多くの人が日常的に使っている「サラリーマン」と「会社員」という言葉。どちらも「会社に勤めている人」を指しているように見えますが、実はその意味や使われ方には微妙な違いがあります。たとえば、「私はサラリーマンです」と自己紹介する人もいれば、「会社員をしています」と表現する人もいます。どちらも正しそうに聞こえますが、果たしてどんな違いがあるのでしょうか。
この記事では、そんな疑問に対して丁寧に答えていきます。まずは「サラリーマン」と「会社員」の定義を明確にし、それぞれの語源や使われ方、さらには法律的な扱いまでを掘り下げます。加えて、英語との比較、日常会話やメディアにおける表現の違い、世代間や地域による感覚の差異なども取り上げ、読者の「なんとなくの認識」を「しっかりとした理解」へと導く構成です。
また、働き方の多様化が進む現代では、両者の言葉のニュアンスも変化しつつあります。「ビジネスパーソン」「ワーカー」「プレイヤー」など新しい呼び方が登場し、もはや「サラリーマン」という言葉すら時代遅れだと感じる若者も少なくありません。フリーランス、業務委託、ギグワーカーなどの働き方が増える中で、「会社員」という言葉が指す範囲も変わりつつあるのです。
本記事では、読者の方が「この言葉はこういう意味だったのか」と納得し、適切な場面で正しい言葉を使えるようになることを目指しています。履歴書や職務経歴書での表記、公的書類での記載、ビジネス上のやり取りなど、言葉選びが意外と重要な場面は多々あります。適切な使い分けができるかどうかで、相手に与える印象や信頼感にも違いが出てくるでしょう。
さらに後半では、読者からよく寄せられる「公務員はサラリーマン？」「パートは会社員？」といった疑問にも回答し、職業観やキャリア観と結びつけて深掘りします。誰かに聞くのは少し恥ずかしいけれど、意外と曖昧なこのテーマ。「今さら聞けない」を「いまならちゃんと知っておこう」に変えるチャンスです。
知っているようで知らない、「サラリーマン」と「会社員」の本当の違い。あなたの中のモヤモヤをすっきりと解消するヒントが、ここには詰まっています。
1. サラリーマンと会社員の違いとは？
社会人として働いていると、「サラリーマン」と「会社員」という言葉を自然と使う場面が多くあります。しかし、いざこの2つの違いを説明してくださいと言われると、なかなか明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。それもそのはず、これらの言葉は似て非なる背景を持ちながらも、現代ではほとんど同義語のように扱われているからです。
まず、「サラリーマン」と「会社員」は、指している対象に大きな重なりはあるものの、その成り立ちやニュアンスに違いがあります。「サラリーマン」はもともと給与（サラリー）を得て生活している人を広く指し、職種や業種に限らないという側面がありました。一方で「会社員」は、文字通り「会社に所属して働く人」を指しており、組織との雇用関係が明確な人たちを表現しています。
言い換えれば、「サラリーマン」は収入形態に着目した呼び方、「会社員」は雇用先の組織形態に着目した呼び方と言えるでしょう。
ここからは、さらに具体的に両者の違いを見ていきます。
1-1. 両者の定義を比べてみよう
一般的な辞書や公的な資料を参照すると、次のような定義が見受けられます。
- サラリーマン
給与をもらって生活する人。特に、会社などに勤務している人を指すことが多いが、必ずしも会社に限定されない。 - 会社員
会社に勤務し、会社との雇用契約に基づいて業務に従事する人。法人格を持つ企業に属していることが前提。
つまり、サラリーマンは「給与を得る人」全般を指す可能性があり、場合によっては公務員や非営利団体職員、医師や弁護士のような専門職も含むことがあります。しかし、会社員はその名の通り、企業という法人組織に属していることが必須条件となります。
この違いがあるため、たとえば公務員を「サラリーマン」と呼ぶことは違和感がない場合もありますが、「会社員」と呼ぶのはやや正確性を欠くことになります。
1-2. 言葉の成り立ちと歴史的背景
「サラリーマン」という言葉は、20世紀初頭の日本で生まれた和製英語です。英語の「salary（給料）」に「man（人）」を組み合わせた造語であり、当時の都市部で、企業や官公庁に勤めて月給を得る層を指して使われ始めました。当時は、農業や自営業などの自立的な生業に従事している人々との差異を示す言葉でもありました。
一方、「会社員」という表現はより直訳的で、「会社」という組織に属する人という意味がそのまま表れています。この表現が一般化したのは、戦後の高度経済成長期に入ってからです。企業に属して終身雇用・年功序列といった働き方が主流となり、組織人として働くスタイルが定着したことで、「会社員」という呼び方が日常化しました。
このように、サラリーマンは都市部の新興中間層を象徴する言葉として、会社員は組織の一員としての役割を示す言葉として、それぞれ社会背景とともに成長してきたのです。
1-3. 法律・公的機関での呼称はどちら？
法律文書や公的機関の手続きでは、「サラリーマン」という言葉はほとんど使用されません。たとえば、税務署やハローワーク、厚生労働省の資料などでは、「会社員」「給与所得者」という表現が用いられるのが一般的です。
特に「給与所得者」という表現は、雇用契約に基づき給与を受け取るすべての人を指すため、会社員のみならず、公務員、医師、弁護士なども含まれる広い概念になります。つまり、制度上は「会社員」という枠組みよりも、さらに大きな括りで取り扱われているわけです。
また、就労ビザや労働法においても、「サラリーマン」という言葉は用いられず、常に「会社員」「従業員」「被雇用者」などの正確な用語が使用されます。これは、法的概念において曖昧な表現を避けるためでもあります。
ポイント
日常会話やカジュアルな文脈では「サラリーマン」という言葉が広く使われていますが、公式文書や法律、制度上では「会社員」「給与所得者」といったより厳密な表現が求められます。場面に応じて言葉を正しく使い分けることが、社会人としてのリテラシーにつながります。
2. 「サラリーマン」は和製英語？本来の意味を探る
「サラリーマン」という言葉を聞いたとき、多くの人は日本特有の響きを感じるかもしれません。実はこの言葉、海外ではほとんど通じない表現であり、いわゆる和製英語に分類されます。英単語を組み合わせて作られたものではあるものの、意味やニュアンスが日本独自に発展した経緯があります。ここでは、「サラリーマン」という言葉の本来の意味と、英語圏における類似表現について深掘りしていきます。
2-1. 英語圏での類似語との違い
「サラリーマン」という言葉は、「salary（給与）」と「man（人）」を組み合わせたものですが、英語圏にはこの表現そのものは存在しません。英語で「会社勤めの人」や「給与を得て働く人」を表現する場合、いくつかの言い方があります。
たとえば、
- office worker（オフィスワーカー）
- white-collar worker（ホワイトカラー・ワーカー）
- employee（エンプロイー）
などが使われます。
「office worker」は文字通り「オフィスで働く人」を意味し、事務系職種全般を指します。「white-collar worker」は、工場労働者（ブルーカラー）に対して、スーツやシャツを着てオフィスで知的労働に従事する人たちを指す言葉です。「employee」は単純に「雇われている人」という広い意味で、業種・職種を問わない表現です。
つまり、日本でいう「サラリーマン」のニュアンスをピタリと英語に置き換えられる単語は存在しないのです。日本独特の社会構造や働き方を背景にした言葉だと理解することが重要です。
2-2. 海外での「会社員」にあたる表現とは
それでは、「会社員」という言葉を海外で伝えたい場合、どのように表現するのが適切なのでしょうか。一般的には、次のような言い方がされます。
- company employee（カンパニー・エンプロイー）
- corporate worker（コーポレート・ワーカー）
- businessperson（ビジネスパーソン）
「company employee」は直訳に近い表現で、「会社に雇われている人」という意味合いを持ちます。「corporate worker」は、ややフォーマルな場面で用いられ、大企業や法人組織に勤める人を指す場合が多いです。「businessperson」は性別を問わず、ビジネスに従事する人全般を表現する言葉で、より現代的なニュアンスを持っています。
このように、英語圏ではその場の文脈やニュアンスに応じて使い分けがなされており、単一の言葉で日本の「会社員」に相当するものを表すのは難しい場合が多いのです。
2-3. グローバル視点で見た職業用語の違い
グローバル社会において、職業用語の違いは非常に興味深いポイントです。日本では「サラリーマン」と言えば、ほぼすべての会社勤めの人を包括する表現になりますが、欧米諸国では「どの業種に就いているか」「どの職種で働いているか」によって呼び方が細かく分かれる傾向があります。
たとえば、営業職であれば「sales representative」、経理担当であれば「accountant」、プロジェクト管理を担当していれば「project manager」と具体的に表現されます。単に「会社勤め」という属性だけで括る文化があまりないため、肩書きや業務内容を重視して自己紹介するケースが多いのです。
また、フリーランスや契約社員が一般化している現代では、働き方を重視した表現（たとえば「freelancer」や「contractor」など）も一般的になりつつあります。日本における「サラリーマン文化」は、ある意味で終身雇用や年功序列を前提とした時代背景に根付いており、国際的なトレンドとは異なる独自の進化を遂げたものだと言えるでしょう。
ポイント
「サラリーマン」という言葉は、日本独自の社会背景と文化を映した特有の表現です。英語に直訳できる単語は存在せず、海外ではより具体的な職種や働き方に応じた表現が使われます。グローバルな視点を持つなら、自分の働き方をより明確な言葉で伝えられるよう心がけたいものです。
3. 実際の使われ方：日常会話・ビジネス・メディアでの違い
「サラリーマン」と「会社員」は、定義や歴史的背景に違いがあることを理解したうえで、では現実にはどのように使われているのでしょうか。言葉というものは、辞書的な意味だけでなく、社会的な文脈や人々の感覚の中で進化していくものです。ここでは、日常会話、ビジネスシーン、メディアにおける「サラリーマン」と「会社員」の使われ方の違いについて、具体的に見ていきます。
3-1. ニュースや報道で使われるのはどちら？
テレビのニュースや新聞の記事では、「会社員」という表現が使われるケースが圧倒的に多く見られます。たとえば、事件・事故の報道において、職業を説明する際には「会社員の〇〇さん（34）」と紹介されることが一般的です。
これは、報道機関が正確かつ中立な情報提供を重視しているためです。「サラリーマン」という表現には若干のカジュアルさや感情的なニュアンスが含まれる場合があり、報道の場では避けられる傾向にあるのです。
また、統計データや調査結果を発表する際にも、「会社員」というカテゴリーで分類されるのが通例です。厚生労働省の労働統計や、民間調査機関のアンケート結果なども、必ず「会社員」「自営業者」「公務員」といった分類で示されます。
つまり、公的性や厳密さが求められる場面では「会社員」が選ばれる傾向が強いといえるでしょう。
3-2. SNS・ネットスラングとしての意味合い
一方で、SNSやネット掲示板では「サラリーマン」という言葉が圧倒的に多く使われています。ツイッターやインスタグラム、5ちゃんねるなどで「サラリーマン辛い」「サラリーマン辞めたい」といった投稿を見かけたことがある方も多いでしょう。
この場合、「サラリーマン」という言葉は単なる職業区分ではなく、「組織に雇われ、自由を制限される立場」というニュアンスを含んで使われることが多いのです。ネガティブな感情（疲労感、不満、閉塞感）と結びつきやすいのも特徴です。
また、ネットスラング的には「サラリーマン」という言葉が、ある種の自虐や共感を生むキーワードとして機能している場面も少なくありません。「サラリーマンあるある」といったコンテンツが人気を集めるのも、この背景に基づいています。
このように、SNSでは感情的な側面や共感・連帯感を強調する場面で「サラリーマン」という言葉が好まれる傾向にあります。
3-3. 世代や業界で異なる使い分け
「サラリーマン」と「会社員」の使い分けは、実は世代や業界によっても違いがあります。
まず世代差について言えば、40代以上の世代では「サラリーマン」という言葉が自然に使われる場面が多い一方、20代〜30代の若年層では「会社員」という表現のほうが一般的になりつつあります。これは、若い世代が「サラリーマン」という言葉に旧態依然としたイメージを抱き、「柔軟な働き方」を志向する流れに沿ったものと考えられます。
業界別で見ると、金融・不動産・製造業といった比較的伝統的な産業では「サラリーマン」がよく使われます。これに対して、IT業界やベンチャー企業では「ビジネスパーソン」「プロフェッショナル」といった表現が好まれる傾向があり、「サラリーマン」という言葉はやや距離を置かれることもあります。
また、広告業界やメディア業界では、「サラリーマン」という表現を使う場合にも、敢えて皮肉やユーモアを込めることが少なくありません。このように、言葉の選び方ひとつにも、その場の空気感やカルチャーが反映されているのです。
ポイント
ニュースや公式な場面では「会社員」が好まれ、SNSやカジュアルな場面では「サラリーマン」が親しまれる傾向にあります。さらに、世代や業界によってもニュアンスや使われ方に違いが生まれているため、状況に応じた言葉選びが求められます。
4. 働き方の変化とともに変わる言葉のニュアンス
近年、働き方に大きな変化が起きているのは周知の事実でしょう。リモートワーク、副業解禁、ジョブ型雇用の普及など、従来の「会社に通勤して、定時に働き、終身雇用で安定する」といったモデルは、もはや標準とは言えなくなっています。それに伴い、「サラリーマン」や「会社員」という言葉のニュアンスにも変化が表れています。ここでは、社会の動きとリンクしながら、言葉の持つ意味合いがどのように変わってきたのかを見ていきましょう。
4-1. 働き方改革がもたらす呼び方の変化
政府主導の「働き方改革」は、長時間労働の是正や多様な就業形態の推進を目指して進められてきました。この改革によって、副業・兼業を認める企業が増えたり、成果主義に基づくジョブ型雇用が広まったりと、従来の「雇われて一社に勤め続ける」というサラリーマン像は徐々に薄れつつあります。
この変化は、呼び方にも影響を与えています。これまでのように「サラリーマン＝企業に忠誠を尽くす存在」というイメージは弱まり、代わりに「個人としてのキャリアを形成していくビジネスパーソン」という新たな認識が強まっています。実際、求人広告や企業PRでも「ビジネスパーソン」「プロフェッショナル」といった表現が増え、「サラリーマン」という単語は目立たなくなりつつあるのです。
4-2. 「ビジネスパーソン」「ワーカー」などの新用語
新しい働き方を象徴する言葉として、次のような用語が使われる機会が増えています。
- ビジネスパーソン
性別を問わず、仕事を通じてビジネス活動に従事している人を表現。近年、性別による役割分担の固定観念をなくす流れから急速に普及しています。 - ワーカー
働く人全般を指すシンプルな表現。正社員・契約社員・フリーランスなど雇用形態を問わず使えるため、特に多様な働き方を前提とする場面で用いられます。 - プロフェッショナル
専門知識やスキルを活かして働く人を示す言葉。資格職や高度専門職に限らず、スキルベースで自立した働き方をする人を指す場合にも用いられます。
これらの言葉は、「サラリーマン」に含まれていたようなネガティブなニュアンス（会社への依存、受け身の姿勢など）を避ける意図も感じられます。特に若い世代や新興企業では、自ら主体的にキャリアを切り開くイメージを大切にするため、「サラリーマン」という言葉はあえて使わない傾向が強まっているのです。
4-3. 今後主流になるのはどちらの言い方？
このまま働き方の多様化が進んでいけば、「サラリーマン」という言葉は、次第に古いイメージのまま定着し、日常会話では減少していく可能性があります。実際、現在でも20代～30代の若い世代では、「サラリーマン」という単語を自ら使う機会が減っており、「会社員」や「ビジネスパーソン」といった表現を好む傾向が見られます。
一方で、昭和・平成の企業文化を象徴する用語として、ある種のノスタルジックな意味合いを込めて「サラリーマン」が使われ続ける場面も残るでしょう。たとえば、文学、映画、ドラマなどでは、「サラリーマン」という言葉が持つ独特の生活感や哀愁が、作品世界を形作る重要な要素になることもあります。
要するに、今後主流になるのは「会社員」あるいは「ビジネスパーソン」といったニュートラルで柔軟な表現であり、「サラリーマン」は文脈に応じて懐古的または象徴的に使われる言葉へと移行していくと考えられます。
ポイント
社会や働き方の変化に伴い、言葉のニュアンスもまた変わっていきます。「サラリーマン」という言葉が持つイメージを理解しつつ、時代に応じた適切な表現を選ぶことが、現代社会を生きるうえでの大切なスキルのひとつになりつつあるのです。
5. 雇用形態別：どこまでがサラリーマンでどこからが違う？
「サラリーマン」や「会社員」という言葉は、一般には「企業に勤めている人」というイメージで使われていますが、現代では雇用形態が非常に多様化しており、どこまでがサラリーマンと呼べるのか、その境界が曖昧になりつつあります。正社員はもちろんのこと、契約社員や派遣社員、アルバイトまで、すべてを一括りにしてよいのでしょうか。ここでは雇用形態ごとに違いを整理しながら、言葉の使い分けを考えていきます。
5-1. 正社員・契約社員・派遣社員・アルバイトの境界線
まず、最も典型的な「サラリーマン像」といえるのは、正社員として企業に雇われ、フルタイムで働く人たちでしょう。いわゆる終身雇用を前提に、給与所得を得ながらキャリアを積み上げていく働き方が、長らく「サラリーマン＝正社員」というイメージを定着させてきました。
一方、契約社員や派遣社員の場合はどうでしょうか。これらの雇用形態でも、企業と契約を結び、給与を得て働いている点では共通しています。ただし、契約社員や派遣社員は「期間限定」「契約更新制」といった特徴があり、雇用の安定性や所属意識に差が出るため、「正社員と同じサラリーマン」と考えるかどうかには意見が分かれます。
さらにアルバイトやパートについてですが、これらは非正規雇用であり、働く時間や業務内容に制限がある場合が多いため、「サラリーマン」と呼ばれることは一般的ではありません。ただ、広い意味で「給与を得て生活する人」というサラリーマンの原義に立ち返れば、アルバイト・パートも含まれると考えることもできます。
このように、一般的な感覚としては「正社員＝サラリーマン」、「契約社員・派遣社員＝場合による」、「アルバイト・パート＝含まれないことが多い」といった分類がなされる傾向にあります。
5-2. 公務員は会社員なのか？サラリーマンなのか？
公務員の扱いについても、しばしば議論になります。公務員は企業に所属するわけではなく、国や地方自治体といった公的機関に雇われているため、厳密には「会社員」ではありません。
それでも日常会話の中では、「公務員もサラリーマンみたいなもの」と表現されることが珍しくありません。これは、公務員も給与を得て安定的に勤務していることから、生活スタイルや社会的イメージがサラリーマンと似ているためでしょう。
ただし、公式な文書や制度上では、公務員はあくまで「国家公務員」「地方公務員」と区別され、「会社員」や「サラリーマン」と混同されることはありません。たとえば、年末調整や確定申告の際にも、公務員は「給与所得者」として区分されるものの、会社員とは別枠で処理されることがあります。
つまり、カジュアルな会話ではサラリーマン的存在と見なされることもあるものの、制度的には厳密に区別される存在だと理解しておく必要があります。
5-3. 自営業・フリーランス・業務委託との違いは？
自営業者やフリーランス、業務委託契約で働く人々は、会社や組織に所属していないという点で、「サラリーマン」や「会社員」とは明確に区別されます。
自営業者は、自ら事業を営み、リスクも利益も自己責任で引き受ける立場です。フリーランスも似たような位置づけですが、よりプロジェクト単位で働くケースが多く、特定の企業に雇用されるわけではありません。業務委託契約の場合も、企業と対等な立場で業務遂行を請け負う形式であり、雇用契約には該当しないため、サラリーマンとは言えないでしょう。
一方で、見た目にはオフィスで働き、定期的に報酬を受け取っているため、外部からは「会社員」と勘違いされることもあります。しかし、法的な立場や働き方の本質が異なるため、正確には区別するべきです。
ポイント
サラリーマンや会社員という呼び方は、主に「企業に雇用され、給与を得ている正社員層」を指すことが一般的です。しかし、契約社員や派遣社員、公務員、自営業者、フリーランスといった多様な働き方が浸透している現代においては、その境界線も曖昧になっています。働き方の違いを正しく理解し、状況に応じた言葉選びを意識することが求められます。
6. サラリーマンと会社員、どちらを使うのが正解？
「サラリーマン」と「会社員」、それぞれの違いが見えてきたところで、実際にどちらを使えばいいのか、迷う場面も出てくるでしょう。普段の会話であればどちらでも構わないように思えますが、履歴書や公式な場面、また人に自己紹介する場面などでは、言葉選びが印象を左右することもあります。ここでは、シーン別に適切な言葉選びを整理していきます。
6-1. 履歴書・就職活動での適切な記載方法
就職活動や転職活動において、自身の職業や職歴を記載する場合は、「会社員」という表現を用いるのが適切です。履歴書やエントリーシートなどの正式な文書では、「サラリーマン」というカジュアルな表現は好まれません。
たとえば、職歴欄や職業欄には次のように記載するのが一般的です。
- 職業欄：会社員（営業職）
- 職歴欄：（株）〇〇〇〇 営業部に所属
このように、会社名や所属部署、具体的な役職まで記載することで、より明確で信頼性の高い情報提供となります。万が一「サラリーマン」と記載してしまうと、「職業意識が低い」と受け取られかねないため、注意が必要です。
また、転職エージェントとの面談時でも、「サラリーマン」とだけ表現するのではなく、できる限り「会社員として〇〇業界で営業経験があります」と具体的に伝えると、プロフェッショナルな印象を与えることができます。
6-2. 法的・公的文書での表現に迷ったら
税務署への書類提出、役所での各種申請、年金・保険関係の手続きなど、公的な場面でも「会社員」という表現が基本です。
具体例として、
- 確定申告書類には「給与所得者」
- 住民票申請書や国民年金の届け出では「会社員」または「給与所得者」
といった記載が求められます。
このとき、「サラリーマン」という表現は一切使用されません。公的機関では「雇用関係に基づく給与所得」という厳密な区分が求められるため、あいまいな表現は排除されるのです。
また、金融機関でのローン審査やクレジットカード申請の際も、「職業：会社員」と記載するのが通常です。ここで「サラリーマン」と書くことはまずありませんので、間違えないようにしましょう。
6-3. 人に伝えるとき、どちらの言葉が伝わりやすい？
では、友人や知人、初対面の相手に自己紹介する際はどうでしょうか。ここでは多少柔軟な対応が可能です。
たとえば、カジュアルな会話であれば、
- 「普通のサラリーマンです」
- 「会社員やってます」
というどちらの表現も違和感なく通じます。特に、「サラリーマンです」と言ったほうが、親しみやすさを感じさせる効果もあるため、砕けた場面ではむしろ適している場合もあります。
一方、ビジネスシーンや初対面の正式な場面では、やはり「会社員です」と名乗るほうが無難です。自己紹介は第一印象を決定づける要素のひとつであり、ここでカジュアルすぎる表現を使うと、ビジネスパーソンとしての信頼感が損なわれる可能性があるためです。
また、特定の業界（特にIT業界やコンサルティング業界など）では、「会社員」というより「〇〇のプロジェクトマネージャーです」「〇〇に関する業務を担当しています」と職務内容に直接触れる自己紹介が好まれる場合もあります。これは、単なる肩書きよりも、何ができる人なのかを重視する文化が根付いているためです。
ポイント
カジュアルな場面では「サラリーマン」も許容されますが、公式文書、ビジネスシーン、履歴書・職務経歴書では必ず「会社員」という表現を使うのが基本です。状況に応じた言葉の使い分けが、社会人としての信頼感や適応力を高める鍵となります。
7. 言葉が持つイメージとキャリア観の変化
「サラリーマン」や「会社員」という言葉は、それ自体に明確な定義がある一方で、聞く人に与えるイメージや社会的な連想が大きく異なります。そして、そのイメージもまた時代とともに変化しています。ここでは、それぞれの言葉が持つ印象と、働き方やキャリアに対する考え方の変遷について整理していきます。
7-1. 「サラリーマン＝会社に依存」というイメージは今もある？
かつて「サラリーマン」という言葉には、企業に長年勤め上げ、昇進と年功序列でキャリアを積み重ね、退職金を受け取って老後を迎えるという、いわゆる「安定した人生設計」が強く結び付いていました。このイメージは、高度経済成長期やバブル経済期を支えた象徴とも言えるでしょう。
しかし、現代においては、この「会社に依存して生きる」というモデル自体が変化しています。リストラや早期退職制度の普及、副業解禁、転職市場の活性化などにより、会社に一生依存する働き方はもはや主流ではありません。
そのため、「サラリーマン」という言葉に対しても、「会社の言いなりになっている」「自らキャリアを切り開かない」といったネガティブなイメージを持つ人が増えてきています。特に若い世代にとっては、サラリーマン的生き方は時代遅れと感じられることさえあります。
7-2. 「会社員」と聞いて想像される働き方
対して「会社員」という言葉は、より中立的・ニュートラルなイメージを持っています。単に「会社に所属して働いている人」という事実を表現するだけで、働き方の姿勢や人生観を暗示するものではありません。
そのため、「会社員」という表現を使うことで、「組織に属しているが、個としてのキャリアを意識している」というニュアンスを伝えることができます。近年は、会社に籍を置きながらも副業をしたり、社内外のプロジェクトに関わったりする柔軟な働き方が一般化しており、こうした多様なスタイルにも適合しやすい言葉となっています。
また、「会社員」と名乗ることで、業界や職種を問わず、さまざまな働き方をする人たちを包括的に表現できるため、より時代に合った呼称と言えるでしょう。
7-3. キャリア観の変化と呼称の見直し
日本社会では、長らく「安定＝会社勤め」という価値観が支配的でしたが、今では「個人のスキル」「市場価値」「自立したキャリア構築」が重視されるようになっています。このキャリア観の変化に伴い、「サラリーマン」という言葉自体が、少しずつ時代遅れの響きを帯び始めているのです。
たとえば、リクルートやビズリーチなどの転職支援サービスでは、「サラリーマン」よりも「プロフェッショナル」「ビジネスパーソン」といった言葉を積極的に使用しています。これは、働く個人に主体性を求める時代背景を反映したものです。
また、キャリア教育の現場でも、「サラリーマンになろう」という目標設定はあまり見られなくなり、「自分の強みを活かして社会で活躍する」といった表現が主流になっています。つまり、単なる「会社に雇われる」ことがゴールではなく、会社という組織を活用しながら、いかに自分らしく生きていくかが問われる時代になったのです。
ポイント
「サラリーマン」と「会社員」は、言葉そのものだけでなく、そこに込められた価値観や働き方のイメージにも違いがあります。今後は、キャリア観の変化に合わせて、自らの働き方をどう表現するかにも意識を向けることが、より豊かなキャリアを築くうえで重要になっていくでしょう。
8. 現代の職業観における言葉選びの大切さ
現代社会では、働き方が多様化するにつれて「職業をどう表現するか」がますます重要になっています。ただ単に「働いている」という事実だけでなく、どのような働き方を選び、どんなスタンスでキャリアを築いているのかが、自己紹介やビジネスシーンで大きな意味を持つようになりました。この章では、なぜ言葉選びが大切なのか、どのように意識すべきかを具体的に考えていきます。
8-1. 「言葉の選び方」が印象や評価を左右する理由
言葉には力があります。どんな単語を選ぶかによって、相手に与える印象は大きく変わります。
たとえば、自己紹介の場面で「サラリーマンです」と言うと、「会社に雇われている一般的な労働者」というやや受け身なイメージを抱かれる可能性があります。一方、「会社員です」と答えた場合、よりニュートラルなイメージとなり、相手に無用な先入観を与えるリスクが少なくなります。
さらに、「IT企業でマーケティングを担当しています」「スタートアップで事業開発に携わっています」といった表現であれば、自分の役割や専門性が具体的に伝わり、プロフェッショナルとしての印象を強めることができます。
つまり、言葉選びひとつで、相手がこちらを見る目線や評価が大きく変わるということです。特にビジネスの場面では、短い自己紹介がその後の関係性を大きく左右するため、慎重に言葉を選ぶ必要があります。
8-2. キャリア相談やコーチングでも問われる職業認識
近年では、キャリア相談やキャリアコーチングを受ける人が増えていますが、その際にも「自分をどう定義するか」が重要なテーマになります。
キャリアアドバイザーから「あなたはどんな仕事をしているのですか？」と問われたときに、「ただのサラリーマンです」と答える人と、「IT業界でデータ分析を担当しています」と答える人とでは、キャリアプランの立て方にも大きな差が生まれます。
「サラリーマン」という曖昧な自己認識では、自分の強みや方向性を的確に捉えにくく、成長の機会を逃してしまうこともあります。一方、自分の役割や得意分野を明確に言語化できる人は、キャリアの選択肢が広がりやすく、スムーズに次のステップへ進むことができるのです。
このように、「自分をどう表現するか」は、単なる言葉遣いの問題にとどまらず、キャリア形成そのものに直結する重要な課題と言えます。
8-3. 多様化する働き方を正確に表現するために
副業、フリーランス、業務委託、リモートワーク、パラレルキャリア──現代の働き方は非常に多様であり、単一の言葉では表現しきれないケースも増えています。
だからこそ、「会社員です」「サラリーマンです」といったシンプルなラベルだけでなく、自分の働き方をより具体的に、正確に表現することが求められるのです。
たとえば、
- 「IT企業の正社員で働きながら、週末はライターとして活動しています」
- 「スタートアップの業務委託契約で、マーケティングプロジェクトに参加しています」
というように、自分の働き方を複数の側面から説明できることが理想です。これにより、相手にとっても自分の立場や活動内容が伝わりやすくなり、ビジネスチャンスやキャリアアップの機会にもつながりやすくなります。
ポイント
現代においては、「どこに属しているか」以上に「どのように働いているか」が重要視されています。言葉選びに敏感になり、自分の働き方やキャリアビジョンを的確に表現することは、ビジネスでもプライベートでも欠かせないスキルのひとつと言えるでしょう。
9. Q&A：よくある質問
ここでは、「サラリーマン」と「会社員」の違いに関して、読者の方からよく寄せられる質問を取り上げ、それぞれ丁寧に解説していきます。どれも多くの人が一度は疑問に思ったことがあるテーマですので、ぜひ参考にしてみてください。
9-1. 「サラリーマン」は男性だけに使う言葉？
結論から言えば、「サラリーマン」という言葉は本来、性別を問わず使用できます。しかし、歴史的に見れば、「サラリーマン」という表現は、昭和の高度成長期に、主に男性会社員をイメージして広がった背景があります。そのため、今でも無意識のうちに「男性の会社員」を指すように受け取られることが少なくありません。
一方で、女性の会社員に対しては「OL（オフィスレディ）」という別の呼称が使われてきた時代もありましたが、これも現在では時代遅れとされる場面が多くなっています。現代では性別による呼び方の違いを避け、「会社員」「ビジネスパーソン」といった中立的な表現を選ぶことが推奨されています。
9-2. 会社に勤めていてもサラリーマンでないケースとは？
会社に勤めている場合でも、必ずしも「サラリーマン」と呼ばれるとは限りません。たとえば、取締役や役員など、経営側の立場にある人は、一般的に「サラリーマン」とは呼ばれないことが多いです。
サラリーマンは「雇われて給与を得る存在」というニュアンスが強いため、会社の経営に参画する立場や、出資者としての立場を持つ人たちは、自己責任のもとで経営判断を下す側に位置付けられ、「会社員」や「サラリーマン」というよりは「経営者」「役員」として区別されます。
また、個人事業主として企業と業務委託契約を結んで働いている場合も、形式上は会社に関わっていても「サラリーマン」には該当しません。
9-3. 専業主婦がパートで働く場合は会社員？
専業主婦がパートタイムで働き始めた場合、「会社員」と呼べるかどうかは雇用形態によって異なります。
通常、パートタイム労働者は非正規雇用の一種であり、短時間勤務・限定的な業務範囲を特徴とするため、一般的には「会社員」とは区別されることが多いです。また、社会保険や厚生年金への加入条件を満たしていない場合、法律上も「被用者」としての扱いが限定されることがあります。
とはいえ、広義では企業に雇われて働いていることには変わりないため、文脈によっては「会社員の一種」として説明されることもあります。正式な場では、「パートタイム従業員」と記載するのが正確です。
9-4. 企業の役員や管理職もサラリーマンに含まれる？
管理職に昇進しても、会社に雇用され、給与を得ている立場であれば基本的には「サラリーマン」に含まれます。課長、部長といった役職についても、サラリーマンであることに変わりはありません。
ただし、会社の役員（取締役、代表取締役など）に就任した場合は状況が異なります。役員は雇用契約ではなく、委任契約に基づいて会社に関与する立場となるため、法律上も「労働者」とはみなされず、労働基準法の適用対象外になります。
そのため、役員クラスになると、一般的には「サラリーマン」とは区別され、「経営層」「役員」として別カテゴリーで語られることが多いです。
9-5. 今後は「会社員」や「サラリーマン」ではなくなる？
現代の働き方がますます多様化している中で、「サラリーマン」や「会社員」といった従来のラベルは、今後さらに曖昧になっていくと考えられます。
副業を持つ会社員、個人事業主との二重の顔を持つビジネスパーソン、ギグワーカーとしてプロジェクト単位で働く人々──こうした働き方が普及するにつれ、単に「会社に勤めている」だけでは個々人のキャリアや働き方を適切に表現できなくなってきています。
今後は「スキルベースで働く人」「プロジェクト型ワーカー」「パラレルキャリア型ビジネスパーソン」といった、より具体的な表現が増えていくでしょう。そして、単純に「サラリーマン」とか「会社員」と一括りにする時代は、次第に終わりを迎えるのかもしれません。
ポイント
言葉の使い方一つで、自分の立場や働き方を的確に伝えることが求められる時代になっています。時代の変化に合わせて、自分自身をどう表現するか意識していくことが大切です。
10. まとめ
これまで、「サラリーマン」と「会社員」の違いについて、さまざまな角度から掘り下げてきました。最後に、これらのポイントを整理しつつ、言葉の背景や今後の展望について総括していきます。
10-1. サラリーマンと会社員の違いをもう一度おさらい
まず基本的な違いとして、「サラリーマン」は給与所得者全般を指す比較的広い概念であり、語源的には和製英語であることが分かりました。一方、「会社員」は、法人組織に属して雇用されている人を正確に指す用語です。サラリーマンという言葉はややカジュアルで感情的なニュアンスを持ち、会社員は中立的で事実を淡々と表現する言葉だと言えるでしょう。
また、法律や公的書類では「会社員」「給与所得者」といった正確な表現が用いられ、公式な場面で「サラリーマン」という単語が使われることはまずありませんでした。こうした違いを理解した上で、場面に応じた適切な言葉選びが求められるのです。
10-2. 状況に応じた言葉の使い分けを意識しよう
日常会話、ビジネスシーン、履歴書、公的手続き──それぞれの場面でふさわしい言葉は異なります。カジュアルな場では「サラリーマン」と名乗ることで親しみやすさを演出できる場合もありますが、公式な書類やビジネスの場面では必ず「会社員」という表現を選ぶべきです。
さらに、自己紹介やキャリアの説明においても、単に「会社員です」だけで済ませるのではなく、「どのような業務に従事しているのか」「どのようなスキルを持っているのか」を明確に伝えることで、相手に与える印象を大きく高めることができます。
言葉選びは、自分自身のキャリアや働き方をどう見せるかという点にも直結しているのです。
10-3. 言葉の変化は、社会や働き方の変化を映すもの
「サラリーマン」という言葉が生まれたのは、昭和初期から戦後にかけての日本社会の中で、都市部における新たな中間層の台頭と密接に関係していました。その後、高度成長期を支えた「サラリーマン文化」が日本経済を牽引してきたわけですが、現代においてはその働き方や社会観が大きく変わりつつあります。
終身雇用制度の揺らぎ、副業・兼業の一般化、リモートワークの普及、ジョブ型雇用へのシフトなど、働き方の選択肢は格段に広がりました。これに伴い、「会社員」という表現も、単なる「組織に属する労働者」という意味を超えて、さまざまな働き方を内包する概念へと進化しつつあります。
今後、さらに働き方が多様化すれば、「サラリーマン」「会社員」というラベル自体も、より細分化された言葉や新たな表現に置き換わっていくかもしれません。
たとえば、「プロジェクトベースワーカー」「ハイブリッドワーカー」といった新しい用語が浸透する日も近いでしょう。
だからこそ、今のうちに「サラリーマン」と「会社員」という言葉の違いを正しく理解し、文脈に応じた使い分けができるようになっておくことは大切です。それは単に言葉遣いの問題ではなく、自らの働き方や生き方に対する意識を高め、未来に備えるための第一歩でもあるのです。
あなたがこれからどんなキャリアを築いていくにせよ、言葉を正しく選び、状況にふさわしい自己表現ができることは、必ず大きな武器となるでしょう。社会や時代が変わっても、しなやかに、そして確かな意志を持って生き抜いていきましょう。
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