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人手不足なのに仕事を増やす会社の現実とは?企業が抱えるジレンマと課題を解説

「人が足りないのに、なんでまた仕事を増やすの?」
そんな思いを抱きながら、日々の業務に追われている方も少なくないのではないでしょうか。人手不足が叫ばれて久しい現在、現場の社員は明らかに限界を迎えているにもかかわらず、なぜか次から次へと新しい業務が割り振られる――そのような矛盾した状況に直面している会社が全国で増えています。

一見、非合理にも思える「人手不足なのに仕事を増やす」という会社の対応。しかし、単なる経営の無策やブラック体質と片付けてしまっては、根本的な理解には至りません。企業がそのような選択をせざるを得ない背景には、社会全体の労働力不足、採用難、顧客からの要望、業績維持のプレッシャーなど、複雑に絡み合った事情があります。

一方、現場で働く人々は、目の前の仕事をどうこなすか、自分をどう守るか、日々模索しながら働いています。「辞めたい」と思いながらも生活や将来への不安から留まり、納得できないまま働き続けてしまう方も多いはずです。

この記事では、そんな現場社員の声に寄り添いながら、「なぜこんな状況になっているのか」「企業はどうして仕事を減らせないのか」「社員は何ができるのか」という点を多角的に掘り下げていきます。さらには、働く側・経営する側の両方がこれからどう向き合っていけるかについても、現実的なヒントを提示していきます。

今の会社で働き続けるべきか、それとも新しい道を探すべきか。答えの出にくい問いに向き合うあなたにとって、本記事が一つの判断材料になることを願っています。

 目次 CONTENTS

1. 人手不足なのに仕事を増やす会社で働くということ

人手不足の中、仕事量がどんどん増えていく――このような状況に置かれると、現場の社員たちは肉体的にも精神的にも疲弊してしまいます。最初は「忙しいけど頑張ろう」と前向きに取り組めていた人も、次第に無力感や不信感を抱くようになり、働く意欲を失っていくことが少なくありません。
この章では、そんな社員たちが抱えるリアルな苦悩に焦点を当て、なぜこのような状態が生まれるのかを掘り下げていきます。

1-1. 働く人のリアル:限界を感じる日々

朝から晩まで、処理しきれないほどの仕事を抱え、毎日が綱渡りのような状態。「また新しい業務が追加された」「誰も引き継ぎをしてくれない」「担当外の仕事まで任される」――そんな声が現場にはあふれています。
現場で働く人たちは、自分のキャパシティを超えて仕事を引き受けざるを得ない状況に追い込まれ、心身ともに消耗していきます。休日出勤や残業が常態化しても、それに対する十分な評価や報酬がない場合、モチベーションは急速に低下します。

また、周囲の同僚も同じように疲弊しているため、「助けを求めたくても求められない」という孤立感に苛まれることもあります。こうした限界感が積み重なると、最悪の場合、心身の不調や離職へとつながってしまいます。

1-2. 「人が足りないのに何で?」という疑問の正体

社員たちが感じる最も大きな疑問は、「人手が足りないとわかっているのに、なぜさらに仕事を増やすのか」という点でしょう。
これは、単なる現場レベルの問題ではなく、企業全体の方針やビジネスモデルに起因していることが多いのです。たとえば、「受注した仕事を断れない」「既存のクライアントとの関係を絶対に維持したい」といった事情から、キャパシティを超えた業務を引き受けざるを得ない企業は少なくありません。

また、「今は苦しいが、繁忙期を乗り切れば何とかなる」という楽観的な見通しを持ってしまう経営層も存在します。しかし、実際には業務量の増加が常態化し、現場への負担だけが増していく結果となるケースが目立ちます。このズレが、社員たちにとって大きな不満と疑念を生み出しているのです。

1-3. 担当業務の“無言の上乗せ”に気づく瞬間

人手不足の職場では、上司や会社側が明確に「あなたの仕事量を増やします」と言わなくても、自然な流れで担当範囲が広がっていくことが多々あります。最初は簡単なサポート業務だったものが、気づけば「これも担当してほしい」「あれもお願いできる?」と次々に追加され、気づけば本来の業務範囲を大きく超えてしまう――そんな経験を持つ方も多いでしょう。

この「無言の業務上乗せ」は、社員に強いストレスを与えます。正式な役職変更や昇給が伴わないため、達成感も少なく、むしろ不公平感だけが積み重なっていきます。
しかも、業務がうまく回ると、それが「当然」と見なされるようになり、さらに新しいタスクが追加される悪循環が生まれます。これにより、社員は「努力しても報われない」と感じ、自己肯定感を大きく損なうことになるのです。

このように、人手不足なのに仕事を増やす会社で働く現場社員は、日々限界と戦いながら、疑問とストレスを抱え、無理を重ねています。
しかし、なぜ企業はこうした現状を放置せざるを得ないのでしょうか。その背景を、次章でさらに深く掘り下げていきます。

2. 企業はなぜ仕事を減らすどころか増やすのか

現場で働く社員から見れば、「人手不足なのに、なぜ無理をしてまで仕事を増やすのか?」という疑問はごく自然なものです。しかし、企業の内部事情を見ていくと、単純に「無計画だから」「現場軽視だから」というだけでは片付けられない複雑な背景があることがわかります。この章では、企業側が仕事を減らせない、むしろ増やしてしまう理由について掘り下げていきます。

2-1. 「やれるだけやる」営業至上主義の文化

多くの企業では、営業部門が売上を伸ばすことに強いプレッシャーを感じています。特に競争の激しい業界では、受注件数や売上高の増加が会社の成長を示す最もわかりやすい指標とされるため、多少無理をしてでも案件を受ける傾向が強まります。

この「やれるだけやる」文化は、短期的には売上アップに寄与するかもしれませんが、現場への負担を無視した営業活動が続くと、次第に生産性が落ち、結果としてサービス品質や社員の満足度も低下していきます。それでもなお、売上重視の経営方針を変えられないのは、業界内の熾烈な競争に勝ち残るために数字を追わざるを得ないという現実があるからです。

また、営業担当者自身もノルマ達成に必死であり、現場のキャパシティを十分に把握せずに案件を持ち込むこともあります。このすれ違いが、現場にしわ寄せを生んでしまう一因となっているのです。

2-2. 組織が「人を補充しない理由」は明確にある

単に人を増やせばいいのでは?と考えるのは自然ですが、企業側にも人員補充をためらう理由が存在します。

まず、コストの問題です。正社員を一人採用し、育成するためには、給与だけでなく、社会保険料、福利厚生費、教育コストなど、かなりの固定費がかかります。これらの費用負担を考えると、たとえ人手が足りなくても、簡単には採用に踏み切れないという事情があります。

また、景気や業績の先行き不透明感も採用抑制の大きな要因です。もしこの先、業績が悪化した場合、雇用した社員を維持できなくなるリスクを考えると、慎重にならざるを得ません。さらに、労働市場全体で人材が不足している状況では、募集をかけても適切な人材が集まらないという問題も深刻化しています。

つまり、企業側にとっても「人手を増やしたくても増やせない」現実があり、これが結果として現場社員の負担増加へとつながっているのです。

2-3. 利益・取引先・株主――企業が抱える三重苦

企業は、自社の利益を確保するだけでなく、取引先への信頼維持や株主への責任も背負っています。この三方向への配慮が、仕事量を減らす判断をますます難しくしているのです。

たとえば、取引先からの依頼を断ると、「この会社は柔軟に対応できない」と見なされ、関係悪化や取引停止のリスクが生じます。特に長年続いている取引関係では、「無理をしてでも応えなければ」という圧力が強く働きます。

株主に対しては、短期的な業績悪化を嫌う傾向があるため、多少現場に無理を強いてでも売上や利益の数字を守る必要があります。上場企業であればなおさら、四半期ごとの業績報告が株価に直結するため、経営層は現場の悲鳴よりも目先の業績を優先せざるを得ないケースが少なくありません。

こうした複雑な力学の中で、企業は「今は苦しくても、なんとかやりきるしかない」という選択を取りがちです。その結果、現場社員には業務の増加という形で負担が押し寄せることになります。

このように、企業が仕事を減らせず、むしろ増やしてしまう背景には、経済的な現実と組織内部の論理が絡み合っています。次の章では、なぜ人が増えないのか、そしてなぜ社員がどんどん辞めてしまうのかについて、さらに深く掘り下げていきます。

3. 人が増えない・辞める理由はどこにあるのか

人手不足なのに仕事を増やす現象が続く裏側には、「そもそも人が増えない」という大きな問題があります。採用しても応募が来ない、採用してもすぐ辞めてしまう――この悪循環は、なぜ生まれてしまうのでしょうか。この章では、現場の肌感覚にも寄り添いながら、その原因を紐解いていきます。

3-1. 「採用が難しい」は本当なのか?中の人の声

多くの会社で「採用活動はしているが、なかなか人が集まらない」という声が聞かれます。確かに、少子高齢化により労働人口そのものが減少している現実は否めません。また、コロナ禍以降、働き方や仕事に対する価値観が大きく変わったこともあり、「単に仕事があるだけ」では人を惹きつけにくくなっています。

とはいえ、現場で働く社員からすると、「本当に全力で採用しているのか?」「条件が悪いから誰も来ないんじゃないか?」と感じることも多いでしょう。実際、求人票に掲げる給与水準や労働条件が世間の平均よりも低い、あるいは業務内容が過酷すぎる場合、応募者が集まらないのは当然の結果とも言えます。

さらに、採用活動そのものに積極性がない企業も存在します。「募集はしているけど、広報も工夫していない」「紹介会社に丸投げで、採用に熱意を感じない」といったケースでは、そもそも人が集まる土壌ができていないのが現実です。

3-2. 応募者が減った職種、増えた業務

特に、単純作業やルーチンワークが中心だった職種では、近年応募者が大幅に減少しています。理由は明白で、似たような仕事でも、もっと待遇が良い、もしくはストレスが少ない職場が他にたくさんあるからです。

さらに、人手不足の中で業務量だけが増え続けるため、「本来の職務」以外の仕事を任される場面が増えてきました。たとえば、事務職なのに営業サポートや雑務を兼務させられる、技術職なのにカスタマーサポートまでやらされる、といったケースです。

このように、求人票に書かれた業務内容と、実際に求められる仕事がかけ離れている場合、入社してもすぐに辞めてしまうリスクが高まります。「思っていたのと違った」と感じた社員が早期離職するのは、むしろ自然な流れとも言えるでしょう。

3-3. 定着しない会社に共通する組織の問題点

人が増えないだけでなく、せっかく採用した社員がすぐに辞めてしまう――そんな会社には、いくつか共通する問題があります。

まず第一に、教育体制の不備です。新しく入った社員に対して、十分な研修やフォローを用意せず、いきなり現場に放り込んでしまうケースは少なくありません。これでは、経験者であっても不安を抱え、早々に見切りをつけてしまいます。

また、現場に「新人を受け入れる余裕がない」という心理的な壁が存在する場合もあります。既存社員が疲弊していると、新人を育てることにエネルギーを割けず、結果として孤立させてしまうのです。誰にも頼れずに孤立感を深めた新人が、短期間で辞めていくのは当然の帰結と言えるでしょう。

さらに、評価制度が不透明な職場も定着率が低い傾向にあります。どれだけ頑張っても報われない、評価の基準が曖昧だ、好き嫌いで昇進が決まる――こうした環境では、社員は希望を持てず、長く勤めようとは思わなくなります。

このように、単なる外部環境だけではなく、内部体制にも問題がある場合、人は増えず、定着せず、結果として現場にますます負担が集中する悪循環が生まれてしまうのです。

次の章では、こうした問題が管理職層にどう影響しているのか、中間管理職たちのリアルな葛藤に焦点を当てていきます。

4. 職場の中間管理職は“盾”か“加害者”か

現場の社員たちが人手不足と増える業務に苦しむ一方で、その板挟みになっているのが中間管理職たちです。彼らは「現場を守る盾」であるべきなのか、それとも「上層部の意向を押し付ける加害者」になってしまっているのか。この章では、中間管理職が抱える葛藤と、現場との関係性について深く掘り下げていきます。

4-1. 挟まれる立場の管理職たちの葛藤

中間管理職とは、上層部と現場社員との間に立ち、双方の要求や期待を受け止める存在です。しかし、人手が不足しているにもかかわらず仕事が増え続ける状況下では、彼らも大きなプレッシャーを感じています。

経営陣からは「現場でなんとかしてほしい」と暗に求められ、現場からは「これ以上無理だ」と悲鳴をあげられる。この板挟み状態のなかで、心身をすり減らしている管理職は少なくありません。

また、自分自身もプレイングマネージャーとして通常業務を持ちながら、部下のマネジメントまで求められるケースが増えています。「管理職」とは名ばかりで、実態は“現場リーダー+業務負担増”という二重の重荷を背負っているのです。

このような状況では、管理職自身にも余裕がなくなり、結果として現場社員の声を受け止めきれず、さらに不満を招くという悪循環に陥ってしまいます。

4-2. 現場の声は届いている?届かない?

「うちの管理職に何を言っても無駄」「意見してもスルーされる」――そんな不信感を抱いている社員は多いでしょう。しかし、現場の声が上層部に届かない原因は、管理職個人の問題だけとは限りません。

一つは、組織構造の問題です。意見が上がっても、間に何層も管理ラインが存在するため、現場のリアルな声が徐々にぼやけていき、最終的に上層部には伝わらないことがあります。また、管理職自身が「これ以上反発したら自分の立場が危うい」と考え、現場の不満を意図的に抑え込むケースも存在します。

さらに、「声を上げてもどうせ変わらない」というあきらめムードが管理職の中にも蔓延している場合、現場の声を拾おうという意欲自体が失われてしまいます。その結果、現場との間に見えない壁ができ、双方の信頼関係が崩れてしまうのです。

4-3. 上司に言っても改善されない理由を考える

現場社員がいくら声を上げても、状況が改善されないことには理由があります。単純に「上司が無能だから」と決めつけてしまうのは簡単ですが、実際にはもっと根深い問題が潜んでいます。

まず、会社のビジネスモデルや収益構造そのものに無理がある場合、現場レベルでどれだけ訴えても抜本的な改善は困難です。「この仕事を断ったら売上が減る」「人を増やしたら経営が成り立たない」という根本的な問題に直面していると、上司も手を打ちたくても打てないのが現実です。

また、企業文化として「現場の声を重視しない」「下からの意見は受け入れない」という体質が染み付いている場合、いくら優れた管理職であっても孤軍奮闘するしかなく、結果的に何も変えられないというケースもあります。

このように、管理職もまた現場と同じく、組織の歪みの被害者であることが少なくありません。
だからといってすべてを諦めるべきではありませんが、現場の声を届けるにも、適切なタイミングと方法が必要です。それについては、次章で詳しく触れていきます。

5. 「増える仕事」に押し潰されない自衛の工夫

人手不足なのに仕事が増え続ける職場で働く場合、何もしなければ心身ともに押し潰されてしまいます。しかし、会社の体制がすぐに変わるとは限りません。だからこそ、現場の社員自身が「自分を守るための工夫」を持つことが、非常に重要になります。この章では、限界を迎える前にできる具体的な自衛策についてお伝えします。

5-1. やるべきこと・やらなくていいことの整理法

まず最初に取り組みたいのは、「すべてを頑張ろうとしない」という意識改革です。真面目な方ほど、与えられた業務を完璧にこなそうとしがちですが、リソースが限られている中では、優先順位を明確にしていかなければなりません。

具体的には、以下の観点でタスクを仕分けしてみましょう。

  • 緊急かつ重要な仕事(すぐに取り組むべき)

  • 重要だが緊急ではない仕事(計画的に進める)

  • 緊急だが重要ではない仕事(誰かに依頼できるか検討する)

  • 緊急でも重要でもない仕事(手を付けない・削減を提案する)

この「タスクの四象限分類」は非常に有効です。すべてを自分で抱え込もうとせず、「今、絶対に必要なことは何か」を冷静に見極めることが、結果として自分を守ることにつながります。

また、「このタスクは今週中でないと本当にまずいのか?」と一度立ち止まって考える癖をつけるだけでも、心理的な負担はぐっと軽くなります。

5-2. 一人で抱え込まない仕事術:周囲との連携

限られた人員で仕事を回さなければならない場合、個人プレーに頼るのではなく、周囲との連携を最大限に活用することが重要です。

たとえば、自分だけで判断して抱え込まず、定期的にチーム内でタスク状況を共有する仕組みを作りましょう。「いま自分はこれだけ抱えている」「これとこれの優先順位に悩んでいる」とオープンに伝えるだけでも、意外と助け船が出ることがあります。

また、自分一人では完遂できない案件については、早めにヘルプを求める勇気も必要です。「こんなことお願いしたら迷惑かな」と遠慮してしまうこともありますが、最終的にプロジェクト全体が滞るよりは、早めにSOSを出す方が結果的に全体にとってプラスになります。

加えて、タスクを小分けにして共有しやすくする工夫も有効です。「この一部分だけでも誰かにお願いできるか?」と考えるだけで、負担の分散が可能になります。

5-3. タスクを見える化して上司と対話する方法

仕事が増えていく中で、上司に対して「これ以上は厳しい」と伝えるのは勇気が要るものです。しかし、単に「忙しいです」と訴えるだけでは、具体性に欠け、改善につながりにくいのが現実です。

効果的に伝えるためには、自分が抱えているタスクを「見える化」しておくことが大切です。
たとえば、

  • 今取り組んでいる業務一覧

  • それぞれのタスクにかかる想定時間

  • 優先順位(重要度・緊急度)

  • 既に発生している支障(納期遅れ、品質低下リスクなど)

これらを整理したうえで、上司に対して「この状態でさらに新しい業務が加わると、どのタスクを後回しにすべきでしょうか?」と相談する形に持っていきます。

ポイントは、単なる不満や弱音ではなく、「業務の最適化」という建設的なテーマとして対話することです。上司にとっても、「感情的に文句を言われている」と受け取るのではなく、「現場のリソース管理の一環」として受け止めやすくなります。

さらに、対話の中で「この業務はチームで分担できないか」「外部リソースを活用できないか」といった提案を交えれば、単なる消極的な訴えではなく、主体的な働きかけとして評価されやすくなります。

仕事を抱え込まず、周囲と連携し、上司と建設的に対話していく――これらの小さな積み重ねが、押し潰されずに働き続けるための大きな力になります。

次章では、さらに踏み込んで、社員自身が現場改善に向けてできる具体的なアプローチ方法についてご紹介します。

6. 社員ができる「現場改善」のアプローチ

現場に問題が山積していると、「どうせ何を言っても無駄だ」と諦めたくなる気持ちも湧いてきます。しかし、何も行動しなければ状況は変わりません。たとえ小さな一歩でも、現場から改善を起こすことは可能です。この章では、社員自身ができる現場改善の具体的なアプローチ方法をご紹介します。

6-1. “やり方の工夫”を持ちかけるタイミング

現場改善を進めるうえで大切なのは、「ただ不満を言うだけ」にならないことです。不満はあって当然ですが、それを「こうすれば改善できるのでは?」という提案に変えていくことが必要です。

たとえば、日々の業務フローに無駄や二度手間が多いと感じたら、その部分を具体的に指摘し、「この手順を簡素化すれば、◯◯分の時短につながります」といった形で提案してみましょう。
また、タイミングも重要です。上司やチームに余裕があるときや、定期的な会議、ミーティングなど、比較的冷静に意見を聞いてもらえる場を狙うとよいでしょう。

忙しさのピーク時や、感情が高ぶっている場面で改善提案をしても、かえって反発を招いてしまうことがあるため、状況を読むことも忘れないようにしたいものです。

6-2. 業務効率化提案が通りやすくなる伝え方

どんなに良い改善案でも、伝え方を間違えると受け入れてもらえません。ポイントは、「現場の負担軽減」だけでなく、「会社にとってのメリット」を合わせて示すことです。

たとえば、単に「作業が大変だからやめたい」と言うのではなく、

  • 効率化によってミスが減る

  • 作業時間が短縮され、別の業務にリソースを回せる

  • 社員のストレス軽減につながり、離職防止効果が期待できる

といった、企業側が得られるメリットもあわせてプレゼンすることが効果的です。
また、数字を交えて具体的に示すと説得力が高まります。「この改善で年間〇〇時間の作業時間が削減できます」といったように、効果を可視化するのがコツです。

さらに、提案の際には、「まずは試験的に一部部署だけで実施してみる」といったスモールスタートの提案を添えると、導入のハードルを下げることができます。大きな改革をいきなり求めるのではなく、まず小さな成功体験を積むことが現場改善の第一歩です。

6-3. 現場からボトムアップで変えていく道筋

トップダウンでの改革が期待できない場合でも、現場からボトムアップで少しずつ変化を起こすことは可能です。そのために有効なのが、「仲間を巻き込むこと」です。

一人で声を上げるよりも、複数人で共通の課題を整理し、意見をまとめたうえで改善提案を行ったほうが、説得力が高まります。小さなチーム単位で「ここだけでもやり方を変えよう」と決めて取り組み、成果が出たらそれを広げていく――そんな草の根的なアプローチが、意外と大きな変化につながることもあります。

また、改善活動を“誰かへの批判”にしないことも重要です。「あの部署が悪い」「上が無能だ」と責めるのではなく、「どうしたら皆が楽に、うまく回るか」という建設的な姿勢を常に意識しましょう。
前向きな空気を作ることで、少しずつでも周囲の意識を変えていくことができるはずです。

たとえすぐに大きな成果が出なかったとしても、小さな改善の積み重ねは確実に現場の空気を変えます。そしてその動きが、やがて会社全体を動かす力にもなり得るのです。

次章では、さらに視点を広げ、組織全体がどう変わるべきか、企業が見直すべきポイントと取り組み例についてご紹介していきます。

7. 組織が見直すべきポイントと取り組み例

現場社員がいくら工夫を凝らしても、組織そのものが根本的に変わらなければ限界があります。企業全体が持続的に成長し、社員が安心して働ける環境を整えるためには、経営層や管理職が意識的に組織改革に取り組むことが不可欠です。この章では、企業が見直すべきポイントと、具体的な改善策についてご紹介します。

7-1. 「断る力」を企業が持つための再設計

まず最初に取り組むべきは、「無理な仕事を断る力」を持つことです。
現状、多くの企業は取引先からの要望をすべて受け入れようとするあまり、現場が疲弊する結果を招いています。しかし、顧客満足を優先しすぎて社内が機能不全に陥ってしまえば、結果的にサービス品質も低下し、顧客離れを引き起こすリスクが高まります。

ここで必要なのは、「選択と集中」です。
すべての案件を平等に扱うのではなく、自社のリソースや戦略に合った仕事を見極め、時には「お断りする」判断を下す勇気が求められます。そのためには、

  • 自社の強みと弱みを明確にする

  • 優先順位の基準を社内で共有する

  • 営業段階から現場のキャパシティを考慮する体制を整える

といった仕組みづくりが不可欠です。

「すべてを受け入れないと生き残れない」という思い込みを捨て、長期的な視点で事業を選別する柔軟さが、組織の持続可能性を高めるカギとなります。

7-2. 外注化・業務委託・DX導入などの現実解

人手不足が深刻な状況では、「人を増やす」以外の選択肢にも積極的に目を向ける必要があります。その一つが、業務の外注化・業務委託化です。

たとえば、定型的な作業や専門知識を必要としない業務については、外部パートナーに委託することで、正社員の負担を大幅に軽減できます。特に、経理、人事、ITサポート、カスタマーセンター業務などは、比較的外部化が進めやすい領域です。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も有効な手段です。紙ベースだった業務をクラウド化する、ルーチン作業を自動化ツールで代替する、といった取り組みを通じて、人手に頼らない業務運営体制を構築することが求められます。

ただし、外注やDX導入は単なるコスト削減のためだけではありません。あくまで「社員が付加価値の高い仕事に集中できる環境を作る」という目的意識を持って進めることが重要です。

7-3. 社員の声を拾い、組織改革につなげる方法

現場社員の声を本気で拾い上げ、組織改革に活かす仕組みづくりも欠かせません。
よくある「年に一度のアンケート調査」だけでは不十分です。現場の課題は日々変化しているため、もっとリアルタイムに社員の意見を把握し、スピーディーに対応していく必要があります。

具体的には、

  • 定期的な1on1ミーティングの実施

  • 小規模な意見交換会の開催

  • 社内チャットツールで匿名意見を募集する仕組み

  • 社員提案制度の設置と、実際に提案を採用する文化づくり

などが効果的です。

ここで重要なのは、「意見を聞いて終わり」にしないことです。集めた声をもとに、実際に小さな改善策を実施し、その結果をフィードバックする。このサイクルを回し続けることで、社員は「声を上げても無駄じゃない」と実感でき、組織全体のエンゲージメントが向上していきます。

また、現場からの改善提案を積極的に評価することで、社員一人ひとりが組織改革の当事者として自覚を持つようになり、結果的に自律的な組織運営へとつながっていきます。

このように、企業側も本気で変わろうとすれば、人手不足に負けない強い組織を築くことは十分に可能です。
次章では、もしもそれでも状況が改善しない場合、社員自身が「残るべきか、辞めるべきか」をどう判断すればいいのかについて、現実的な視点から考えていきます。

8. それでも辞めるべきか、残るべきか

人手不足が改善せず、仕事量だけが増え続ける。現場改善にも限界があり、企業側の改革も進まない。そんな状況に置かれたとき、社員一人ひとりは「このままここで働き続けるべきか」「思い切って環境を変えるべきか」という、重い選択に直面します。この章では、自分自身のキャリアと生活を守るために、冷静に判断するための視点をお伝えします。

8-1. 自分にとって何が“働く軸”かを見直す

最初に考えるべきは、「自分は何を大切にして働きたいのか」という“働く軸”です。
たとえば、

  • 安定収入を最優先したい

  • ワークライフバランスを重視したい

  • 成長やスキルアップを重視したい

  • チームワークの良い職場で働きたい

など、人によって重視するポイントは異なります。

今の職場が、自分の働く軸にどれくらい合致しているのかを、客観的に見直してみましょう。ただ「辞めたい」「嫌だ」という感情だけで判断するのではなく、自分にとって本当に譲れない条件は何かを明確にすることが、後悔のない選択につながります。

また、今の不満が一時的なものなのか、構造的に解決しそうにないものなのかも見極めることが大切です。環境が少し変われば改善する見込みがあるのか、それとも根本的に難しいのかを冷静に判断しましょう。

8-2. 残る選択・離れる選択、その判断材料

「残るか」「離れるか」を判断する際には、以下のような材料を参考にしてみてください。

【残る選択が妥当な場合】

  • 上司や同僚に信頼できる人がいる

  • 自分自身の成長機会があると感じられる

  • 一時的な繁忙期であり、明確な出口が見えている

  • 社内改革が本格的に進み始めている

【離れる選択が妥当な場合】

  • 業務量増加が慢性化しており、改善の兆しがない

  • 相談しても無視、もしくは逆に評価が下がる

  • 心身に明らかな不調が出てきた

  • 自分の将来像と今の職場がまったく重ならない

また、離れる場合でも、無計画に辞めるのではなく、次の職場探しや生活設計をしっかり準備してから行動することが大切です。焦って転職してしまうと、また似たような環境に入ってしまうリスクが高くなります。

8-3. キャリアの“出口戦略”を持つ重要性

働き続けるにせよ、転職を考えるにせよ、いずれにしても「自分のキャリアの出口戦略」を持つことが重要です。出口戦略とは、「この会社で何年働き、どのタイミングで次のステップに進むか」という自分なりの計画です。

たとえば、

  • あと2年間はこの職場で経験を積む

  • 新しいスキルを身につけたら転職活動を始める

  • 副業を育てながら、独立を目指す

といった具合に、未来を見据えて行動を設計することです。

明確な出口戦略があれば、たとえ今が苦しい状況であっても、「この苦労には意味がある」と前向きに捉えることができます。逆に、行き当たりばったりで働き続けると、消耗するばかりで、気がついたときには選択肢が狭まってしまうかもしれません。

働く環境を変えることは大きなエネルギーを要します。しかし、自分の人生を守るためには必要な決断です。会社に人生を預けすぎず、いつでも自分で自分の未来を選べる力を持つことが、これからの時代にはますます大切になっていくでしょう。

9. Q&A:よくある質問

ここでは、「人手不足なのに仕事を増やす」職場に悩む方から寄せられやすい質問を取り上げ、できる限り具体的にお答えしていきます。同じような悩みを抱えている方にとって、一つのヒントになれば幸いです。

9-1. どうして人手不足なのに断らず仕事を受けるの?

企業が仕事を断らない理由の一つは、「顧客離れを恐れているから」です。特に取引先との関係を重視する業界では、一度仕事を断ってしまうと「頼りにならない会社」とみなされ、次のビジネスチャンスを失うリスクがあるため、無理をしてでも受注する傾向があります。

また、短期的な売上目標や株主への業績報告など、数字を重視する文化も背景にあります。現場の負担を顧みる余裕がないほど、目先の数字を追わざるを得ない企業体質も影響しています。

9-2. 採用活動は本当にやっているの?

多くの企業は「採用活動をしている」と言いますが、実態はまちまちです。
求人を出しているだけで十分な応募がない場合もあれば、募集条件が厳しすぎたり、待遇が市場平均に比べて劣っているために応募が集まらない場合もあります。

また、採用にかけるリソース(時間・人員・コスト)が限られている会社では、十分な広報活動やフォローができておらず、結果的に採用活動が形骸化しているケースも少なくありません。
本気で人を増やそうとするなら、採用基準や待遇改善、教育体制の見直しまで踏み込む必要がありますが、そこまで至っていない企業も多いのが現状です。

9-3. 不満を言っても何も変わらないのはなぜ?

不満を伝えても状況が変わらない理由には、いくつかパターンがあります。

  • 現場の声を上層部に届けるルートが機能していない

  • 経営側に問題意識がない、または優先順位が低い

  • そもそも会社のビジネスモデル自体に余裕がない

  • 声を上げる側が感情的になりすぎ、建設的な提案になっていない

改善を促すためには、単なる不満ではなく、「どこをどうすれば良くなるか」という具体的な改善提案をセットにして伝えることが大切です。とはいえ、経営陣が現場を軽視している場合には、個人の努力だけで状況を変えるのは難しいこともあります。

9-4. 無理を強いられる職場でどう乗り切る?

無理を強いられる状況でも、心身を守るためには「無理に適応しようとしすぎない」ことが大切です。

  • タスクの優先順位を整理して、すべてを抱え込まない

  • できないことは早めに相談・共有する

  • 小さな成功体験を積み重ねて自己肯定感を維持する

  • プライベートでリフレッシュできる時間を確保する

また、もし可能なら、信頼できる上司や同僚に悩みを共有するだけでも、精神的な負担は軽くなります。職場がどうしても変わらない場合は、自分のキャリアの出口戦略を真剣に考え、いつでも動ける準備をしておくことも一つの防衛策です。

9-5. もう限界、でも転職も怖い…どうするべき?

今の職場が限界だと感じても、すぐに転職することに不安を覚えるのは自然なことです。
まずは、焦らず「情報収集」から始めましょう。

  • 転職エージェントに相談して市場価値を把握する

  • 興味のある業界・職種をリサーチする

  • 必要であればスキルアップを図る

転職は「逃げ」ではなく、「より良い環境に移るための前向きな選択肢」と捉えることが大切です。
また、「今すぐ辞めなくてもいい」という選択肢も忘れないでください。準備が整うまで現職に留まり、転職活動を並行することで、より落ち着いて次のステップを選ぶことができます。

転職は怖いものですが、「今のまま続けるリスク」と「環境を変えるリスク」を冷静に比較し、自分にとってより良い道を選びましょう。

10. まとめ

人手不足なのに仕事を増やす会社で働く社員たちは、今、非常に厳しい状況に立たされています。限界を感じながらも、生活や将来の不安から簡単には辞められず、日々矛盾を抱えながら業務に向き合っている方も多いでしょう。本記事では、現場社員の苦しみに寄り添いながら、なぜこうした事態が起こるのか、その背景と現実について多角的に掘り下げてきました。

企業が人手不足なのに仕事を増やす背景には、営業至上主義の文化、採用難、固定費リスク、取引先や株主へのプレッシャーなど、さまざまな事情が絡み合っています。単に「現場を軽視している」だけではない、組織としての構造的な問題が横たわっていることを理解することは、状況を冷静に見るために欠かせません。

しかし、そうした企業側の事情を理解したうえでなお、現場の負担が増え続けることには大きなリスクがあります。社員のモチベーション低下、離職率の上昇、業務品質の低下――これらはやがて企業自身の存続に関わる深刻な問題へと発展していきます。だからこそ、企業もまた、無理な受注を見直し、外注化やDX化を進め、現場の声を吸い上げる仕組みを整えることが急務なのです。

一方で、社員個人としても、自衛の意識が求められます。すべてを抱え込まず、タスクを整理し、周囲と連携し、建設的な提案をする――小さな工夫を積み重ねることで、押し潰されるリスクを減らすことができます。また、それでも改善が難しい場合には、キャリアの出口戦略を持ち、自分自身の未来を守るための準備を着実に進めるべきです。

「辞めるか、続けるか」という選択に悩んだときは、自分にとって大切な“働く軸”を見直してみてください。今の職場がそれに合致しているか、成長の余地があるか、未来につながるか。冷静に判断し、納得できる選択をしていくことが、最終的には自分の人生を豊かにすることにつながります。

組織も個人も、それぞれが「変わらなければならない」と気づいたとき、本当の意味で働きやすい環境は生まれます。一朝一夕にはいかないかもしれません。それでも、今あなたが抱えている疑問や違和感を見つめ直すことが、より良い未来への第一歩となるでしょう。

「人手不足なのに仕事を増やす」この理不尽な現実に向き合いながら、あなた自身の道を切り拓いていけるよう、本記事が少しでも力になれば幸いです。

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