簿記2級で商業簿記と工業簿記どっちから勉強すべきかを、3級の有無・試験までの期間・得意不得意別に整理し、自分に合った最短ルートと具体的な勉強手順が分かるようにまとめます。
「簿記2級を取りたいけれど、商業簿記と工業簿記ってどっちからやればいいの?」と迷っていませんか。3級を持っているかどうか、試験までどれくらい時間があるかによって、ベストな順番は少しずつ変わります。そのせいでネットを見るほど情報が増え、「結局自分はどれ?」と余計に不安になってしまう人も多いはずです。
この記事では、まず「迷ったときの基本の結論」をお伝えしたうえで、3級取得済みの人・3級なしでいきなり2級に挑戦する人それぞれに合うルートを整理します。さらに、商業簿記→工業簿記、工業簿記→商業簿記、並行学習の3パターンについて、メリット・デメリットや向いているタイプを分かりやすく比較していきます。
また、「試験まで3か月ある場合はどう進める?」「社会人で平日にあまり時間が取れない場合は?」といった、リアルな生活リズムを踏まえたモデルスケジュールも用意します。読んだあとには、「とりあえずこの順番で、この1週間はここまでやればいいんだな」と具体的にイメージできる状態を目指します。
どっちから始めるかで長い受験生活がガラッと変わるわけではありませんが、最初の選び方ひとつで気持ちのラクさや挫折しにくさはかなり違ってきます。あなたの今の状況にいちばんフィットするルートを、一緒に見つけていきましょう。
この記事はこのような人におすすめ!
- 簿記3級に合格していて、次は2級に挑戦したいけれど順番で迷っている人
- 3級を受けていないまま、いきなり簿記2級からスタートしようとしている社会人・学生
- 試験日までの期間が限られており、できるだけ効率よく合格ラインに届きたい人
- 商業簿記と工業簿記の違いや難易度、得点しやすさをざっくりつかんでから勉強を始めたい人
目次 CONTENTS
1. 簿記2級の全体像と商業簿記・工業簿記の位置づけ
簿記2級がどんなレベルの試験で、商業簿記と工業簿記がそれぞれどんな役割を持つのかを整理し、合格までの「地図」をざっくり頭に入れておきます。
簿記2級は、企業のお金の流れを実務で使えるレベルで理解しているかを確かめる試験です。3級が「家計簿+小さなお店」だとしたら、2級は「ちゃんとした会社の経理」をイメージすると近いでしょう。試験範囲も一気に広がるので、最初に全体像をつかんでおくと、のちほど商業簿記と工業簿記の順番を考えるときに迷いにくくなります。
もうひとつ大事なのが、簿記2級は商業簿記と工業簿記の2本立てになっている、という点です。片方だけを勉強して合格する、というよりも、2つを組み合わせて70点以上を狙っていきます。どちらか一方が苦手でも、もう一方でカバーできる可能性があるので、「どっちから勉強するか」を考える前に、それぞれの役割を知っておきましょう。
さらに、独学か講座利用か、試験までの期間、仕事や学校との両立などによって、自分にとっての“現実的な戦い方”が変わってきます。この章では、細かいテクニックに入る前に、「簿記2級って結局どんな試験?」「商業簿記と工業簿記はどう分担しているの?」という土台部分を一度整理していきます。
1-1. 簿記2級で求められるレベルと試験のざっくり概要
簿記2級は、企業の決算書を読んだり作成したりできる“経理担当の入り口レベル”をイメージすると分かりやすいです。3級では単純な売上・仕入・現金の動きが中心ですが、2級になると商品の値引きや分割払い、固定資産、税金、製造原価など、現実の会社でよく出てくる取引がぐっと増えます。
試験自体は、制限時間内に計算と記述をこなすスピード勝負の面もあります。問題を見て「これは商業簿記のパターンだな」「これは工業簿記で使う公式だな」と、ざっくり判別できるようになると、解く順番や時間配分も組み立てやすくなります。どれだけ知識があっても、時間配分がうまくいかないと点数に結び付きにくいので、全体像の把握は意外と大事です。
また、合格ラインは多くの場合70点以上が目安とされます。つまり、すべてを完璧にするというより、商業簿記と工業簿記の両方で「落としちゃいけない基礎問題」を確実に拾うことが合格戦略になります。このあと「どっちから勉強するか」を考えるときも、「得点源にしやすい順番で進める」という視点が役に立ちます。
1-2. 商業簿記と工業簿記の違いを一言でいうと?
ざっくり言うと、商業簿記は「会社全体のお金の動き」、工業簿記は「モノを作るためにかかったコスト」を追いかけるイメージです。商業簿記では、売上や仕入、給料、家賃など、会社としての活動全体を見ていきます。一方で工業簿記は、「この商品を1個作るのに、材料費・人件費・工場の光熱費がどれくらいかかったか」を数字で表していく世界です。
商業簿記は、3級で学んだ内容の延長線上にあるため、3級経験者にとっては“見覚えのある論点が多い”のが特徴です。代わりに新しい論点もかなり増えるので、「わかるところ」と「初耳のところ」が入り混じり、「なんとなく難しい」と感じやすくなります。工業簿記は初めて見る用語も多いですが、ルールや計算パターンが決まっていて得点源にしやすいという一面もあります。
こうした違いを頭に入れておくと、「自分はどのタイプだからどっちから始めた方がラクそうか」が想像しやすくなります。ここで一度、2つの科目の特徴を表で整理しておきましょう。
商業簿記と工業簿記の違いをひと目でつかむ比較表
まずは以下の表を読みながら、「自分がイメージしやすいのはどちらか」を考えてみてください。
| 項目 | 商業簿記 | 工業簿記 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 会社全体の取引・決算書 | 製品を作るための原価・工場の活動 |
| 具体的なイメージ | お店の売上・仕入・経費・利益 | 工場で材料を仕入れて製品を作る流れ |
| メインで扱う数字 | 売上高・仕入高・経費・資産・負債など | 材料費・労務費・製造間接費・製品原価など |
| 3級とのつながり | 3級の延長線上にある内容が多い | 3級ではほぼ登場せず、ほぼ新しい分野 |
| 問題のイメージ | 仕訳・決算整理・財務諸表の作成 | 原価計算表・個別原価計算・総合原価計算など |
| 得意になりやすいタイプ | 決算書を見るのが好き、ストーリーで理解派 | 数字のパズルが好き、計算パターンが得意な人 |
このように並べてみると、商業簿記と工業簿記は「似ているようで見ている世界が違う」ことが分かります。3級の延長で安心して入りたいなら商業簿記寄り、パターン化された計算で点を取りたいなら工業簿記寄り、というざっくりしたイメージを持っておくと、このあと出てくる学習順序の話がぐっと分かりやすくなります。
1-3. 簿記2級合格までの全体像と、2科目のバランス感覚
合格までの道のりをイメージするときは、「商業簿記だけ」「工業簿記だけ」で戦う試験ではないことを意識しておくと安心です。片方が苦手でも、もう片方でしっかり得点できれば合格ラインに届くことは十分あります。逆に、どちらか一方だけ完璧にしようとしても、時間が足りなくなって全体のバランスが崩れてしまうケースも少なくありません。
実務で考えてみると、会社には必ず売上や経費を扱う「商業簿記の世界」と、製造業であれば原価管理を行う「工業簿記の世界」があります。簿記2級では、その両方の基礎を押さえることで、「この会社は今どんな状況なのか」「どの商品がどれくらい儲かっているのか」といった判断につなげる力をつけていきます。勉強をしていると「こんな細かいこと、本当に必要?」と思う場面もありますが、全体としては「会社の数字を読めるようになる」という一つのゴールにつながっています。
このあと、商業簿記と工業簿記どっちから勉強するかを詳しく見ていきますが、根本的には「どちらかを完全に捨てる」のではなく、「どちらを先に・どの深さで進めるか」を決める話です。まずは簿記2級という試験を「2つの科目を組み合わせて70点を狙うゲーム」と捉えておくと、順番に悩み過ぎず、戦略的に勉強を組み立てやすくなるはずです。
ポイント
- 簿記2級は、会社の数字を実務レベルで扱う入口となる試験で、商業簿記と工業簿記の2本柱で構成されます。
- 商業簿記は会社全体の取引と決算書, 工業簿記はモノ作りのコストと工場の動きを扱う、性質の違う科目です。
- 合格を目指すうえでは「どちらか一方」ではなく、2科目のバランスと得点源の作り方を意識して学習順序を決めていくことが大切です。
2. 簿記2級は商業簿記と工業簿記どっちから勉強する?結論と基本方針
簿記2級は商業簿記と工業簿記どっちから勉強しても合格は可能ですが、3級の有無・残り期間・得意分野によっておすすめの順番が変わります。この章ではまず「迷ったときの基本の結論」を示し、そのうえで3つの学習パターンのメリット・デメリットと、自分がどのタイプに当てはまるかを整理します。
「簿記2級は商業簿記と工業簿記どっちからが正解なんだろう」と調べると、商業簿記から派と工業簿記から派、そして「どっちでもOK派」がいて、結局分からなくなりがちですよね。まず押さえておきたいのは、極端に間違った順番というものはないということです。どの順番を選んでも、しっかりと基礎を固めて演習を積めば、合格ラインには十分届きます。
とはいえ、人によって「ラクに進められるルート」はかなり違います。3級を持っているかどうか、試験まであと何か月あるか、計算が好きか・文章読みが得意かといった要素で、おすすめのルートは変わってきます。この章では、「迷ったらこの順番」「こういう人は工業簿記スタートもあり」といった現実的な判断軸をセットでお伝えしていきます。
また、学習順序は一度決めたら二度と変えてはいけないものではありません。最初に決めたルートで進めてみて、「思ったより工業簿記がしんどい」「商業簿記の方が理解に時間がかかる」と感じたら、途中で配分や順番を微調整するのも立派な戦略です。完璧な答え探しをするより、「まずは8割くらい納得できるルートを決めて、走りながら調整する」くらいの気持ちで読んでみてください。
2-1. まず結論:迷ったらこの順番から始めるのがおすすめ
最初に、細かい条件を抜きにした「多くの人にとっての無難な順番」をはっきりさせておきます。簿記3級を持っている人も、これから勉強する人も含めて、迷ったら次の方針をベースに考えてみてください。
基本方針は、次の通りです。
結論:3級経験者 → 商業簿記から/3級なし → 3級レベルの商業簿記+工業簿記を軽く触るのが王道です。特別な事情がなければ、いきなり工業簿記だけに絞るよりも、商業簿記の土台をある程度つくっておく方が安全だと考えておくとよいでしょう。
ここからは、「自分の今の状況にこの結論をどう当てはめるか」を整理するために、簡単なステップで考えてみます。
迷ったときの判断ステップ(4ステップ)
- 自分のスタート地点を確認する
まず、簿記3級に合格しているか・勉強経験があるかをはっきりさせます。まったく初めての場合は、「お金の流れの基本」から押さえる必要があるので、商業簿記の基礎を軽く学ぶ前提で考えましょう。 - 試験までの残り期間をざっくり把握する
次に、試験まであと何か月あるかを数えてみます。6か月以上あるなら、商業簿記をじっくり→工業簿記へ、という流れが取りやすくなります。3か月を切っている場合は、工業簿記を早めに一周して得点源を確保するという発想も入れていきます。 - 自分の得意・不得意を一つだけ決める
「計算は嫌いではない」「文章を読む方が得意」など、自分の強みを1つだけ選ぶと、順番が決めやすくなります。計算パターンが好きなら工業簿記寄り、ストーリーで理解したいなら商業簿記寄り、というイメージで考えてみてください。 - 基本のおすすめ順番に当てはめる
上の3つを踏まえて、- 3級経験あり+期間に余裕 → 商業簿記の復習→2級商業→工業簿記
- 3級なし+期間が短い → 3級レベル商業+工業簿記の基本を並行
のように、自分がどのパターンに近いかを決めていきます。完全にぴったりでなくても、「一番近いパターン」を仮で選ぶだけで、次に進みやすくなります。
この4ステップを踏むだけでも、「簿記2級 商業簿記 工業簿記どっちから」というモヤモヤはかなり整理されます。次の項目で、それぞれの順番のメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。
2-2. 商業→工業・工業→商業・並行学習それぞれのメリットとデメリット
簿記2級の勉強順序は、大きく分けると「商業簿記→工業簿記」「工業簿記→商業簿記」「商業簿記と工業簿記の並行学習」の3パターンになります。それぞれの良いところ・注意点を知っておくと、「自分はどれを選ぶとストレスが少なそうか」をイメージしやすくなります。
ここでは、代表的な観点で3パターンを比較してみます。表の内容をざっくり眺めて、「自分が優先したいポイント」を1つか2つ選んでみてください。
3パターン比較表
| 観点 | 商業簿記 → 工業簿記 | 工業簿記 → 商業簿記 | 商業簿記 × 工業簿記 並行学習 |
|---|---|---|---|
| 最初のとっつきやすさ | 3級経験者にはとっつきやすい | 初学者には用語が難しく感じやすい | 毎回切り替える必要があり慣れるまで大変 |
| 理解のしやすさ | 3級の知識を土台にできて理解はスムーズ | パターンで覚えれば点は取りやすい | 片方が分からなくても、もう片方で理解が進むことも |
| 得点源の作りやすさ | 商業簿記で基礎を固めてから工業で加点 | 工業簿記を先に固めると短期で点になりやすい | 両方の基礎を並行で進めてバランスよく得点 |
| 挫折しやすさ | 商業簿記の範囲が広く中だるみしやすい | 工業簿記の最初でつまずくと心が折れやすい | 計画があいまいだとどちらも中途半端になりがち |
| 向いているタイプ | 3級経験者・文章やストーリーで理解したい人 | 計算が得意・短期で得点源を作りたい人 | 毎日少しずつ勉強できる人・飽きっぽい人 |
この表から分かる通り、どの順番にもメリットとデメリットがあります。大切なのは、「一般的にどれが良いか」よりも、「自分が続けやすいかどうか」です。たとえば、計算があまり得意ではない人が、いきなり工業簿記から入ると、最初の数章で止まってしまう可能性があります。一方、商業簿記のボリュームに圧倒されて途中で手が止まる人もいます。
自分の生活リズムや性格を踏まえて、「どこでテンションが下がりそうか」を想像してみてください。モチベーションが下がりにくい順番=あなたにとっての最適ルートと考えると、選びやすくなります。
2-3. 「どっちからでもOKな人」と「順番を変えた方がいい人」の違い
ここまで読んで、「正直、どのパターンでもやれそうな気もするし、逆に全部不安にも見える…」と感じたかもしれません。そこで、この項目では、「どっちからでもOKな人」と「順番を意識した方がいい人」をケースごとに整理してみます。自分がどれに近いかをイメージしながら読んでみてください。
ケースA:どっちからでもOKな人
- 簿記3級に合格しており、商業簿記の基礎に大きな抜けがない人
- 勉強時間をしっかり確保でき、6か月以上の期間がある人
- 新しい分野に抵抗が少なく、「最初は難しくてもそのうち慣れる」と考えられる人
このタイプは、商業簿記→工業簿記でも、工業簿記→商業簿記でも合格を狙えます。逆に、順番にこだわり過ぎるより、「毎日どれくらい進めるか」「復習のリズム」を重視した方が合格に近づきやすいです。
ケースB:商業簿記→工業簿記の方が安全な人
- 3級を持っているが、内容をかなり忘れている自覚がある人
- 数学や計算があまり得意ではなく、数字を見るだけで少し構えてしまう人
- 決算書や会社のお金の流れに興味があり、ストーリーで理解する方がラクな人
このタイプは、いきなり工業簿記に飛び込むより、商業簿記の復習から入った方が精神的な負担が軽くなりやすいです。知っている内容が最初に出てくると、「あ、ここは分かる」という安心感が得られ、その勢いで新しい論点にも取り組みやすくなります。
ケースC:工業簿記→商業簿記、もしくは並行学習が合っている人
- 数学・理系科目が苦手ではなく、公式やパターンを使うのが好きな人
- 試験までの期間がやや短く、早めに得点源を作って自信をつけたい人
- 同じ分野を長くやると飽きてしまい、気分転換しながら勉強したい人
このタイプは、工業簿記の基本パターンを先に固めることで、「ここは確実に点が取れる」という安心ゾーンを作りやすくなります。また、商業簿記と工業簿記を1日おき、または週ごとに切り替える並行学習も向いています。
ポイント
- 迷ったときの大原則は、3級経験者は商業簿記から、3級なしなら商業簿記の基礎+工業簿記のさわりが安全なスタートです。
- 商業簿記→工業簿記・工業簿記→商業簿記・並行学習には、それぞれメリットとデメリットがあり、どれが絶対正解というわけではありません。
- 「簿記2級 商業簿記 工業簿記どっちから」と悩んだら、3級の有無・残り期間・得意分野からタイプを決めて、自分が続けやすい順番=最適ルートとして選ぶのがおすすめです。
3. 3級取得済みの人向け:商業簿記と工業簿記の最適ルート
簿記3級に合格している人は、すでに商業簿記の土台があるので、それをムダにせず2級レベルに引き上げたうえで工業簿記につなげるのが王道です。この章では「復習→レベルアップ→工業簿記→総合問題」という流れと、3〜6か月で合格を目指す具体的なモデルプランを整理します。
簿記3級に合格している人は、すでに商業簿記の基礎という大きな資産を持っています。ただ、少し時間が空いていたり、仕事や勉強で忙しかったりすると、「正直ほとんど忘れてしまった…」という感覚の人も多いはずです。そんなときにいきなり2級のテキストを開くと、「知らない単語だらけ」「どこから復習すればいいのか分からない」と混乱しがちです。
そこでおすすめなのが、まず3級レベルの商業簿記を短期間でざっと復習→2級商業簿記→工業簿記という順番です。3級の記憶を呼び起こしてからステップアップすることで、「まったくの初学者」ではなく「上級編に進む」感覚で取り組めるので、心理的な負担もかなり軽くなります。
また、3級取得済みの人は、全くの初学者よりも合格までの期間を短くできる可能性が高いです。その一方で、「3級の延長だから」と油断して独学でダラダラ進めてしまい、気づいたら試験直前なのに過去問がほとんど解けていない、というパターンもよくあります。この章では、そうした落とし穴を避けつつ、3〜6か月で合格を狙うための現実的なプランを具体的に見ていきましょう。
3-1. 3級持ちの王道ルート:商業簿記の復習から工業簿記へ
3級合格済みの人にとって、最もオーソドックスで無難なのは、「商業簿記の復習」からスタートするルートです。3級で学んだ仕訳や決算書の考え方を思い出し、そのうえで2級独自の論点に進んでいきます。ここで一度土台を固め直しておくと、あとで工業簿記を勉強するときも、「この金額が最終的に財務諸表のどこに載るのか」がイメージしやすくなります。
とはいえ、3級のテキストを最初から最後までやり直す必要はありません。すべてを完璧に思い出すより、「2級をやるうえで絶対必要な部分」を短時間で復習する方が効率的です。たとえば、商品売買のしくみ、仕訳の書き方、試算表や精算表、簡単な財務諸表の読み方などが代表的な「必須パーツ」です。
そのうえで、2級商業簿記のテキストに進み、現代の試験でよく出るテーマ(連結・税効果・有価証券など)を押さえたあと、工業簿記を一気にひと通り学ぶ流れをイメージしてみてください。最初から最後まで商業簿記だけをやり込んでしまうと、中盤で飽きてしまうことも多いので、ある程度のところで工業簿記に切り替えるポイントをあらかじめ決めておくとスムーズです。
3級持ちの王道5ステップ
3級取得済みの人向けに、王道の流れを5ステップで整理しておきます。
- 3級商業簿記の「必須テーマ」だけざっと復習する
仕訳・試算表・決算整理・財務諸表など、2級で土台になる部分だけを、テキストや問題集でサラッと確認します。ここでは、完璧な理解よりも「ああ、こんなのやったな」と思い出す感覚でOKです。 - 2級商業簿記の新しい論点を一周する
連結会計や税金、固定資産、引当金など、2級から出てくるテーマをひと通りインプットします。この段階では細かい数字にこだわらず、「どんな取引を扱っているのか」「どの財務諸表に影響するのか」を意識しながら進めましょう。 - 工業簿記の基礎を一気に学ぶ
原価計算の考え方、材料費・労務費・製造間接費、総合原価計算など、工業簿記の基本ルールを一周します。ここでも、いきなり応用問題には手を出さず、典型的なパターン問題を通して流れをつかむことを優先します。 - 商業簿記・工業簿記それぞれの典型問題で「解ける問題」を増やす
各科目の基本問題を中心に、「見た瞬間に解き方が浮かぶ問題」をコツコツ積み上げるイメージで練習します。苦手な論点が見えてきたら、そこだけテキストに戻って補強すると効率的です。 - 2科目を混ぜた総合問題・模擬試験で仕上げる
最後の1〜2か月は、実際の試験形式に近い総合問題や模擬試験で、時間配分と解く順番の感覚を身につけます。「商業簿記で確実に取るところ」「工業簿記で稼ぐところ」を意識しながら、自己採点と振り返りをセットにして進めましょう。
この5ステップをベースに、自分の生活リズムに合わせてペース配分を調整していくと、途中で迷いにくくなります。「今、自分はどのステップをやっているのか」を常に意識しておくと、勉強の方向性がブレにくくなるのでおすすめです。
3-2. 商業簿記の理解を工業簿記に橋渡しする勉強のコツ
3級取得済みの人が2級に進むときに意外と大事なのが、商業簿記で学んだ感覚を、うまく工業簿記につなげることです。多くの人は「商業簿記と工業簿記は別物」と感じますが、実は、工業簿記も最終的には商業簿記の決算書に情報を渡しているだけ、と考えるとスッと理解しやすくなります。
たとえば工業簿記で計算した製品原価は、最終的に商業簿記の売上原価や棚卸資産の金額として現れます。「工場の中で起きた話」が、「会社全体の決算書」にどうつながるかを意識すると、2つの科目が頭の中でバラバラになりにくくなります。ここでは、商業簿記と工業簿記を橋渡しするための、具体的な勉強の工夫を見ていきましょう。
まずおすすめなのは、商業簿記の決算書(損益計算書・貸借対照表)を軽く眺めながら、「この数字は工場のどんな活動から生まれているのか」を想像する癖をつけることです。売上原価の内訳に材料費・労務費・製造間接費が入っていることを意識するだけでも、工業簿記で学ぶ内容が「現場の細かい話」ではなく、「決算書の中身を分解したもの」に見えてきます。
次に、工業簿記の例題を解いたあと、その金額が商業簿記のどの勘定科目に移されるのかを一行メモしておくのも効果的です。少し手間はかかりますが、「工場での処理」と「会社全体の仕訳」が頭の中でつながりやすくなり、2つの科目を別々に暗記する必要がなくなっていきます。
3-3. 3〜6か月で簿記2級合格を目指すモデルスケジュール
3級取得済みの人が簿記2級に挑戦する場合、3〜6か月を目安に合格を狙う人が多いです。ここでは、無理のないペースで進めたい人向けに、6か月プランを基本形として、その短縮版として3か月プランもイメージできるようなモデルスケジュールを紹介します。
もちろん、実際に取れる勉強時間や理解のスピードには個人差がありますが、「今、自分がどの月の目標まで進んでいるか」を確認するための物差しとして使ってみてください。もし遅れが出ても、どこを削るか・どこを厚くするかの判断材料になります。
3〜6か月のモデルスケジュール表
まずは6か月を前提にしたざっくりプランです。3か月で取りたい人は、1〜2か月目の内容を前倒しで詰め込むイメージで眺めてみてください。
| 月(目安) | 商業簿記の目標 | 工業簿記の目標 | 演習量の目安 |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | 3級の復習+2級商業簿記の導入部分を一周 | まだ手をつけなくてもOK | テキスト例題+基本問題を1日1〜2テーマ |
| 2か月目 | 2級商業簿記の主要論点を一通りインプット | 工業簿記の超基礎(原価の考え方)だけ触れてみる | 章末問題レベルを中心にアウトプット開始 |
| 3か月目 | 商業簿記の苦手論点を洗い出しながら復習 | 工業簿記の基礎分野を一周 | 商業・工業それぞれの基本問題を交互に解く |
| 4か月目 | 商業簿記の応用問題に挑戦 | 工業簿記の典型問題で「解けるパターン」を増やす | 1日あたり小問5〜10問を目安に計算練習 |
| 5か月目 | 商業簿記の頻出分野を中心に総復習 | 工業簿記の頻出分野も総復習 | 予想問題・模試形式の問題に少しずつ着手 |
| 6か月目 | 本試験形式の問題で時間配分を訓練 | 同じく本試験形式で総仕上げ | 週に1〜2回は通しで模試を解き、振り返りを行う |
この表はあくまで一例ですが、「今の自分は2か月目の終わりのイメージに近いな」といった形で現在位置を確認するツールとして活用してみてください。進みが早ければ4か月目の内容に前倒ししても良いですし、忙しい時期は3か月分の内容を4か月かけて進めるイメージでも構いません。
進み具合を確認するチェックリスト
スケジュールどおりに行っているか不安になったときは、次のチェックリストを目安にしてみてください。
- 商業簿記の仕訳・試算表・決算整理は、3級レベルならスムーズに思い出せるか?
- 2級商業簿記の主要論点を、一度はテキストで通して読んだ・解いたと言えるか?
- 工業簿記の原価計算の基本用語(材料費・労務費など)を、説明を見れば「どんな費用か」イメージできるか?
- 1週間のうち、少なくとも2〜3日はアウトプット(問題を解く時間)を確保できているか?
- 直近1か月で、少なくとも1回は通しの総合問題や模試形式の問題にトライしたか?
半分以上「はい」と言えるなら、ペースとしては十分合格が視野に入っていると考えて大丈夫です。逆に、「いいえ」が多いと感じた場合は、どこでつまずいているかを特定して、そこだけ重点的に時間を割くのがおすすめです。
ポイント
- 簿記3級取得済みなら、3級レベルの商業簿記を短期間で復習→2級商業→工業簿記→総合問題という流れが王道ルートです。
- 商業簿記と工業簿記は別物ではなく、工場で計算した原価が商業簿記の決算書に流れ込むイメージを持つと理解がつながりやすくなります。
- 3〜6か月を目安に、月ごとの目標とチェックリストで進捗を確認しながら進めると、「今どこにいるか」が分かり、挫折しにくい学習プランを組み立てられます。
4. 3級なしでいきなり簿記2級に挑戦する人向けルート
簿記3級を受けていない人でも、商業簿記と工業簿記の順番を工夫すれば簿記2級合格は十分可能です。この章では、3級の内容をどう最短で補うか、商業簿記と工業簿記をどの順番・配分で進めるかを、メリットと注意点・具体的ステップ・残り期間別スケジュールで解説します。
「3級を飛ばして2級から取った方が効率いいのかな?」と考える人はかなり多いです。実際、試験日や仕事の都合で、いきなり簿記2級から挑戦するルートを選ぶ人も少なくありません。ただし、3級をすっ飛ばすと、商業簿記の基礎が抜けたまま難しい論点に突っ込んでしまうリスクがあります。うまく進めれば時短になりますが、やり方を間違えるとかえって遠回りにもなりやすいのが正直なところです。
そこで大事なのが、「3級を受けない=3級レベルの勉強を一切しない」ではなく、3級レベルの商業簿記を短時間で“かいつまんで”押さえることです。そのうえで、工業簿記をどのタイミングで混ぜるかを決めていきます。商業簿記と工業簿記どっちから入るかというより、どの比率で並べるかというイメージに近いかもしれません。
この章では、「3級を飛ばすメリットと落とし穴」「3級レベルを最短で補うステップ」「残り期間ごとの学習順序とスケジュール例」をセットで整理します。読み終わるころには、「自分はこの順番で、このペースなら行けそうだな」と、具体的なアクションまでイメージできる状態を目指していきましょう。
4-1. 3級を飛ばして2級から勉強するメリットと注意点
まずは、3級なしで簿記2級に挑戦することのメリットとリスクを整理しておきます。「あ、自分はここに当てはまりそうだな」と感じたポイントは、あとで学習順序を考えるときに必ず役に立ちます。
メリットとして分かりやすいのは、「受験回数が減る」「モチベーションを高く保ちやすい」という点です。忙しい社会人ほど、「どうせ勉強するなら2級まで一気に取りたい」と考えるのは自然なことです。一方で、3級を飛ばすことで、仕訳や決算のいちばん基礎となる商業簿記の感覚を身につける機会が減るため、途中で「何をしているのか分からない状態」に入りやすくなります。
ここで、やってしまいがちな危険パターンをまとめておきます。これに当てはまりそうなら、学習順序やペース配分を少し慎重に決めた方が安心です。
3級なし2級チャレンジで避けたいNG行動リスト
NG1:3級レベルの基礎を完全に無視して、2級テキストだけを進める
3級を受けないと決めたとしても、仕訳・試算表・簡単な決算整理といった基本が抜けていると、2級の説明がまったく頭に入ってきません。「知らない単語だらけで1ページ進むのに30分かかる…」という状態になりやすく、挫折のもとになります。テキスト1冊をまるごとでなく、基礎論点だけつまみ食いするイメージを持つとよいでしょう。
NG2:商業簿記をすっ飛ばして、工業簿記だけ先にやろうとする
「工業簿記は範囲が狭いから得点源にしやすい」という話だけを聞いて、商業簿記に一切触れずに工業簿記だけやろうとするのは危険です。工業簿記で計算した数字は、最終的に商業簿記の決算書に流れ込むため、商業簿記の勘定科目や流れをまったく知らないと、理解が途中で止まりやすくなります。最低限の商業簿記のイメージづくりは必須と考えておきましょう。
NG3:過去問だけで何とかしようとする「一発逆転」狙い
時間がないと「とりあえず過去問を解きまくれば慣れるはず」と考えがちですが、3級なしでそれをやると、分からない問題だらけで心が折れるパターンが多いです。過去問はあくまで「基礎を入れたあと、形式に慣れるためのツール」です。土台づくりをすっ飛ばしても、効率は上がりません。
これらのNG行動を避けるためには、3級のテストを受けないだけで、3級レベルの内容を短時間でなぞることが大切です。次の項目で、どうやってその基礎部分だけを最短で身につけるかを具体的なステップで見ていきます。
4-2. 3級レベルの商業簿記を最速で補うための勉強法
3級を受けない場合でも、3級相当の商業簿記の理解は“ショートカット版”で身につけておきたいところです。全部をくまなくやる必要はありませんが、「2級の説明を読んで意味が分かるレベル」までは、一度おさらいしておくと後がずっとラクになります。
ここでは、3級レベルの商業簿記を最短ルートで補うための5ステップを紹介します。忙しい社会人でも、まとまった週末を2〜3回確保できれば実行しやすい分量を想定しています。
3級レベルを最速で固める5ステップ
- 3級相当の範囲をざっと確認する
手元のテキストやWebの目次を見ながら、「3級ではどんなテーマが出てくるのか」を一覧で眺めます。ここでは、細かい中身よりも“どんな章があるか”を把握することが目的です。商業簿記の世界観をつかむつもりで、軽い気持ちで見てみましょう。 - 頻出の重要論点だけをピックアップする
仕訳・売上と仕入・現金預金・売掛金/買掛金・試算表・精算表・簡単な決算整理・損益計算書・貸借対照表など、2級で土台になる項目に印をつけるイメージです。使っているテキストに「重要」マークがあれば、それを素直に頼ってしまって構いません。 - 例題ベースで一気にインプットする
重要論点だけに絞って、テキストの例題と解説を中心に読みながら進めます。最初から問題集でガツガツ解くより、「こういう取引が起きたら、こういう仕訳になる」というパターンを、例題を通してつかむことを優先します。分からない問題が出てきても、いったん答えと解説を読みきってしまうくらいの軽さでOKです。 - 仕訳だけに特化した練習を集中的に行う
商業簿記の土台は、やはり仕訳の感覚です。短時間で集中して練習するなら、「仕訳問題だけが並んでいる問題集」や「アプリ」などを使い、1日10〜20問を目安にサクサク解いてみましょう。最初は全問正解を目指す必要はなく、よく出るパターンに慣れることを意識すると気楽に続けやすくなります。 - 2級商業簿記のテキストを開いて“読めるかどうか”を試す
ここまでのステップを終えたら、いよいよ2級商業簿記のテキストを開いて、導入部分を読んでみます。説明文を読んで、「何の話をしているかがぼんやり分かる」状態になっていれば、3級レベルの基礎は合格です。もし「用語が全然分からない」と感じたら、ステップ2〜4のうち不安な箇所だけもう一周してみましょう。
この5ステップを通して、3級の本試験レベルまで仕上げる必要はありません。あくまで、簿記2級のテキストをストレスなく読み進めるための土台づくりだと考えてください。商業簿記の土台ができていれば、そのあと工業簿記を学ぶときも、「この金額は最終的にどこへ行くのか」というイメージがつきやすくなります。
4-3. 3級なしでも間に合う!商業簿記と工業簿記の学習順序とスケジュール例
ここまでで、3級レベルの商業簿記をどう補うかのイメージはつかめてきたと思います。最後に、「試験までの残り期間」別に、商業簿記と工業簿記どっちから・どのくらいの配分で進めるかを整理しておきましょう。
ここでは、試験までの期間をざっくり6か月以上・3〜6か月・3か月未満の3タイプに分けて、それぞれに合う順番とスケジュールの例を紹介します。
残り期間別のおすすめパターン
ケース1:試験まで6か月以上ある人(じっくり型)
- 最初の1〜2か月で、3級レベルの商業簿記+2級商業簿記の導入まで進めます。
- 3か月目以降で工業簿記の基礎を一周し、4〜5か月目で商業簿記と工業簿記の復習+基本問題を並行で実施。
- 最後の1か月は本試験形式の問題で時間配分の練習に集中します。
→ このタイプは、順番としては商業簿記を先行させつつ、途中から工業簿記を混ぜていくスタイルがおすすめです。
ケース2:試験まで3〜6か月の人(標準〜ややタイト型)
- 最初の1か月で、3級レベルの商業簿記のショートカット+2級商業の重要論点に着手します。
- 2か月目からは、商業簿記と工業簿記を週ごとに切り替える並行学習を取り入れます(例:平日は商業、週末は工業など)。
- 残り1〜2か月は、総合問題を解きながら、特に苦手な科目の基礎問題を重点的にやり直します。
→ このタイプは、商業簿記寄りの並行学習が現実的です。工業簿記を後回しにしすぎると、時間切れになりやすいので注意しましょう。
ケース3:試験まで3か月未満の人(短期集中型)
- 最初の2〜3週間で、超圧縮版の3級レベル+2級商業の基礎部分を一気にインプットします。
- その後すぐに、工業簿記の基本パターンを一周し、早い段階で「取れそうな問題」を見つけることを優先します。
- 残りの期間は、得点源にできそうな分野だけを重点的に仕上げるイメージで、全範囲完璧を目指さないことも重要です。
→ このタイプは、順番というよりも、「どの分野で確実に点を取るか」を早めにはっきりさせることがカギになります。商業簿記・工業簿記どっちからというより、「どこを捨てないか」を決めるイメージです。
短期間で2級合格を狙う場合、「全部きれいに理解してから問題を解こう」と考えると時間が足りなくなります。完璧を求めるより、「この分野は6〜7割の理解でOK」「ここは絶対に取る」と割り切る部分を決めることも、3級なしルートでは大切な戦略になります。
ポイント
- 3級を受けずに簿記2級に挑戦する場合でも、3級レベルの商業簿記を完全に飛ばすのはNG。短時間でもいいので、基礎だけは押さえておくことが重要です。
- 3級レベルの商業簿記は、重要論点に絞って例題+仕訳練習を行う5ステップで、最短ルートの土台づくりが可能です。
- 試験までの残り期間に応じて、商業簿記と工業簿記どっちから・どの割合で進めるかを決め、「自分が得点源にできる分野」を早めに見つけることが、3級なしルートで合格に近づくコツです。
5. タイプ別チェックで分かる:簿記2級は商業簿記と工業簿記どっちから?
いくつかの質問に答えるだけで、自分が「商業簿記から」「工業簿記から」「並行学習」のどれに向いているかが分かるようにし、診断結果ごとに明日からの具体的な勉強プランまで落とし込みます。
ここまで読んでも「結局、自分は簿記2級の商業簿記と工業簿記どっちから始めるのが正解なの?」と、まだモヤモヤしているかもしれません。人によって、3級の有無・残り期間・勉強に使える時間・得意不得意がバラバラなので、「これが絶対の正解」と言い切るのは難しいですよね。
そこでこの章では、5つの質問に答えるだけで、自分に合った学習順序の候補が見えてくるチェックリストを用意しました。「診断」といっても、占いのようなものではなく、これまで説明してきた考え方を分かりやすくまとめたものだと思ってください。
チェック結果はあくまで目安ですが、いきなり完璧なルートを探すより、「まずはこの方向に進んでみよう」と決めるきっかけにはなります。もし途中で「なんだか合わないな」と感じたら、次の項目で紹介するタイプ別プランを参考に、柔軟に微調整していきましょう。
5-1. 5つの質問で分かる「あなたのおすすめ順番」チェックリスト
このチェックリストでは、簿記3級の有無・試験までの期間・勉強時間・得意分野・メンタルのタイプの5つの観点から、あなたに合いそうなルートをざっくり判定します。すべて「A or B」で答えられるようにしているので、軽い気持ちでサクッとやってみてください。
深く考え込まず、「今の自分にいちばん近い方」を選んでいくのがコツです。結果は、タイプA(商業簿記から型)・タイプB(工業簿記から型)・タイプC(並行学習型)のいずれかに近づいていきます。
5つの質問チェックリスト
次の5問について、AかBのどちらかを選んでください。紙やメモに「①A」「②B」のようにメモしておくと分かりやすいです。
- 簿記の経験について
- A:簿記3級に合格している、または3級レベルを一通り勉強したことがある
- B:簿記はほぼ初めてで、3級レベルの勉強もこれから
- 試験までの残り期間について
- A:試験まで3か月以上はありそう
- B:試験まで3か月未満、または具体的な日程は決めていないが早めに取りたい
- 得意・不得意の感覚について
- A:文章を読んだりストーリーで理解する方が得意、計算はあまり好きではない
- B:計算やパズル的な問題に抵抗はなく、パターンを覚えるのは得意な方だ
- 勉強に使える時間のイメージ
- A:平日は1日30〜60分、休日に少し多めに取れるくらい(週全体でそこまで多くない)
- B:平日もある程度時間を作れそうで、週あたり8〜10時間くらいは頑張れそう
- メンタル・性格タイプ
- A:最初は「知っていることが出てくる安心感」がほしい。いきなり未知の分野は怖い
- B:新しいことでも、「どうせそのうち慣れる」と思える。多少難しくても前に進めるタイプ
それぞれAとBがいくつあったか、数えてみてください。
- Aが3個以上 → タイプA:商業簿記からじっくり型に近い
- Bが3個以上 → タイプB:工業簿記から先に得点源型に近い
- AとBがきれいに分かれた/どちらも2〜3個 → タイプC:商業×工業の並行学習型に近い
もちろん、この結果が絶対ではありませんが、少なくとも「自分は全員一律の正解」ではなく、このタイプに寄っているんだなという目安にはなります。次の項目で、それぞれのタイプごとに「簿記2級 商業簿記 工業簿記どっちから進めるか」を、もう少し具体的な行動プランに落としていきます。
5-2. 診断結果の読み取り方と、明日からの勉強プラン
チェックリストの結果が出たら、ここではタイプ別に「どっちから・どう進めるか」を具体的に見ていきます。大事なのは、「タイプがハッキリ分かれたから、そのルートに縛られなきゃいけない」という発想ではありません。あくまでスタートの指針として使い、必要に応じて途中で微調整していけばOKです。
自分がいちばん近いと感じるタイプのところを中心に読んで、「この進め方ならできそうだな」と思う部分を取り入れてみてください。
タイプA:商業簿記からじっくり型(Aが多かった人)
このタイプは、まず商業簿記の世界に慣れてから工業簿記に進む方がストレスが少ない人です。特に簿記3級経験者や、文章を読んで理解するのが得意な人は、このパターンがしっくり来やすいでしょう。
- おすすめ順番
→ 商業簿記(3級レベル+2級商業) → 工業簿記 → 総合問題 - 最初の1〜2週間でやること
- 3級レベルの商業簿記を、重要論点だけ復習
- その後、2級商業簿記のテキストをざっと1周して、全体像をつかむ
- 工業簿記に入るタイミング
- 商業簿記で「まったく意味不明な論点」が減ってきたと感じたら、工業簿記の基礎に着手
- 週1〜2日は工業簿記の日にして、少しずつ比率を増やしていくイメージです
「どっちから勉強するか」で悩み続けるより、まず商業簿記から始めてしまう方が、心のハードルが低いタイプとも言えます。3級経験がある人は、このルートがもっとも王道です。
タイプB:工業簿記から先に得点源型(Bが多かった人)
このタイプは、計算やパターンで解く問題に抵抗が少なく、早めに得点源を作ることで安心したい人です。簿記2級において工業簿記は、範囲が比較的コンパクトで、典型パターンを押さえれば点につながりやすい分野でもあります。
- おすすめ順番
→ 3級レベルの商業簿記をショートカットで押さえる → 工業簿記の基礎 → 商業簿記の本格インプット - 最初の1〜2週間でやること
- 仕訳・試算表など、商業簿記の超基礎だけをざっと確認
- その後すぐに、工業簿記の原価計算や材料費・労務費などの基本パターンを一周
- 商業簿記に戻るタイミング
- 工業簿記の基礎問題で「この形なら解ける」という問題が少し増えてきたら、商業簿記の2級論点を本格的に勉強開始
- 週の前半は商業簿記、後半は工業簿記など、メリハリをつけて並行していくと効果的です
「まず工業簿記を固めて、そこで自信をつけてから商業簿記に戻る」というイメージなので、短期でモチベーションを上げたい人にも向いているルートです。ただし、商業簿記を完全に後回しにしすぎると時間切れのリスクがあるので、3〜4週間以内には商業簿記にしっかり時間を割き始めるようにしましょう。
タイプC:商業×工業の並行学習型(A・Bが半々くらいの人)
AとBがいい感じに分かれた人は、「どっちの良さも活かしつつ、ほどよく切り替えながら進める」のが向いているタイプです。同じ分野をずっとやっていると飽きてしまう人や、毎日少しずつ時間が取れる人にも、この並行学習スタイルが合いやすいです。
- おすすめ順番
→ 商業簿記の基礎+工業簿記の基礎を早めに一周 → その後は並行で深める - 勉強のリズム例
- 平日:月・水・金は商業簿記/火・木は工業簿記
- 休日:午前は商業簿記、午後は工業簿記で総復習と演習
- 並行学習で意識したいこと
- どちらの科目も、「苦手論点を1つずつ潰していく」意識を持つ
- 週に1回は、「今週は商業簿記で何を進めたか・工業簿記で何を進めたか」をメモで振り返る
このタイプは、片方に偏りすぎてもう片方が真っ白になってしまうリスクを減らせるのが大きな強みです。その代わり、「今、自分がどこまで来ているか」が分かりにくくなりがちなので、月ごと・週ごとの目標をざっくり決めておくと安心です。
ポイント
- 5つの質問に答えるだけで、自分が商業簿記から・工業簿記から・並行学習のどれに近いかをざっくり把握できます。
- タイプA・B・Cのどれになっても、そのタイプに合わせた「簿記2級 商業簿記 工業簿記どっちから」ルートを選べばOKで、絶対に間違いという答えはありません。
- 診断結果はあくまでスタートの目安として使い、実際に勉強を進めながら「ちょっと違うかも」と感じたら、順番や配分を柔軟に調整することが、挫折しにくい学習プランづくりのコツです。
6. Q&A:簿記2級の商業簿記・工業簿記どっちから問題でよくある質問
6-1. 商業簿記と工業簿記、結局どっちが難しい?
「どっちが難しいか」は人によってかなり違いますが、ざっくり言うと商業簿記は範囲が広くて覚えることが多い、工業簿記は範囲が狭いけれど計算パターンが独特という違いがあります。丸暗記が苦手な人は商業簿記を重く感じやすいかもしれません。
一方で、公式やパターンに慣れるのが得意な人にとっては工業簿記の方が点を取りやすい場合もあります。どちらも「超難関」というより、自分の得意・不得意との相性で難しさの感じ方が変わる科目だと考えてみてください。迷ったら、まずは両方の基本問題を少し触ってみて感覚を比べてみるのがおすすめです。
6-2. 試験まで1〜2か月しかないときはどっちから優先すべき?
試験まで1〜2か月しかない場合は、完璧主義を封印することが大前提です。簿記2級の商業簿記と工業簿記どっちから、というよりも、「どの分野なら短期間で得点源にしやすいか」を先に決めるイメージで考えましょう。
多くの人にとっては、まず工業簿記の基本パターンを一周して「取れる問題」を作る→そのうえで商業簿記の頻出テーマだけを優先して押さえる流れが現実的です。ただし、3級レベルの仕訳があやしい場合は、最初の数日だけ商業簿記の超基礎を確認してから工業簿記に入ると、理解がスムーズになりやすいです。
6-3. 数学が苦手でも工業簿記から始めて大丈夫?
数学が苦手だと「工業簿記はムリかも…」と感じる人が多いですが、実際には高校数学のような難しい計算はほとんど出てきません。出てくるのは足し算・引き算・かけ算・わり算が中心で、必要なのは複雑な公式よりも丁寧なメモと計算ミスを減らす工夫です。
それでも不安なら、商業簿記で数字に慣れてから工業簿記に入るルートを選んでOKです。逆に、「計算そのものは嫌いじゃないけど、文章が多いと読むのがつらい」というタイプなら、工業簿記を先に一周して自信をつけるのも一つの手です。大切なのは、「数学が苦手だから工業簿記は絶対ムリ」と決めつけず、自分にとって少しだけハードルが低い方から慣れていくことです。
6-4. 独学で商業簿記と工業簿記を両方こなすコツは?
独学で進めるときの最大のコツは、「インプットだけで終わらない」「2科目のバランスを崩しすぎない」この2つです。テキストの読み込みに時間をかけすぎてしまうと、「分かったつもりで全然解けない」状態に陥りがちなので、早めに基本問題へ手を動かす習慣をつけましょう。
また、商業簿記に偏りすぎると工業簿記が真っ白のまま残りやすく、逆も同じです。おすすめは、週単位で「商業簿記の日」「工業簿記の日」をざっくり決めておくこと。さらに、週末に1時間だけでも総復習の時間を取ると、「何をやったか忘れてしまう問題」をかなり減らせます。独学だからこそ、「勉強のリズム」を先に決めてしまうことが、継続と合格の近道になります。
6-5. 一度不合格になった場合、次は順番を変えた方がいい?
一度簿記2級に落ちてしまった場合、まず見直したいのは「どの科目・どの分野で点が取れていなかったか」です。商業簿記で大きく落としていたのか、工業簿記がほぼ空白だったのか、模試や過去問の結果をできるだけ具体的に振り返ってみましょう。
もし前回の勉強で商業簿記ばかりに時間をかけていたなら、次は工業簿記から先に固め直すという方法があります。逆に、工業簿記ばかりやって商業簿記が手薄だった場合は、商業簿記の頻出分野から優先的に補強するのが効果的です。順番を変えるかどうかは、「前回どこで点を落としたか」「どこに時間をかけすぎたか」を基準に決めると、同じ失敗をくり返しにくくなります。
ポイント
- 「どっちが難しいか」より、自分の得意・不得意と残り期間に合うかどうかで順番を選ぶのが現実的です。
- 短期決戦や再挑戦では、簿記2級の商業簿記と工業簿記どっちからより「どこで確実に点を取るか」を早めに決めることが大切です。
- 独学でも、一度不合格になった後でも、勉強のリズムと2科目のバランスを意識して順番を調整すれば、次の合格にしっかりつなげていけます。
7. まとめ
簿記2級の商業簿記と工業簿記どっちから勉強するかは、「3級の有無・残り期間・得意不得意」で決めるのが現実的です。この記事で見てきた考え方とタイプ別ルートを使えば、自分に合った順番と勉強プランを自信をもって選べるようになります。
ここまで読んで、「簿記2級は商業簿記と工業簿記どっちから?」というモヤモヤはだいぶ言語化できたのではないでしょうか。大事なのは、みんなに共通する唯一の正解ルートは存在しないという前提を受け入れたうえで、自分の状況に合った「納得できるルート」を選ぶことです。
商業簿記と工業簿記は、どちらかを完璧にしてからもう片方に進むというより、2つを組み合わせて70点以上を狙う試験です。その意味では、「どっちから勉強するか」という問いは、どこを得点源にして、どこをほどほどに押さえるかを決める作業とも言えます。
このまとめでは、もう一度押さえておきたい前提と、今後も意識したいポイント、そして今日からすぐに実行できるアクションを整理します。「読んで終わり」ではなく、何か一つでも行動に移してみることを意識して読んでみてください。
7-1. 全体の振り返り・押さえておきたい前提
まず一番大事な前提は、簿記2級は商業簿記と工業簿記の“2本柱”で合格を目指す試験だということです。商業簿記は会社全体の取引と決算書、工業簿記はモノ作りの原価や工場の動きを扱い、最終的にはどちらも同じ決算書の中につながっていきます。
次に、「どっちから勉強するか」を考えるとき、基準になるのはこの3つでした。
- 簿記3級の有無(または3級レベルの経験)
- 試験までの残り期間(6か月以上/3〜6か月/3か月未満)
- 得意不得意(文章型か計算型か、メンタルのタイプ)
3級取得済みなら、商業簿記の復習→2級商業→工業簿記→総合問題という流れが王道です。3級なしの場合も、テストを受けないだけで、3級レベルの商業簿記をショートカットで押さえることが土台になります。そのうえで、残り期間や性格に応じて、商業簿記先行・工業簿記先行・並行学習のどれを選ぶかを決めていきます。
そして、タイプチェックの結果から、
- タイプA:商業簿記からじっくり型
- タイプB:工業簿記から先に得点源型
- タイプC:商業×工業の並行学習型
の3パターンに分けて、自分に合うスタイルを見つけられるようにしました。重要なのは、一度決めたルートに縛られすぎず、「ちょっと違うな」と感じたら微調整していいという感覚です。
7-2. 今後も意識したいポイント
今後、勉強を続けていくうえで意識しておきたいのは、順番よりも「バランス」と「リズム」です。どれだけ良い順番を選んでも、片方の科目に偏りすぎてしまうと、試験直前になって「工業簿記がほぼ手つかず」「商業簿記の応用が全然分からない」という状態になりがちです。
まず意識したいのは、週単位で2科目のバランスをざっくり決めておくことです。たとえば、商業簿記からスタートする人でも、「週に1日は工業簿記の日を作る」と決めておくだけで、完全に真っ白な分野を減らせます。逆に工業簿記寄りの人も、「週末は商業簿記の復習をする」と決めておくと、試験直前の焦りをかなり減らせます。
次に、インプットとアウトプットのバランスも意識しましょう。テキストを読む時間が長くなりすぎると、「分かったつもり」で問題が解けない状態になりやすいです。新しい論点を学んだら、できるだけ早く基本問題を解いてみて、「手を動かして覚える」リズムをつくることが、合格への近道になります。
最後に大切なのは、定期的に「今の順番で良いか」を軽く見直す習慣です。1〜2か月ごとに、「商業簿記と工業簿記のどちらが伸びているか」「どこでつまずいているか」を振り返り、必要なら勉強時間の配分や順番を少しだけ修正していきましょう。大きくルートを変える必要はなく、1〜2割の微調整を続けるイメージで十分です。
7-3. 今すぐできるおすすめアクション!
ここまで読んで、「なるほど」と思っても、行動に移さなければ何も変わりません。とはいえ、いきなり完璧なスケジュール表を作る必要はありません。まずは今日・明日できる小さな一歩から始めてみましょう。
以下のアクションのうち、「これならできそう」と思うものを2〜3個だけ選んで実行してみてください。
- 自分の現状を書き出す
紙やメモアプリに、「3級の有無」「試験までの目安」「週に取れそうな勉強時間」を書き出して、スタート地点をはっきりさせましょう。 - タイプチェックをやり直してみる
5つの質問にもう一度答えて、自分がタイプA・B・Cのどれに近いかを改めて確認します。前より気持ちが変わっていないかもチェックしてみてください。 - この1週間の勉強テーマを決める
「今週は商業簿記の〇〇章まで」「工業簿記の基本問題を10問」など、1週間分だけの小さな目標を決めてみましょう。 - 勉強する曜日と時間帯をざっくり固定する
「平日は毎日20分だけ」「土曜の午前中は簿記の日」など、習慣化しやすい枠を先に決めてしまうと、机に向かうまでがグッとラクになります。 - 商業簿記と工業簿記の“触り”を両方やってみる
まだどっちから始めるか迷う場合は、商業簿記と工業簿記の基本問題を1〜2問ずつ解いてみて、「どちらがとっつきやすいか」を体感で確かめてみてください。 - 1か月後の「振り返り日」をカレンダーに入れる
1か月後の日付に、「簿記2級の進捗チェック」と予定を入れておきましょう。その日になったら、「順番やペースを少し変えた方がいいか」を見直すきっかけになります。 - 「やらないこと」も一つ決めておく
たとえば、「平日の夜はSNSを30分減らして簿記の時間にする」のように、何を削って勉強時間をつくるかを明確にすると、時間確保のストレスが減ります。
ポイント
- 簿記2級の商業簿記と工業簿記どっちから勉強するかは、3級の有無・残り期間・得意不得意から自分のタイプを知ることが出発点です。
- 完璧なルートを一発で当てようとするより、自分にとって「続けやすい順番」を選び、少しずつ微調整していく方が合格に近づきます。
- 今日できる小さなアクションを2〜3個だけでも実行すれば、「なんとなく不安で動けない状態」から一歩抜け出し、簿記2級合格に向けた現実的な一歩を踏み出せます。
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