他部署の仕事をやらされる背景を理解し、角を立てずに断る方法と相談ルートを知ることが解決の近道です。
「また他部署の仕事を押しつけられてしまった」──こうした不満やモヤモヤを抱えている方は少なくありません。本来の業務に集中したいのに、頼まれたタスクに時間を奪われ、残業や成果への影響が続くと、疲弊してしまいます。断りたい気持ちはあるのに、「人間関係が悪くなるのでは」「評価が下がるのでは」と不安を覚え、結局引き受けてしまう。その繰り返しが、あなたの心身やキャリアに確実にダメージを与えます。
実際に心理学や組織行動学の研究では、役割の曖昧さや業務境界の不明確さが従業員に強いストレスを与えると報告されています(Kahn et al., 1964)。また、過度な仕事の要求は燃え尽き症候群を引き起こしやすく、健康リスクを高めることも指摘されています(Maslach & Leiter, 2016)。つまり「他部署の仕事をやらされる状態」を放置することは、単なる不満では済まされない重大な問題なのです。
そこで本記事では、まず「なぜ他部署の業務が自分に回ってくるのか」という構造的背景を整理します。そのうえで、角を立てずに断る具体的な伝え方、業務範囲を守る工夫、組織や外部の相談ルートまでを解説していきます。さらに実際の体験談を交え、成功例・失敗例から学べるリアルな教訓を提示します。
重要なのは「断る=悪いこと」という思い込みを外し、自分の業務と健康を守る主体的な行動に変えていくことです。交渉の仕方次第で人間関係を損なわずに立場を守れるケースも多くありますし、制度や相談先をうまく使うことで、組織として改善を促すことも可能です。
この記事を読むことで、あなたは「やらされ続ける毎日」から抜け出し、落ち着いた気持ちで本来の仕事に向き合えるヒントを得られるでしょう。
この記事はこのような人におすすめ!
- 他部署の業務を頼まれても断れずに悩んでいる方
- 「便利屋扱い」に疲れて自信を失いかけている方
- 断り方や相談先が分からずストレスを抱える方
- 将来のキャリアや転職を見据えて状況を整理したい方
目次 CONTENTS
1. なぜ他部署の仕事をやらされるのか
他部署の仕事をやらされる背景は、人員不足・役割曖昧さ・組織文化など複数要因が絡んでいます。
「なぜ自分ばかり他部署の業務を振られるのだろう?」。多くの人が最初に抱く疑問です。単なる偶然や一時的な状況ではなく、組織の構造や文化に根差した背景があることが少なくありません。とくに人員不足や急な欠員対応、または部署間の役割が曖昧なケースでは、責任の所在が不明瞭になりやすく、結果として“頼みやすい人”にタスクが集中するのです。さらに「断らず引き受ける人」という印象が一度つくと、それが習慣化し、当たり前のように依頼が続くこともあります。こうしたメカニズムを理解することが、最初の対策の一歩となるでしょう。
1-1. 人員不足と緊急対応が常態化しているケース
企業によっては慢性的な人手不足が続き、突発的な案件が発生すると即座に「余裕がありそうな他部署」に依頼が飛びます。本来は一時的な応急対応であるべきですが、これが日常化すると「やらされるのが当たり前」という空気が根付いてしまうのです。特に若手社員や中堅層は「断れば協調性がないと思われるのでは」と懸念し、結局引き受けてしまう傾向が強いでしょう。結果、自分の業務が後回しになり、納期遅延や長時間労働につながるリスクがあります。
1-2. 役割の境界があいまいな組織構造
組織行動学の古典的研究によれば、役割の曖昧さは強いストレス要因となり、従業員のモチベーションを下げるとされています(Kahn et al., 1964)。たとえば「営業支援」と「営業事務」の境界が不明確だと、どちらの部署が対応すべきかを巡って摩擦が生じ、結果として“気の利く人”に押しつけられるのです。役割を曖昧にしたままにすると、業務の負担が特定個人に偏るだけでなく、組織全体の効率低下を招きます。
1-3. 「便利だから」と頼られやすい人の特徴
他部署からの依頼が集中する人には共通点があります。「断らない人」「要領よく処理してくれる人」「笑顔で対応する人」です。こうした性格や態度は本来ポジティブに評価されるべきですが、皮肉にも「頼みやすい人」としてターゲットになりやすくなります。体験談として、筆者の知人は「一度引き受けて助けたら、翌週から毎回のように依頼が届くようになった」と語っていました。善意が結果的に負担を生むケースは珍しくありません。
1-4. 放置するとどうなるか:ストレスと燃え尽き
「やらされる」状況が長引けば、心身への影響は避けられません。研究でも、過剰な業務要求は燃え尽き症候群の主要因とされ、心理的健康を損なうリスクが高いと報告されています(Maslach & Leiter, 2016)。現場では「残業が続き体調を崩した」「自分の仕事が評価されず自己効力感が下がった」といった声もよく耳にします。これは単なる愚痴ではなく、科学的にも裏付けのある深刻な問題なのです。
ポイント
他部署の仕事をやらされる背景は、単純に「性格が断れないから」ではなく、組織全体の構造や文化に根差したものです。そのため個人が一方的に我慢するのではなく、仕組みの問題として理解することが重要となります。
- 人手不足や欠員補填が恒常化すると「押しつけ」が常態化しやすい。
- 役割曖昧さはストレスを生み、特定の人に負担が偏る。
- 善意や協調性が逆に「頼まれやすさ」を強めてしまうこともある。
Kahn, R. L., Wolfe, D. M., Quinn, R. P., Snoek, J. D., & Rosenthal, R. A. (1964). Organizational stress: Studies in role conflict and ambiguity. Wiley.
〈参考文献:この研究は役割の曖昧さや役割葛藤が従業員に与えるストレスを体系的に示した古典的文献です。業務境界の不明確さが心理的負担を増大させることを実証しています〉
2. 無理な依頼を角が立たず断るコツ
相手の立場を尊重しつつ、自分の業務を守る断り方には「理由説明」と「代替案」が鍵となります。
「断りたいけれど、人間関係が壊れたらどうしよう」──多くの人が抱える最大の悩みです。特に上下関係や部署間の力学が絡むと、断るのは勇気が要ります。しかし、断らずに受け続けると、あなたの業務も心身も確実に疲弊してしまいます。断ること自体は悪ではなく、むしろ健全な職場を維持するために必要な行為です。重要なのは、角を立てずに相手へ伝える工夫です。ここでは心理学的知見と交渉理論を参考にしながら、実際に使える断り方を解説していきます。
2-1. 「事実+理由」を添えて丁寧に伝える
単なる「できません」では冷たく響きます。そこで効果的なのが「事実」と「理由」を組み合わせる方法です。例えば「今週は自部署のプロジェクト納期が重なっており、余裕がありません」と具体的に示せば、相手も納得しやすくなります。重要なのは感情的にならず、客観的な事情として伝えることです。体験談でも「曖昧に断ったときは何度も依頼が来たが、具体的に説明したら減った」という声があります。
2-2. 代替案を示しながら断る方法
交渉理論の研究では、単なる拒否よりも「代替案を提示する断り方」の方が関係を損なわずに済むことが示されています(Brett & Thompson, 2016)。たとえば「来週なら対応できます」「この部分なら引き受けられます」と範囲や時期を限定する言い方です。相手は完全に拒否された印象を受けず、協力的な印象が残ります。この「部分的受容+条件提示」は、心理的ハードルを下げつつ自己防衛につながります。
2-3. 上司や人事を巻き込むタイミング
一人で抱え込む必要はありません。断りにくい相手から繰り返し依頼が来る場合は、直属の上司に相談することが有効です。「本来業務に支障が出ている」と具体的に説明すれば、上司が調整役となりやすいでしょう。また、人事や労務の窓口は、パワハラの可能性を含む案件にも対応してくれます。繰り返し続く「やらされ状態」は、個人の問題ではなく組織的な課題として扱うべきです。
2-4. 断りにくい相手への心理的ハードルの越え方
相手が年上や権限を持つ人だと、断るのは一層難しくなります。そこで役立つのが「クッション言葉」の活用です。「ご期待に添いたいのですが」「協力したい気持ちはあるのですが」と前置きを加えることで、角を立てずに伝えられます。また、事前に「もし断られたら相手はどう思うか」をシミュレーションすると、過度な不安を和らげられるでしょう。心理的準備があるだけで、声に自信が乗ります。
ポイント
断ることは人間関係を壊す行為ではなく、むしろ健全な業務環境を守る手段です。大切なのは「事実と理由を伝える」「代替案を提示する」「必要なら上司を巻き込む」こと。これらを組み合わせれば、依頼を角が立たずに断ることができます。
- 事実と理由を具体的に伝えると納得を得やすい。
- 代替案を添えた断り方は関係を損なわない。
- 上司や人事を巻き込めば個人負担から組織課題へ転換できる。
Brett, J. M., & Thompson, L. (2016). Negotiation. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 136, 68–79. https://doi.org/10.1016/j.obhdp.2016.06.003
〈参考文献:交渉理論の基礎を解説した研究で、断り方においても相互利益を意識した「条件提示」や「代替案」が有効であることを示しています〉
3. 組織負担を減らす対処策と相談ルート
業務範囲を明確化し、上司・人事・外部相談先を活用することで負担を減らし、健康被害を防ぐことができます。
他部署からの依頼を個人の工夫だけで止めるのは限界があります。組織的な仕組みや制度をうまく使わなければ、負担は慢性化し、やがて健康やキャリアに悪影響を及ぼします。研究でも過剰な業務要求が燃え尽き症候群を引き起こす主要因であると示されており(Maslach & Leiter, 2016)、放置は危険です。ここでは、具体的に業務範囲を整理する方法から、上司との調整、人事・外部窓口の活用、法的観点を含めた対応までを整理します。
3-1. 業務範囲を明文化する:ジョブディスクリプション活用
業務の境界を曖昧にしたままでは「便利だから」という理由で依頼が続きます。効果的なのが、ジョブディスクリプション(職務記述書)の活用です。自分の役割・責任範囲を明文化して共有しておくことで、他部署からの依頼に対して「本来業務の範囲外である」と客観的に説明できます。もし自社に正式な文書がない場合でも、自分で「担当業務リスト」を作成し上司に承認を得ておくと、断りやすさが格段に増します。
3-2. 上司との定期的な業務棚卸し
「仕事を振られて困っています」と相談するだけでは弱い印象を与えがちです。そこで有効なのが、定期的な業務棚卸しです。現在の業務内容と時間配分をリスト化し、上司に共有することで「他部署業務を引き受けると本来業務が遅延する」事実を明確にできます。上司は組織間の調整権限を持つため、あなたの代わりに他部署へ説明してくれる場合も多いでしょう。これは「自己防衛」ではなく「組織全体の効率を守る行動」として正当化できます。
3-3. 人事・労務・社外相談機関へのアクセス方法
繰り返し業務が押し付けられ、精神的負担が強い場合は人事・労務への相談が必要です。社内にハラスメント相談窓口やコンプライアンス部門がある企業も増えています。さらに外部には労働局の総合労働相談コーナーや産業保健総合支援センターなど、公的な無料相談先があります。匿名で相談できる場合もあるため、「これはパワハラにあたるのでは」と感じたら早めに動くことが安心につながります。
3-4. 法的観点とパワハラの線引き
「他部署の仕事をやらされる」がすべて違法というわけではありません。しかし、過度に業務を強制され、本人の能力や健康に明らかに悪影響を及ぼす場合は、労働基準法やパワハラ防止法の観点から問題となる可能性があります。特に繰り返し継続して押し付けられる場合は、個人のスキル不足ではなく「組織的な不当配分」として評価されるケースもあります。法律的な線引きは難しいため、専門機関に相談することが望ましいでしょう。
ポイント
個人の努力だけで「やらされる構造」を変えるのは困難です。業務範囲の明文化、上司との棚卸し、相談窓口の活用を組み合わせることで、組織的な改善を促すことが可能になります。
- ジョブディスクリプションで業務境界を客観的に示せる。
- 上司との業務棚卸しは調整の後押しになる。
- 人事・外部窓口を活用すればパワハラ対応にもつながる。
Maslach, C., & Leiter, M. P. (2016). Understanding the burnout experience: Recent research and its implications for psychiatry. World Psychiatry, 15(2), 103–111. https://doi.org/10.1002/wps.20311
〈参考文献:この論文は、過度な仕事要求や不公平なタスク配分が燃え尽き症候群を引き起こす主要因であることを示し、従業員の健康維持の重要性を強調しています〉
4. 体験談から学ぶ、効果的な対応パターン
実際の体験談には、失敗から得られる教訓や成功につながった工夫が凝縮されています。
理論や制度を知っていても、実際に職場でどう動くかは別問題です。人間関係や会社の文化が絡む以上、現場ならではの工夫が欠かせません。ここでは、実際に「他部署の仕事をやらされて困った」人々の体験談を基に、うまくいかなかったケースと成功につながったケースを比較します。体験者の言葉には、教科書的なアドバイスでは見えにくいリアルな知恵があります。自分の状況と照らし合わせながら読むことで、より現実的な対応策が見えてくるでしょう。
4-1. 断れず燃え尽きたケースと教訓
ある30代女性は、他部署からの依頼を「評価が下がるのでは」との不安から断れず、毎日3〜4時間を割く状況が数か月続きました。結果、自部署の納期に遅れが出て、上司からの評価も低下。最終的に体調を崩し休職することになったそうです。本人は「もっと早く相談していれば」と振り返っており、“我慢し続けることが最もリスクが大きい”と学んだと言います。
4-2. 部署間交渉で業務を調整できた成功事例
一方、40代の営業職男性は「今週は自分の顧客対応で手一杯」と正直に伝え、代わりに「翌週なら対応できる」と期限を示しました。さらに直属上司にも共有し、他部署同士で業務分担を再調整。結果、依頼は半減し、自身の業務も守られました。本人は「断るのではなく“条件付きで引き受ける”姿勢が信頼につながった」と実感しています。これは交渉理論で推奨される「代替案提示」の好例です(※前述の Brett & Thompson, 2016 を参照)。
4-3. 「便利屋扱い」から抜け出した社員の工夫
バックオフィス担当の20代女性は、入社以来「頼めばやってくれる人」と認識され、次々と仕事が振られていました。彼女は一念発起し、業務時間の内訳をエクセルで記録し、上司へ提出。「他部署対応が週15時間を超えている」と数値化して示した結果、上司が人事に掛け合い、対応フローが見直されました。本人は「数字で示すと説得力が増す」と感じたそうです。
4-4. 転職で状況を変えた選択とその背景
どうしても状況が改善されない場合、転職が選択肢になることもあります。ある30代男性は、毎月のように業務を押しつけられ続け、上司に相談しても変化なし。最終的に「成長よりも疲弊の方が大きい」と判断し、異業種へ転職しました。新しい職場ではジョブディスクリプションが整備され、同じ悩みは起きていないとのことです。彼は「転職は逃げではなく、自分の環境を選び直す行為」と語っていました。
ポイント
体験談に共通するのは、「声を上げずに我慢すると悪化する」ことです。逆に、条件を提示して交渉したり、数値化して上司に共有したりと、行動に移した人は改善を実現しています。場合によっては転職という決断も正当な選択肢となり得るのです。
- 我慢の積み重ねは最終的に健康や評価を損なう。
- 条件提示や数値化は効果的な交渉手段となる。
- 転職は「逃げ」ではなく環境を変える前向きな行動になり得る。
5. Q&A:よくある質問
Q1. 他部署の仕事を断るのは悪いことですか?
断ること自体は悪いことではありません。むしろ自分の業務や健康を守るために必要な行為です。組織全体の効率を維持するためにも、適切に断ることは正当化されます。
Q2. 角が立たない断り方の表現は?
「ご期待に添いたいのですが、今週は自部署の案件で手一杯です」など、クッション言葉+理由説明が効果的です。代替案を添えると、さらに協力的な印象を残せます(※前述の Brett & Thompson, 2016 を参照)。
Q3. これはパワハラや労働問題になりますか?
単発の依頼であれば通常の業務調整範囲ですが、継続的かつ過度に他部署業務を強制され、本人の心身に悪影響が出ている場合はパワハラに該当する可能性があります。研究でも過剰な業務要求が燃え尽き症候群の主要因とされており(Maslach & Leiter, 2016)、放置は危険です。迷ったら人事や労働局に相談してください。
Q4. どこまでが自分の仕事か分からない時は?
業務範囲が曖昧な場合は、ジョブディスクリプション(職務記述書)や上司との話し合いで確認しましょう。明文化することで「ここからは範囲外」と説明しやすくなります。
Q5. 転職すべきか迷っています。判断軸は?
改善を試みても変化がなく、心身への負担が大きい場合は転職も選択肢です。判断の基準は「成長実感より疲弊感が上回っているかどうか」。客観的に業務時間や健康状態を記録すると、冷静に判断できます。
ポイント
Q&Aを通じて見えてくるのは、「断ることは悪ではなく、正当な自己防衛である」という点です。角を立てない表現や相談ルートを活用することで、実践的な対応が可能になります。
- 断ることは悪ではなく、組織効率のためにも必要。
- クッション言葉+代替案で印象を和らげられる。
- 繰り返しの押しつけはパワハラに当たる場合がある。
6. まとめ
「他部署の仕事やらされる」問題は個人の弱さではなく、組織構造と文化に根ざした課題です。
他部署の仕事をやらされ続ける状況は、多くの社員が直面する現実的な悩みです。これまでの内容を総合すると、その背景には大きく三つの要因がありました。
第一に、人員不足や欠員補填による恒常的な負担。これは企業全体のリソース管理の問題であり、個人が我慢して解決できるものではありません。第二に、役割や業務境界が曖昧な組織構造です。研究でも、役割の不明確さが従業員のストレスを強めるとされています(Kahn et al., 1964)。第三に、性格や働き方の特性から「頼みやすい人」が標的になってしまうケース。善意や協調性が逆に負担を生むのは皮肉な現象ですが、多くの職場で繰り返されています。
こうした背景を理解したうえで大切なのは、「断る=悪いこと」という思い込みを外すことです。断ることは自己防衛であると同時に、組織全体の効率や健全性を守る行動でもあります。実際、交渉理論の知見によれば、条件や代替案を添えた断り方は人間関係を壊さずに受け入れられる傾向があります(Brett & Thompson, 2016)。また「クッション言葉」を加えるだけで印象は大きく変わり、心理的なハードルも下がります。
さらに、個人で抱え込まず、上司や人事を巻き込むことが不可欠です。業務棚卸しや数値化によって「どれだけ負担が生じているか」を可視化すれば、説得力を持って問題を伝えられます。体験談でも、数値化して提示したことで上司が動き、制度やフローが改善された例がありました。逆に相談せずに我慢し続けた結果、燃え尽きや体調不良に至ったケースも報告されています。これは研究でも裏付けられており、過剰な業務要求は燃え尽き症候群を引き起こす主要因とされています(Maslach & Leiter, 2016)。
また、どうしても改善されない場合には、転職という選択肢も正当です。「逃げ」ではなく、自分の環境を選び直す積極的な行動です。転職先ではジョブディスクリプションが整備され、同じ悩みを抱えずに済んでいる人もいます。状況が変わらない職場にとどまって消耗するよりも、環境を変えることが最適解になることもあるのです。
最終的に強調したいのは、「やらされる状態」を放置しない勇気を持つことです。心理的負担は長期的に見れば健康やキャリアを損なうリスクが大きく、個人の努力だけで解決するには限界があります。役割を明確にする工夫、断り方の技術、相談窓口の活用──これらを組み合わせることで、状況は少しずつ変えられます。
読者の方には、まず一歩として「業務を可視化する」ことをおすすめします。日々の業務時間を記録するだけでも、自分の状態を客観的に捉える手がかりとなります。それを上司に共有することが、改善の第一歩につながるでしょう。
ポイント
- 「やらされる」は個人の弱さではなく組織的問題。
- 断ることは自己防衛であり、組織効率を守る行動でもある。
- 改善されない場合は転職も前向きな選択肢となる。
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