本の流れです。
なお、利益率をパーセント表記のまま使うのではなく、小数(25%→0.25)に変換して計算するのが正確かつ素早い方法です。SPI本番でも、パーセント表示に惑わされず、即座に小数に変換するクセをつけておきましょう。
また、式を変形すれば、
- 原価=売価÷(1+利益率)
にも使えるので、利益率と売価から原価を求める問題にも対応できます。
5-2. 割引と利益を合わせた複合問題への対応法
損益問題の難易度が上がると、割引と利益が同時に絡むパターンが出てきます。このときは、以下のように二段階で考えます。
- 定価に対して割引率を適用し、売価を出す
- 売価と原価から、利益や利益率を求める
公式を並べると、
- 売価=定価×(1−割引率)
- 売価=原価×(1+実際の利益率)
この2つを連結させることで、未知の数値(定価・原価・利益率など)を求める式を作ることができます。
【例】
定価の20%引きで売り、原価の30%の利益を得た場合。
- 売価=定価×0.8
- 売価=原価×1.3
これらを連立して解くことで、定価と原価の比率を求めることが可能です。
この二段構えを自然に使えるように練習しておくと、複雑な損益問題にも強くなります。
5-3. 暗記に頼らず「なぜそうなるか」を理解する方法
SPI対策において最も大切なのは、公式を丸暗記することではなく、公式の意味と成り立ちを理解することです。
たとえば、なぜ売価が「原価×(1+利益率)」で表せるのか。これは、「原価の100%」に「利益率分の%」を足したものが売価だからです。原価がベースになっていて、そこに追加で利益分が乗る構造をイメージできれば、無理に覚えようとしなくても自然に公式を導き出せます。
また、「定価から20%引き」と言われたら、なぜ「定価×0.8」になるのか。それは「100%−20%=80%」の意味だからです。定価を100%と見なし、割引で減る分を差し引いて考える。この感覚が身につけば、どんな割引率でも自分で式を作れるようになります。
このように、公式を覚える前に、構造を理解しておくことがSPI損益問題を本当に得意分野にするための最短ルートです。
次章では、実際のSPI問題にチャレンジしながら、これまで学んだ知識をどのように使うかを具体的にトレーニングしていきます。体感を通して定着させていきましょう。
6. 実践トレーニング:SPI問題を例題で解いてみよう
これまでに損益問題の基本概念、公式、考え方を整理してきました。ここからは、実際にSPI形式の例題に取り組みながら、知識を使いこなせるようにしていきます。本番に近い形で演習を重ねることで、自然とスピードと正確さが身についていきます。
6-1. 例題① 定価の20%引きで売ったときの売価と利益
【問題】
ある商品を定価10,000円の20%引きで販売しました。原価は7,000円です。このとき、売価と利益はいくらになるでしょうか。
【解説】
まずは売価を求めます。
- 売価=定価×(1−割引率)
- 売価=10,000円×0.8=8,000円
次に、利益を計算します。
- 利益=売価−原価
- 利益=8,000円−7,000円=1,000円
【ポイント】
割引率を素早く売価に適用し、その売価と原価の差額で利益を出す流れをマスターしましょう。
6-2. 例題② 原価を求める問題の組み立て方
【問題】
ある商品を定価の20%引きで売ったところ、原価の25%の利益が得られました。定価は10,000円です。原価はいくらでしょうか。
【解説】
まず売価を求めます。
- 売価=定価×0.8=10,000円×0.8=8,000円
次に、利益率の式を立てます。
- 売価=原価×(1+利益率)
- 8,000円=原価×1.25
原価を求めるために式を変形します。
- 原価=8,000円÷1.25=6,400円
【ポイント】
「売価」と「原価+利益」の関係を素早くイメージできるように練習しておきましょう。
6-3. 例題③ 定価と利益率の関係を問う応用問題
【問題】
ある商品を原価の30%の利益を見込んで定価を設定しました。その定価から20%引きで売った結果、原価に対して10%の利益しか得られませんでした。このとき、原価に対する定価の割合は何%でしょうか。
【解説】
まず、流れを整理します。
- 定価=原価×1.3(30%利益を見込んで設定)
- 売価=定価×0.8(20%引きで販売)
- 実際の売価=原価×1.1(実際に得られた利益率は10%)
式にまとめます。
- 原価×1.3×0.8=原価×1.1
両辺を原価で割ります。
- 1.3×0.8=1.1
- 1.04=1.1
あれ?一致しませんね。どこかに誤りがあるかを点検しましょう。ここで気づくのは、問題文の「設定」と「結果」をどうつなぐかです。
まず、設定段階では「定価を原価の1.3倍に設定」しています。売価はその定価の80%だから、
- 売価=原価×1.3×0.8=原価×1.04
実際には、売価は原価の1.1倍であるべきなので、設定に間違いがあるわけです。
つまり、定価の設定倍率をxと置くと、
- 売価=原価×x×0.8
- これが原価×1.1に等しい。
式にすると、
- 原価×x×0.8=原価×1.1
- x×0.8=1.1
- x=1.1÷0.8
- x=1.375
つまり、定価は原価の137.5%に設定すべきだった、ということです。
【ポイント】
こういった応用問題では、「何を基準に」「どの順番で条件が適用されているか」をしっかり整理することが何より大切です。
6-4. 解き方の流れを体で覚える!演習セットのすすめ
損益問題では、次のような解き方の型を体に覚えさせることが効果的です。
- 問題文を読んだら、まず「定価・原価・売価」の関係をメモ
- 割引や利益の情報が出てきたら、それぞれに式を立てる
- 与えられた条件を結び付けて方程式を作る
- 最後に求めたいもの(原価、定価、利益率など)を整理して答えを出す
この流れを何度も反復して演習していけば、本番でも慌てることなく問題を解けるようになります。
ここまで実践問題を通じて、損益問題の基本的な流れと考え方を確認してきました。次章では、ミスを防ぐために特に注意すべきポイントと、陥りやすい落とし穴について詳しく見ていきます。
7. ミスを防ぐSPI計算の落とし穴と対策
SPIの損益問題は、基本的な計算ルールさえ押さえていれば決して難しくはありません。しかし、実際の試験では「わかっていたはずなのに間違えた」というミスが頻発します。その原因の多くは、問題の読み間違い、式の立て違い、または割合の捉え方にあります。この章では、特に注意すべき落とし穴と、ミスを防ぐための実践的な対策を紹介します。
7-1. 「20%引き」と「利益が20%」はどう違う?
損益問題で特に多いミスが、割引率と利益率の混同です。
- 「20%引き」は、定価を基準に20%下げるという意味
- 「利益が20%」は、原価を基準に20%増やすという意味
基準が異なるため、単純に同じ「20%」という数字を見て同様に扱ってしまうと、正解にたどり着けません。
【例】
- 定価10,000円の20%引き→売価は8,000円
- 原価8,000円で利益20%→売価は9,600円
このように、同じ「20%」でも意味することがまったく違うのです。問題文に出てきた「基準」を正確に押さえる習慣をつけましょう。
7-2. 割合計算をミスしないための段階思考
SPIでは、時間を意識するあまり、頭の中だけで計算を進めてしまう受験者が少なくありません。その結果、割合の適用を間違えたり、どこに何をかけるべきかがあやふやになってミスを引き起こします。
これを防ぐためには、段階を明確に分けて考えることが効果的です。
たとえば、
- ① 定価に対して割引を適用して売価を出す
- ② 売価と原価の差から利益を出す
- ③ 利益と原価の比から利益率を出す
このように、1ステップずつ紙に書きながら進めると、思考のズレを防ぐことができます。
特に「売価」「原価」「利益」という3つの金額の関係を図や表に整理しながら進めると、さらにミスを減らせます。
7-3. 数字が変わったときに応用が利く思考習慣
SPI本番では、数値や割引率、利益率が変わったバリエーション問題が次々と出題されます。いちいち丸暗記した解法に頼っていては、少し設定が変わっただけで混乱してしまうでしょう。
これを防ぐには、公式の意味を常に意識しながら使う習慣を持つことが大切です。
【例】
売価=定価×(1−割引率)
売価=原価×(1+利益率)
この2本柱を頭に置き、問題ごとにどちらが使えるかを判断できるようにします。
さらに、
- 割引率は「定価」基準
- 利益率は「原価」基準
という大原則を常に意識しながら問題に取り組めば、初めて見る数字設定でも落ち着いて対応できるようになります。
ここまで、ミスを防ぐための重要なポイントを整理してきました。次章では、SPI試験本番で時間を節約しつつ正確に解答するためのテクニックや心構えについてご紹介します。試験直前対策として、ぜひ参考にしてください。
8. SPI本番で役立つ時短テクニックと心構え
SPI試験本番では、正確さはもちろん、スピードも大きな武器になります。いくら正確に解けても、時間切れになってしまえば得点にはつながりません。この章では、損益問題を素早く解き切るための時短テクニックと、本番で実力を出し切るための心構えを紹介します。
8-1. 頻出パターンに即反応するための準備法
SPIの損益問題には、何度も繰り返し出題される「頻出パターン」があります。代表例は以下のとおりです。
- 「定価から〇%引きで売って利益が〇%出た」
- 「仕入れ値に利益を乗せた後、割引して販売」
- 「売価が原価の〇倍になった」
これらの型に慣れていれば、問題を読んだ瞬間に「使うべき式」や「計算の流れ」が浮かびます。つまり、問題を読む→理解する→式を立てるというプロセスを、大幅に短縮できるのです。
頻出パターンを見たときに即座に反応できるように、普段から「これはあの型だ」と意識しながら演習を重ねることが、時短への第一歩となります。
8-2. 選択肢で「近い数字」に惑わされないコツ
SPIでは、選択肢の中に「惜しい数字」「計算ミスしやすい数字」が並べられていることがよくあります。たとえば、正解が80%なら、79%や81%といった選択肢も用意されているのです。
焦ってしまうと、ざっと計算して「近いからこれでいいか」と選んでしまいがちですが、ここに大きな落とし穴があります。
これを防ぐためには、計算過程を一度だけでもきちんと検証する癖をつけましょう。
特に注意すべきポイントは以下の通りです。
- 割合を出したら、「何に対する何か」を必ずチェックする
- 最後の割り算をした後、パーセントへの変換を忘れない
- 割引後や利益後の金額と、元の数値との関係を確認する
「近い数字があったら、あえて一呼吸置いて見直す」。この意識が、本番でのミスを大きく減らします。
8-3. 本番で焦らず確実に点を取る心の整え方
SPI本番では、思いがけず難しい問題に当たったり、時間が足りないと感じたりして、焦りが出てしまうこともあります。しかし、焦ってしまえば正しい読み取りや冷静な計算ができなくなり、ミスが連鎖するリスクが高まります。
このような状況に陥らないためには、次の心構えを持って試験に臨みましょう。
- 「わからなければ飛ばして次に行く」
一問にこだわりすぎない。わからないと感じたら、後回しにして先に進み、全体の点数を稼ぐ意識を持つ。 - 「途中式を書くクセを徹底する」
頭だけで計算しない。書いて視覚化することで、ミスの防止と安心感の確保につながる。 - 「問題文の指示を疑わずに素直に読む」
変に深読みしすぎず、「問題に書かれていることだけに忠実に答える」という意識を持つ。
SPIの問題は「素直な解き方」をした人が強いのです。本番で余裕を持つためにも、普段からこの心構えを意識して演習に取り組んでいきましょう。
ここまでで、SPI本番に向けた時短テクニックと心構えを確認しました。次章では、さらに効率よく対策を進めるために、おすすめの教材や学習リソースをご紹介していきます。
9. SPI対策におすすめの学習リソースと教材
SPI対策を効率よく進めるためには、適切な教材選びとリソース活用が欠かせません。特に損益問題のように「型」を体に覚えさせるタイプの問題は、繰り返し演習を行うことが最も効果的です。この章では、初心者から応用力をつけたい方まで幅広く対応できる、厳選された学習リソースと教材をご紹介します。
9-1. 書籍・参考書・問題集の選び方と使い分け
まずは、紙ベースの教材についてです。SPI対策の参考書や問題集は非常に多く出版されていますが、選ぶ際には「レベル」と「演習量」を意識しましょう。
【おすすめ書籍例】
- 『これが本当のSPI3だ!』シリーズ(マイナビ出版)
基礎から応用まで、丁寧な解説と豊富な問題量が魅力。初学者にもおすすめです。 - 『最新!SPI3完全版』(成美堂出版)
非言語分野に特化した解説が充実しており、損益問題のパターン別攻略にも向いています。 - 『史上最強SPI&テストセンター超実戦問題集』(ナツメ社)
実際の試験に近い形式の問題が多く、実践的な力を養うのに最適です。
【使い分けポイント】
- 最初は基礎解説が丁寧な参考書で「理解」を固める
- 基礎が身についたら問題集に移り「演習量」を増やす
- 本番直前は、実戦問題集で「スピード感」を養う
このように段階的に教材を使い分けると、効率よく実力を伸ばすことができます。
9-2. 無料で活用できるSPI対策サイト・アプリ紹介
最近では、スマホやPCで手軽に学べるSPI対策ツールも充実しています。特に通学時間やちょっとした隙間時間を活かして学習できるのが魅力です。
【おすすめ無料リソース】
- SPI練習問題.com
分野別に問題を解けるサイトで、損益算の演習にも対応。シンプルな作りでサクサク進められます。 - みんなのSPI
問題数が豊富で、難易度別にチャレンジできる設計。間違えた問題を復習しやすいのがポイントです。 - Studyplusアプリ
学習管理アプリですが、SPI対策ノートを公開しているユーザーが多く、参考になります。 - YouTube学習動画
SPI非言語対策の無料講義動画も多く、特に「損益算」や「割引問題」の解説は非常にわかりやすいものが増えています。
【活用ポイント】
- 通勤・通学時はアプリやサイトで「問題感覚」を保つ
- まとまった時間が取れるときに書籍で「深堀り学習」
- 疲れているときは動画で「ながら学習」
このように、ライフスタイルに合わせてリソースを使い分けることで、自然と学習効率が高まります。
9-3. 模試や過去問はどう活かす?復習のコツ
SPI試験直前期には、模試や過去問の活用が不可欠です。特に、模試や過去問演習では次の2点に注意して取り組みましょう。
【ポイント1:本番時間を意識して解く】
模試や過去問を解くときは、必ず時間を計って「本番同様のスピード感」で取り組みます。実力だけでなく、タイムマネジメント能力も鍛えられます。
【ポイント2:復習で「間違えた理由」を分析する】
復習は、単に答えを見直すだけでは意味がありません。
- どこで読み違えたか
- どの式の立て方を間違えたか
- 割合の適用をミスしていないか
こうした「間違いの原因」を言語化して、ノートにまとめておきましょう。間違えた理由を明確にして次に活かすことで、同じミスを繰り返さなくなります。
ここまで、SPI対策に役立つ教材とリソース、そして効果的な活用法について紹介しました。次章では、読者の皆さんが抱きがちな疑問に答える「Q&A:よくある質問」をお届けします。さらに理解を深め、自信を持って本番に臨みましょう。
10. Q&A:よくある質問
SPI対策、とくに損益問題に取り組んでいると、誰もが似たような疑問にぶつかります。この章では、特に多く寄せられる質問を取り上げ、それぞれに丁寧にお答えしていきます。疑問を解消し、さらに理解を深めるきっかけにしてください。
10-1. 「定価の〇%引き」で売ったとき、利益が出るのはいつ?
「定価から〇%引き」と聞くと、それだけで損しているように感じるかもしれませんが、利益が出るかどうかは原価との関係次第です。
ポイントは、割引後の売価が原価よりも高ければ利益が出る、ということです。
つまり、計算式でいうと、
- 売価=定価×(1−割引率)
- 利益=売価−原価
この利益が正の数になれば、利益が出ていることになります。割引率が高くても、もともとの原価が十分に安ければ、利益は確保できるのです。
10-2. 割引率・利益率・原価の関係が混乱します…
この混乱を防ぐためには、基準を意識することが大切です。
- 割引率は「定価」を基準にしています。
- 利益率は「原価」を基準にしています。
この違いを頭に入れておきましょう。さらに、混乱したときは、数字を仮置きしてみるのも有効です。
たとえば、
- 定価100円の商品を20%引き→売価80円
- 原価が60円なら、利益は20円
- 利益率=20円÷60円=約33.3%
具体的な数値で確かめると、イメージがつかみやすくなります。
10-3. SPI非言語の計算が時間内に解けません
時間不足の原因は大きく分けて二つあります。
- 問題の読み取りに時間がかかる
- 計算プロセスが確立されていない
これを改善するためには、型にはめる練習が有効です。
- 損益問題なら、売価=定価×(1−割引率)、売価=原価×(1+利益率)の型をまず意識
- 問題文に応じてどちらの型を使うか瞬時に判断
- 式が立ったら、あとは機械的に計算する
この流れを普段から繰り返しておくと、自然とスピードが上がります。
10-4. 問題の読み方が難しくて時間がかかる
問題文が長い、情報が多い、というときは、まず与えられている数値と指示を拾うことを優先しましょう。
- 定価・原価・売価が出てきたら、それぞれにマークをつける
- 割引率・利益率などは、基準(定価か原価か)を確認する
- 問題が求めているのは「利益率」なのか「売価」なのかを意識する
このように、問題文を読んでから考え始めるのではなく、読んでいる途中で情報を整理することが時間短縮につながります。
10-5. 練習しても本番では焦って間違えてしまいます
緊張や焦りで本番に実力が出せないのは、多くの受験者が経験することです。
これを防ぐには、本番と同じ状況を想定した練習を積み重ねるしかありません。
- 1問あたりの制限時間を決めて演習する
- 解き直しの際も「一発で正答する」意識を持つ
- 模試を受けるときは、必ず本番時間に合わせる
さらに、試験直前には、「普段どおりやれば解ける」と自分に言い聞かせることが重要です。焦りを完全にゼロにすることはできませんが、慣れと自信でかなり和らげることができます。
ここまでで、読者の皆さんが抱きがちな疑問に対して回答してきました。次章では、本記事全体のまとめに入り、損益問題攻略の総仕上げをしていきます。最後まで一緒に駆け抜けましょう。
11. まとめ
ここまで、「ある商品を定価の20引きで売った」というテーマを中心に、SPI非言語分野の損益問題について体系的に解説してきました。最後に、これまでの内容を振り返りながら、読者の皆さんが自信を持ってSPI本番に臨めるよう総括します。
まず、SPIにおける損益問題の位置づけについて理解できたでしょうか。非言語問題の中でも、損益算は「ビジネス感覚を問う」意図で頻出しており、単なる計算力以上に、状況を読み取り必要な処理を正しく行う力が試されていることがわかりました。
そのうえで、定価・原価・売価・割引率・利益率といった基本用語を整理しました。特に重要だったのは、それぞれの言葉がどの「基準」に基づいているかを意識することでした。割引率は定価基準、利益率は原価基準。この違いをしっかり押さえることが、損益問題を正確に解くうえで欠かせない知識でしたね。
さらに、「定価の20%引き」という設定から売価を導き出し、その売価と原価から利益や利益率を計算する基本的な流れを学びました。売価=定価×(1−割引率)、売価=原価×(1+利益率)という2本の基本式を使いこなすことで、どんな損益問題にも柔軟に対応できる力がついたはずです。
実践トレーニングでは、実際の問題例に取り組みながら、問題文の読み取りから式の立て方、そして計算までを一貫して練習しました。特に、文字を使った式(xやDを置く方法)で状況を整理できるようになると、初めて見る問題でも落ち着いて対応できることが実感できたと思います。
一方で、損益問題には陥りやすいミスも多いことを確認しました。割引率と利益率の混同、割合の基準を見失うミス、数字の見間違い…。これらを防ぐためには、問題を段階的に読み解き、式をきちんと立てながら解く「段階思考」を徹底することが効果的だとお伝えしました。
また、本番で焦らず実力を出し切るために、頻出パターンに即反応できる準備を整えること、選択肢に惑わされない冷静な検算を心がけること、試験中に「わからない問題に執着しない」戦略も紹介しました。本番の時間管理力と精神的な余裕を持つためにも、普段の練習から本番を意識した取り組みを続けてほしいと思います。
教材やリソースの紹介では、参考書、問題集、無料学習サイト、アプリ、動画教材などを紹介しました。自分に合ったスタイルで学びを進めることが、最も効率よく成果を上げるコツです。
最後に、Q&Aでは、皆さんがつまずきやすいポイントをピックアップし、具体的な解説を行いました。特に「割合は何に対するものか」「定価・原価・売価の関係を図解して整理する」ことの重要性を再確認しましたね。
ポイント:この記事を読んだあなたが意識すべきこと
- 割引率と利益率の違いを常に意識する
- 問題文を読んだら、定価・原価・売価を整理してメモする
- 売価の式(定価ベース、原価ベース)を使いこなす
- 焦らず一歩一歩確実に式を立てて解く
- 本番さながらの練習でスピードと正確さを両立する
この5つをしっかり実践すれば、SPI非言語の損益問題は確実にあなたの得点源になります。
SPI試験は、しっかり対策を積めば必ず結果が出る試験です。今回の記事をきっかけに、ぜひ毎日の学習に弾みをつけ、合格への確かな一歩を踏み出してください。
あなたの成功を心から応援しています。
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