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暗算できないのはおかしい?原因と今日からできる簡単な練習方法

暗算できないだけで異常とは限りません。原因を分けると、練習法も対策も選びやすくなります。

暗算できないと、ちょっとした場面で焦ります。レジで小銭を出すとき、割り勘をするとき、仕事で数字を確認するとき。周りがすぐ答えていると、「自分だけ遅いのでは」「大人なのに恥ずかしい」と感じることもあります。

ただ、暗算が苦手だからといって、すぐに「おかしい」「頭が悪い」と決める必要はありません。紙に書けば計算できる人、時間をかければ分かる人、人前だと急に数字が飛んでしまう人など、つまずき方はかなり違います。

暗算は、計算力だけでなく、数字を頭に残す力、10のまとまりを作る感覚、繰り上がり・繰り下がりの処理、焦りへの弱さも関係します。原因が違えば、合う練習も違います。

最初から二桁暗算を何度も解くより、まずは「どこで止まるのか」を見つける方が近道です。10のまとまりを作る、数を分ける、メモや電卓を使いながら確認する。そうした小さな工夫でも、日常の困りごとは減らせます。

一方で、子どもの頃からずっと数や計算で強く困っている、学校や仕事に支障が出ている、時間・お金・量の感覚にも苦手さがある場合は、算数障害や限局性学習症の可能性も視野に入ります。自己判断で決めつけず、必要に応じて相談先を考えることも選択肢です。

この記事はこのような人におすすめ!

  • 暗算できない自分はおかしいのか、まず不安を整理したい人
  • 紙に書けば分かるのに、頭の中だけだと数字が消えてしまう人
  • レジ・割り勘・仕事の数字確認で焦りやすい大人の人
  • 子どもが暗算を苦手としていて、叱らずに支える方法を知りたい人
  • 暗算の練習を始めたいけれど、何からやればいいか分からない人

目次 CONTENTS 

1. 暗算できないのはおかしいことではない

暗算できないだけで、おかしい・頭が悪いとは判断できない。まずは苦手の中身を分けて見ることが大事。

暗算ができないと、ふとした場面で自信をなくしやすくなります。レジで小銭を出す、割り勘の金額を考える、仕事中に数字を確認する。周りがすぐ答えを出しているように見えるほど、「自分だけできない」と感じやすくなります。

でも、暗算が苦手なことと、理解力が低いことは同じではありません。計算の意味は分かるのに、頭の中だけで数字を動かすと混乱する人もいます。紙に書けばできるなら、なおさら「分かっていない」と決めつける必要はありません。

最初に見るべきなのは、暗算ができるかどうかではなく、どの場面で止まるのかです。数字を覚えておけないのか、繰り上がりで迷うのか、人前で焦るのか。原因が違えば、合う練習方法も変わります。

1-1. 暗算が苦手でも、理解力が低いとは限らない

暗算には、いくつかの作業が同時に入っています。数字を一時的に頭に置く、計算の順番を保つ、途中の答えを忘れない、必要なら数を分ける。このどこかで負荷が高くなると、計算の意味が分かっていても答えまでたどり着きにくくなります。

たとえば「47+18」を暗算するとします。47に10を足して57、そこに8を足して65。この流れは、紙に書けば見えます。でも頭の中だけでやると、47、57、8、65という数字を順番に保たなければなりません。

ここで途中の数字が消える人は、計算そのものよりも、数字を頭の中に置き続ける作業でつまずいている可能性があります。これは「頭が悪い」という話ではなく、暗算という形式が合いにくいだけの場合があります。

また、暗算は速さを求められやすい作業です。人前で「早く答えなきゃ」と思うと、普段ならできる計算でも止まることがあります。焦りが入ると、数字を見失いやすくなります。

暗算できない=おかしい、ではない理由

状況 起きていること まず見るポイント
紙に書けばできる 計算の意味は分かっている可能性が高い 頭の中で数字を保つ負荷
時間をかければできる 手順は分かるが、処理に時間がかかる 急がされる場面への弱さ
繰り上がりで止まる 数を分ける操作で混乱している 10のまとまりの理解
人前だと急にできない 緊張で数字が飛びやすい 計算力よりも焦りの影響
毎回まったく分からない 数の感覚や計算手順で困っている可能性 暗算以外の計算も確認

この表で見たいのは、「できる/できない」の二択ではありません。どこまではできて、どこから崩れるのかです。

紙に書けばできる人と、紙に書いても数の意味が分からない人では、必要な対策が違います。前者はメモや分解の練習が合いやすく、後者は数の量感や基礎計算から見直した方が楽になります。

1-2. 「紙に書けばできる」のに暗算だけ苦手な人もいる

「紙に書けばできるのに、暗算だとできない」という悩みは珍しくありません。紙に書くと、数字が目の前に残ります。途中式も見えます。間違えても戻れます。

一方、暗算では数字が目に見えません。途中の答えも、自分の頭の中だけに置いておく必要があります。少し焦ったり、別の数字が入ってきたりすると、さっきまで覚えていた数字が抜けることがあります。

このタイプの人は、いきなり暗算だけで頑張るより、紙に書く力を土台にして暗算へ近づける方が合いやすいです。たとえば、最初は式を全部書く。次に途中式だけ書く。慣れたら、頭の中でできる部分だけ暗算にする。こうすると負荷を少しずつ下げられます。

暗算が苦手な人ほど、「全部頭の中でやらなければ」と考えがちです。でも、日常生活で本当に必要なのは、暗算の速さよりも、間違えずに確認できることです。

レジや仕事の数字確認では、暗算で即答するより、メモや電卓で確認した方が安全な場面もあります。暗算を練習することと、道具を使うことは対立しません。

暗算にこだわりすぎない使い分け

場面 暗算にこだわる必要 おすすめの対応
家で練習するとき ある 簡単な数から少しずつ試す
レジで支払うとき 低い 小銭計算を減らす支払い方にする
割り勘をするとき 低い 電卓アプリで確認する
仕事で金額を扱うとき 低い 必ずメモ・電卓・再確認を使う
学校の計算練習 場合による 先生に練習範囲や方法を相談する

暗算は便利な手段ですが、どの場面でも最優先にする必要はありません。練習する場面と、道具で補う場面を分けると、日常の不安がかなり軽くなります。

1-3. まず避けたいのは、根性論で二桁暗算を増やすこと

暗算が苦手だと、「たくさん問題を解けば慣れる」と考えたくなります。もちろん練習量が助けになる人もいます。ただ、原因を見ないまま二桁暗算を増やすと、できない感覚だけが強く残ることがあります。

特に、繰り上がりや繰り下がりで止まる人が、いきなり難しい計算を増やすと混乱しやすくなります。間違える回数が増えるほど、「やっぱり自分は計算が苦手だ」と感じて、練習そのものが嫌になってしまいます。

最初にやるなら、二桁の速さを上げるより、10のまとまりを作る練習が向いています。たとえば「8+5」は、8に2を足して10、残り3で13と考えます。この形が見えると、繰り上がりの計算が少し扱いやすくなります。

引き算も同じです。「13−8」を丸暗記で押し切るのではなく、13から3を引いて10、さらに5を引いて5と分けます。頭の中で全部まとめて処理しようとせず、小さく分けて考えるのが入口です。

暗算の練習は、速く答える訓練から始めなくて大丈夫です。まずは、数字を分ける、10に寄せる、途中でメモする。この3つを使って、計算中に迷子にならない状態を作ります。

ポイント

  • 暗算できないだけで、おかしい・頭が悪いとは判断しない
  • 紙に書けばできるなら、数字を頭に置く負荷で止まっている可能性がある
  • 最初は速さより、10のまとまりと数の分解から始める

2. 暗算できない原因は大きく4つに分けられる

暗算できない原因は、数字を覚える力・数の感覚・計算手順・緊張のどこで止まるかによって変わる。

暗算ができない原因は、ひとつではありません。単に練習量が足りない場合もありますが、それだけで片づけると、自分に合わない練習を続けてしまうことがあります。

見るべきなのは、「何の計算ができないか」よりも、どの瞬間に分からなくなるかです。数字を聞いた時点で消えるのか、途中の答えを忘れるのか、繰り上がりで混乱するのか、人前で焦るのか。それによって、必要な対策は変わります。

まずは、暗算できない原因を4つに分けて整理します。

暗算できない原因の4タイプ

タイプ よくある状態 合いやすい対策
数字を頭に残せない 途中の数字を忘れる、別の数字と混ざる メモ、途中式、短い計算から始める
数のまとまりが見えにくい 10にする、分ける、合わせる感覚が弱い 10のまとまり、補数、数の分解
手順で混乱する 繰り上がり・繰り下がりで止まる 手順を固定し、声に出して確認する
焦ると止まる 人前・時間制限・レジで急に分からない 暗算しない選択肢、確認フレーズ

この表は、診断のためのものではありません。自分のつまずき方を見つけて、練習や対策を選びやすくするための整理です。

同じ「暗算できない」でも、必要なのは暗算ドリルとは限りません。メモを使う方がよい人もいれば、10のまとまりを作る練習から始めた方がよい人もいます。

2-1. 数字を頭に残しておくのが苦手なタイプ

このタイプは、計算方法が分からないというより、途中の数字を保つところで止まりやすいです。たとえば「36+27」を考えているうちに、36だったのか、26だったのか、途中で分からなくなります。

紙に書けばできるのに暗算だと崩れる人は、このタイプに近い場合があります。紙に書くと数字が目の前に残りますが、暗算では数字を頭の中だけで持っておく必要があります。

この場合、最初から完全な暗算にこだわらない方が楽です。まずは式を書き、次に途中の答えだけメモし、最後に一部だけ暗算する。いきなり全部を頭の中で処理しないことが、練習の入口になります。

たとえば「36+27」なら、まず「36+20=56」までを紙に書いても構いません。そのあと「56+7=63」だけ暗算する。こうすると、頭に置く数字の数が減ります。

このタイプの練習で意識したいのは、覚える数字を減らすことです。暗算が得意な人のまねをして、最初からすべてを頭の中で動かす必要はありません。

2-2. 10のまとまりや数の分解が苦手なタイプ

暗算では、「10にする」「分ける」「近い数に寄せる」という考え方をよく使います。ここが苦手だと、一桁の計算でも毎回力技になりやすくなります。

たとえば「8+7」を、8、9、10、11、12、13、14、15と数えていると、時間がかかります。途中で数え間違えることもあります。

一方で、8に2を足して10、残り5を足して15と考えられると、計算が少し楽になります。このとき使っているのが、10のまとまりを作る考え方です。

引き算でも同じです。「14−6」を考えるとき、14から4を引いて10、さらに2を引いて8と分けられます。数字を小さな部品に分けると、頭の中で扱いやすくなります。

このタイプの人は、二桁暗算に進む前に、一桁の足し算・引き算で「10に寄せる」練習をした方が安定します。速さより、数をどう分けるかを見える形にすることが先です。

10のまとまりを作る練習例

計算 考え方 答え
8+5 8に2を足して10、残り3を足す 13
7+6 7に3を足して10、残り3を足す 13
14−8 14から4を引いて10、さらに4を引く 6
15−7 15から5を引いて10、さらに2を引く 8

この練習は、暗算を速くするためだけではありません。計算中に「どこをどう動かしているか」を見失わないための練習です。

慣れないうちは、指やブロック、線を書いたメモを使って大丈夫です。頭の中だけでやろうとして混乱するなら、見える形に戻した方が進みやすくなります。

2-3. 繰り上がり・繰り下がりで混乱するタイプ

一桁同士の簡単な計算はできても、繰り上がりや繰り下がりが入ると止まる人もいます。これは、計算の途中で処理が一段増えるためです。

たとえば「58+7」は、58に2を足して60、残り5を足して65と考えます。この「2を使って60にする」「残りが5になる」という分け方が見えないと、急に難しくなります。

引き算では、さらに混乱しやすくなります。「52−8」なら、52から2を引いて50、さらに6を引いて44です。途中で「あといくつ引くのか」が分からなくなると、答えがずれます。

このタイプは、毎回違うやり方で解くと迷いやすくなります。まずは、自分の中で手順を固定するのが効果的です。

たとえば足し算なら、「近い10のまとまりまで足す」「残りを足す」の順番にします。引き算なら、「近い10のまとまりまで引く」「残りを引く」の順番にします。

手順を固定する例

計算 手順1 手順2 答え
58+7 58+2=60 60+5=65 65
47+6 47+3=50 50+3=53 53
52−8 52−2=50 50−6=44 44
31−5 31−1=30 30−4=26 26

最初は、声に出して確認しても構いません。「まず2を足して60、残り5を足す」のように言葉にすると、途中で迷いにくくなります。

暗算が苦手な人ほど、答えだけを急いで出そうとして混乱しがちです。答えより先に、手順を安定させる方が結果的に間違いが減ります。

2-4. 人前や時間制限で焦って止まるタイプ

家ではできるのに、人前だと急に暗算できなくなる人もいます。レジで後ろに人が並んでいるとき、友人に割り勘を聞かれたとき、会議中に数字を振られたときなどです。

この場合、計算力だけの問題ではありません。「早く答えなければ」という圧がかかることで、普段なら保てる数字まで飛びやすくなります。

焦りが強い場面では、暗算の練習だけで乗り切ろうとしない方が安全です。日常生活では、暗算しない準備を持っておくとかなり楽になります。

たとえば、割り勘では最初から電卓アプリを開く。仕事では「確認してからお伝えします」と言う。レジでは小銭を細かく出そうとせず、現金なら大きめに出すか、キャッシュレス決済を使う。

これは逃げではありません。数字を扱う場面では、速さより正確さが必要なことも多いです。暗算で無理に即答して間違えるより、確認して答える方が信頼される場面もあります。

焦る場面で使える一言

場面 使える一言
割り勘を聞かれたとき 「計算ミスしやすいから、電卓で確認するね」
仕事で数字を聞かれたとき 「確認してから正確な数字を伝えます」
レジで焦ったとき 「すみません、少し確認します」
家族に急かされたとき 「暗算だと間違えやすいから、書いて考えるね」

人前で止まりやすい人は、練習の前に「止まったときの言葉」を用意しておくと安心です。言い方が決まっているだけで、焦りが少し減ります。

暗算の苦手さを完全になくすことだけが対策ではありません。困る場面を減らしながら、落ち着いて練習できる環境を作ることも、立派な対策です。

ポイント

  • 暗算できない原因は、数字の記憶・数感覚・手順・緊張に分けて考える
  • 二桁暗算の前に、10のまとまりと数の分解を練習する
  • 人前で焦る人は、暗算しない準備と言い方を持っておく

3. 暗算できないのは算数障害?苦手との違い

暗算が苦手なだけで算数障害とは判断できない。数全般で困り、生活や学習に支障が続く場合は相談を考える。

「暗算できないのは、算数障害なのでは」と不安になる人もいます。特に、子どもの頃から計算が苦手だった人や、紙に書いても数字の意味がつかみにくい人は、ただの苦手で済ませていいのか迷いやすいです。

まず押さえたいのは、暗算が苦手なだけで算数障害とは決められないということです。暗算には、数字を頭に残す力、焦りへの耐性、計算手順への慣れも関わります。そこだけでつまずく人もいます。

一方で、暗算だけでなく、数の大小、お金、時間、量、文章題、筆算でも強く困る場合は、学習上の特性として整理した方がよいことがあります。本人の努力不足と決める前に、困っている範囲を分けて見ます。

3-1. 算数障害・限局性学習症で見られる困りごと

算数障害は、現在では限局性学習症の一部として説明されることがあります。発達障害情報のポータルサイトでは、算数障害に関わる領域として、数処理、数概念、計算、数的推論が挙げられています(発達障害情報のポータルサイト, 2024)。

つまり、算数障害で困りやすいのは、暗算の速さだけではありません。数字を読む、数の大きさを比べる、量をイメージする、計算手順を使う、文章題で式を立てる、といった広い範囲に苦手さが出ることがあります。

文部科学省の公式情報でも、学習障害は、全般的な知的発達に遅れがない一方で、読む・書く・計算する・推論するなど、特定の能力に著しい困難を示す状態として説明されています。

ここで大事なのは、知的な力全体の問題ではなく、特定の学習領域で困りやすい場合があるという点です。計算だけが極端に苦手でも、会話、理解、記憶、発想、仕事の工夫など、別の力は問題なく使えている人もいます。

ただし、この記事だけで「算数障害かどうか」は判断できません。American Psychiatric Associationの説明でも、特定の学習障害の判断には、学習上の困難や生活への影響を含めた包括的な評価が必要とされています。

算数障害の可能性を考える前に見ること

見るポイント ただの暗算苦手に近い例 相談を考えたい例
暗算 頭の中だけだと遅い 極端に混乱し、練習しても強い困りが続く
筆算 書けばだいたい解ける 書いても桁や手順が崩れやすい
数の感覚 計算は遅いが大小は分かる どちらが多いか、どのくらい違うかもつかみにくい
お金・時間 急ぐと焦る 日常的に支払い、時刻、所要時間で困る
学校・仕事 苦手だが工夫で対応できる 成績、業務、生活に継続的な支障がある

この表は、病名を判断するためのものではありません。見るべきなのは、暗算だけの困りごとなのか、数に関わる場面全体で困っているのかです。

暗算だけが遅いなら、練習方法や道具の使い方でかなり楽になることがあります。数全般で困っているなら、本人の努力だけに任せず、学校や専門機関に相談する方が負担を減らしやすくなります。

3-2. 苦手の範囲が暗算だけか、数全般かを確認する

算数障害かどうかが気になるときは、まず「暗算ができない」という言葉を細かく分けます。暗算だけ苦手なのか、計算全体が苦手なのか、数の意味そのものがつかみにくいのかで、必要な対応が変わります。

たとえば、紙に書けば正しく計算できる人は、数の理解そのものよりも、頭の中で数字を保持する負荷に弱い可能性があります。この場合は、途中式を書く、メモを使う、暗算する部分を短くする、といった工夫が合いやすいです。

一方で、紙に書いても桁がずれる、繰り上がりの意味が分からない、数の大小が感覚的につかみにくい場合は、暗算練習だけでは遠回りになることがあります。まずは、数のまとまりや量のイメージに戻った方がよい場合があります。

大人の場合も同じです。仕事で数字を扱うときに、電卓を使えば正確に確認できるなら、暗算力よりも確認手順を整える方が現実的です。逆に、電卓に入れる数字をよく間違える、桁を取り違える、合計の違和感に気づきにくいなら、数字の扱い方そのものを見直す必要があります。

子どもの場合は、点数だけで判断しない方が安全です。計算ドリルの点が低くても、どこで止まっているかは子どもによって違います。答えを急がせる前に、数を見ているのか、手順で迷っているのか、焦って固まっているのかを見ます。

苦手の範囲を分けるチェック表

質問 はいの場合に見たいこと
紙に書けば計算できる? 暗算中に数字を保持する負荷が高い可能性
一桁の足し算・引き算で止まる? 10のまとまりや数の分解の確認が必要
筆算でも桁がずれやすい? 手順や位取りの理解を見直す
お金や時間の計算でも困る? 日常生活への支障を確認する
子どもの頃からずっと強く苦手? 学習上の特性として相談を考える材料になる
人前だけで急にできなくなる? 緊張や焦りへの対策が先に必要

このチェックで「はい」が多いほど深刻、という単純な話ではありません。大切なのは、どの種類の困りごとが多いかです。

暗算中に数字が消えるなら、メモや途中式が助けになります。数のまとまりが分からないなら、10の補数やブロック、図を使う練習が合います。人前で止まるなら、暗算の練習だけでなく、確認する言い方を用意した方が安心です。

3-3. 相談を考えた方がよいサイン

暗算が苦手でも、生活に大きな支障がなく、メモや電卓で補えているなら、急いで専門相談を考えなくてもよい場合があります。暗算は便利な力ですが、すべての場面で必須ではありません。

ただし、困りごとが長く続き、本人の自信や生活に影響しているなら、相談を選択肢に入れても構いません。相談は「大ごとにする」ためではなく、本人に合う学び方や補い方を見つけるために使えます。

子どもの場合は、担任の先生、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、自治体の教育相談などが入口になります。家庭だけで抱え込まず、学校での様子と家での様子を合わせて見てもらうと、つまずき方を整理しやすくなります。

大人の場合は、困りごとの内容によって相談先が変わります。仕事上の配慮が必要なら職場の上司や人事、発達特性が気になるなら発達障害者支援センターや医療機関、生活上の困りごとが強いなら自治体の相談窓口が候補になります。

相談するときは、「暗算できません」だけで伝えるより、具体的な場面をメモしておくと話が進みやすくなります。たとえば「レジで小銭計算ができない」「会議で数字を聞かれると固まる」「筆算でも桁を取り違える」のように、困る場面をそのまま書きます。

相談前にメモしておきたいこと

メモする内容
困る場面 レジ、割り勘、宿題、会議、資料確認
できること 電卓ならできる、紙に書けばできる、時間をかければ分かる
できないこと 暗算だと数字が消える、繰り下がりで止まる、桁を間違える
いつから困っているか 小学生の頃から、大人になって仕事で気づいた
生活への影響 支払いが怖い、成績に響く、仕事で確認に時間がかかる
試したこと ドリル、そろばん、メモ、電卓、家族のサポート

相談先で必要なのは、きれいに説明することではありません。困っている場面が具体的に分かるほど、相手も支援の方向を考えやすくなります。

「ただの苦手かもしれない」と思っていても、困りごとが続いているなら相談して大丈夫です。診断名をつけることだけが目的ではなく、学校や仕事で無理なく数字を扱う方法を見つけることも、相談の大切な役割です。

ポイント

  • 暗算が苦手なだけで算数障害とは判断しない
  • 暗算だけでなく、数・お金・時間・筆算でも困るかを見る
  • 支障が続くなら、診断目的だけでなく支援方法を探すために相談する

4. 今日からできる簡単な暗算練習方法

暗算の練習は、速さよりも混乱しない型づくりから始める。10のまとまり、数の分解、メモ併用が入口になる。

暗算が苦手な人ほど、いきなり難しい問題に挑戦しがちです。二桁の足し算を何問も解く、時間を測る、間違えたら最初からやり直す。これで伸びる人もいますが、数字が頭から消えやすい人には負荷が高すぎます。

最初に作りたいのは、速さではなく計算中に迷子にならない型です。どの数字を10に近づけるのか、どこで分けるのか、途中で何をメモするのか。この型があると、暗算への苦手意識が少しずつ下がります。

練習は、短くて構いません。1日5分でも、同じ型を何度も使う方が身につきやすくなります。

4-1. まずは10のまとまりを作る

暗算の入口は、10のまとまりです。10は区切りがよく、頭の中で扱いやすい数字です。足し算でも引き算でも、まず10に寄せる考え方を使うと、計算が少し軽くなります。

たとえば「8+6」をそのまま数えると、9、10、11、12、13、14と進める必要があります。途中で数え間違える人もいます。

そこで、8に2を足して10を作ります。6のうち2を使ったので、残りは4です。10+4で14になります。

この考え方に慣れると、繰り上がりのある計算で止まりにくくなります。暗算が苦手な人は、答えを急ぐより、どの数を動かして10にするかを見つける練習から始めると楽です。

10のまとまり練習表

問題 考え方 答え
9+4 9に1を足して10、残り3を足す 13
8+7 8に2を足して10、残り5を足す 15
6+8 8に2を足して10、残り4を足す 14
13−5 13から3を引いて10、残り2を引く 8
16−9 16から6を引いて10、残り3を引く 7

この表は、丸暗記するためのものではありません。数字を見たときに、「10にするには何が必要か」を探す練習です。

慣れないうちは、指を使っても、紙に線を書いても問題ありません。見える形で分かってから、少しずつ頭の中に移していきます。

4-2. 一桁の足し算・引き算を反射でなく理解で固める

暗算が苦手な人は、二桁計算より前に、一桁の足し算・引き算でつまずいていることがあります。ここがあいまいなまま二桁に進むと、毎回かなり疲れます。

一桁計算は、反射的に答えを言えることだけが目的ではありません。どう分ければ10になるか、どの数を先に動かせば楽かが分かると、二桁計算にもつながります。

たとえば「7+5」は、7に3を足して10、残り2を足して12です。「12−7」は、12から2を引いて10、残り5を引いて5です。

このように、足し算と引き算を別々に覚えるのではなく、10をまたぐ動きとして見ると、暗算の流れがつかみやすくなります。

1日5分の練習メニュー

順番 やること 目安
1 10になる組み合わせを言う 1分
2 8+5、7+6などを10に寄せて解く 2分
3 13−8、14−6などを10に戻して解く 2分

10になる組み合わせは、1と9、2と8、3と7、4と6、5と5です。これがすぐ出ると、繰り上がりや繰り下がりで使える道具が増えます。

練習中に詰まったら、答えを見る前に「10にするには何が足りないか」と考えます。答えの速さより、考え方を毎回同じにすることを優先します。

4-3. 二桁暗算は「分ける・寄せる・戻す」で考える

一桁の計算に少し慣れたら、二桁暗算に進みます。ただし、頭の中で一気に処理しようとしなくて構いません。二桁は、分けて考える方が安定します。

たとえば「46+18」なら、18を10と8に分けます。46+10で56、56+8で64です。これが「分ける」です。

「49+6」のような計算では、49を50に寄せると楽になります。49+1で50、残り5を足して55です。これが「寄せる」です。

「52−7」なら、52から2を引いて50、残り5を引いて45です。10のまとまりに戻してから残りを処理するので、「戻す」と考えると分かりやすくなります。

二桁暗算の型

使う場面 考え方
分ける 二桁+二桁 46+18 46+10+8
寄せる 9に近い数がある 49+6 50にしてから残りを足す
戻す 繰り下がりの引き算 52−7 50に戻してから残りを引く
メモする 数字が消えやすい 68+27 途中の答えだけ書く

最初から暗算だけで解く必要はありません。途中の「56」や「50」だけメモしても、練習になります。

大事なのは、全部を頭の中に詰め込まないことです。暗算が苦手な人は、頭に置く数字を減らすほど計算が安定しやすいです。

4-4. 紙・メモ・電卓を使いながら練習してよい

暗算の練習というと、紙や電卓を使ってはいけないと思う人がいます。でも、最初から道具を禁止すると、混乱だけが増えることがあります。

紙に書くと、数字が目の前に残ります。メモを使うと、途中の答えを忘れても戻れます。電卓を使うと、自分の答えが合っているか確認できます。

これらはズルではありません。暗算が苦手な人にとっては、頭の中の負荷を下げる補助輪のようなものです。補助を使いながら型を覚え、慣れた部分だけ暗算に移せば十分です。

たとえば、最初は式も途中式も書く。次に途中式だけ書く。慣れたら、10に寄せる部分だけ頭の中でやる。最後に答えを電卓で確認する。この流れなら、失敗しても原因を見つけやすくなります。

道具を使った練習ステップ

ステップ やり方 目的
1 式と途中式を全部書く 計算の流れを見えるようにする
2 途中の答えだけメモする 頭に置く数字を減らす
3 一部だけ暗算する できる範囲を広げる
4 電卓で答えを確認する 間違いの原因を見つける
5 同じ型の問題を短く繰り返す 考え方を定着させる

暗算が苦手な人に必要なのは、失敗を増やす練習ではありません。自分がどこで止まるか分かる練習です。

紙やメモを使っても、計算の型が身につけば、少しずつ頭の中で処理できる部分が増えます。道具を使うことと、暗算力を伸ばすことは両立します。

ポイント

  • 暗算練習は、速さより10のまとまりと数の分解から始める
  • 二桁暗算は「分ける・寄せる・戻す」の型で考える
  • 紙・メモ・電卓を使いながら、暗算する部分を少しずつ増やす

5. 大人が暗算できないときの日常対策

大人は暗算を完全に克服するより、ミスしやすい場面で道具と確認フレーズを使う方が現実的。

大人になってから暗算できないと、「今さら練習しても遅いのでは」「人に知られるのが恥ずかしい」と感じやすくなります。特に、レジ、割り勘、仕事の数字確認は、人前で答えを求められることが多い場面です。

ただ、大人の日常で本当に必要なのは、暗算で早く答えることだけではありません。金額や数量を扱う場面では、速さよりも間違えないことの方が大事です。

暗算が苦手なら、暗算力を鍛える練習と同時に、ミスしやすい場面を減らす工夫を持っておくと安心です。ここでは、レジ・割り勘・仕事で使える現実的な対策を整理します。

5-1. レジ・小銭計算で焦らない支払いルール

レジで焦る人は、小銭をぴったり出そうとした瞬間に混乱しやすいです。後ろに人が並んでいる、店員さんが待っている、財布の中の小銭を見ながら計算する。この条件が重なると、普段より数字が飛びやすくなります。

この場合は、暗算で乗り切るより、支払い方を決めておく方が楽です。たとえば、細かい計算をしない、キャッシュレス決済を使う、現金なら大きめのお札で出す、といったルールです。

「小銭を減らさなきゃ」と思うほど、レジ前で計算の負荷が増えます。暗算が苦手な人は、まずレジで計算しない仕組みを作る方が安心です。

レジで焦らない支払いルール

困る場面 避けたい行動 楽になる対応
小銭をぴったり出したい 財布の中で暗算し続ける 迷ったら大きめに出す
後ろに人が並んでいる 急いで小銭を探す キャッシュレス決済を使う
お釣りの確認が不安 その場で暗算して確かめる レシートと金額表示を見る
小銭を減らしたい 毎回ぴったり支払いを狙う 空いている店や自販機で調整する
焦って固まる 無理に暗算で答える 「少し確認します」と言う

レジは、暗算の練習場所にしなくて大丈夫です。焦りやすい場所では、計算量を減らす方がミスも不安も減ります。

小銭を使う練習をしたいなら、混んでいない時間や家で行う方が向いています。練習する場面と、失敗を避ける場面は分けて考えます。

5-2. 割り勘や仕事で電卓を自然に使う言い方

割り勘や仕事の場面では、「暗算できない」と言うことに抵抗があるかもしれません。でも、電卓を使うこと自体は不自然ではありません。むしろ、金額や数量を間違えないためには自然な行動です。

言い方で大事なのは、自分を下げすぎないことです。「私、計算が全然できなくて」と言うと、必要以上に恥ずかしさが強くなります。代わりに、正確に確認するための行動として伝えると、落ち着いて言いやすくなります。

たとえば、割り勘なら「間違えると嫌だから電卓で確認するね」で十分です。仕事なら「正確な数字を確認してから返します」と言えば、暗算が苦手なことを細かく説明しなくても済みます。

電卓を自然に使う言い換え例

場面 言いにくい言い方 自然な言い方
割り勘 「私、暗算できないから無理」 「間違えると嫌だから電卓で確認するね」
友人との会計 「計算苦手でごめん」 「一回アプリで割るね」
職場で数字を聞かれた 「今すぐ暗算できません」 「確認して正確な数字を出します」
上司に概算を求められた 「たぶん分かりません」 「概算でよければ出します。正確な数字は確認します」
家族に急かされた 「無理、分からない」 「暗算だと間違えやすいから、書いて確認するね」

この言い方のポイントは、暗算できないことを大きな欠点として扱わないことです。目的を「計算できないから」ではなく、間違えないために置き換えます。

仕事では、特にこの考え方が役立ちます。数字を扱う場面では、即答より確認が求められることも多いです。暗算で急いで答えるより、確認して正確に返す方が信頼につながる場合があります。

5-3. 数字のミスを減らす確認テンプレート

暗算が苦手な大人は、計算そのものだけでなく、数字の聞き間違い、桁の見落とし、入力ミスでも困りやすいです。特に仕事では、暗算よりも確認手順の方が重要になることがあります。

おすすめなのは、自分用の確認テンプレートを作ることです。毎回その場で考えるのではなく、数字を見る順番を決めておきます。順番が決まっていると、焦っているときも確認しやすくなります。

たとえば、金額なら「桁」「税込・税抜」「単価」「数量」「合計」の順番で見ます。日付や時間なら、「日付」「曜日」「開始時刻」「終了時刻」「所要時間」を分けて確認します。

数字確認テンプレート

確認する数字 見る順番
金額 桁 → 税込・税抜 → 単価 → 数量 → 合計
請求書 宛名 → 金額 → 消費税 → 振込期限 → 口座
時間 日付 → 曜日 → 開始時刻 → 終了時刻 → 所要時間
在庫・数量 商品名 → 個数 → 単位 → 合計 → 発注数
資料の数値 元データ → 転記先 → 桁 → 単位 → 合計

このテンプレートは、暗算力を上げるためというより、ミスを減らすためのものです。暗算が苦手な人ほど、数字を頭の中だけで処理せず、見る順番を固定した方が安定します。

確認するときは、可能なら一度声に出すか、指でなぞります。数字を目で追うだけだと、桁を飛ばすことがあります。大事な金額や時間は、目だけでなく手や声も使って確認するとミスを見つけやすくなります。

すでに計算ミスをしたときのリカバリー例

状況 使える言い方
金額を間違えて伝えた 「すみません、計算を急いで間違えました。確認した金額を改めてお伝えします」
会議で数字を即答できなかった 「正確に確認したいので、数字を見直してから共有します」
割り勘で間違えた 「ごめん、計算を間違えていた。電卓で出し直すね」
資料の数値がずれていた 「転記時に数字がずれていました。元データと照合して修正します」

ミスをしたときは、言い訳を長くするより、確認して直す流れを早く出す方が伝わりやすいです。暗算が苦手なことを責めるより、次に同じミスをしない仕組みに変えます。

大人の暗算対策は、「できない自分を隠す」ことではありません。数字を安全に扱うために、道具、言い方、確認手順を持っておくことです。

ポイント

  • レジや仕事では、暗算の速さより間違えない仕組みを優先する
  • 電卓は「計算できないから」ではなく「正確に確認するため」に使う
  • 数字の確認順を固定すると、焦っている場面でもミスを減らしやすい

6. 子どもが暗算できないときの接し方

子どもが暗算できないときは、叱るよりも、どの段階でつまずいているかを一緒に分けて見る。

子どもが暗算できないと、親は不安になります。授業についていけないのではないか、計算が嫌いになるのではないか、このまま放っておいていいのか。心配になるほど、つい「なんでこれが分からないの?」と言いたくなることもあります。

でも、暗算ができない子に必要なのは、最初から速く答える練習ではありません。まずは、どこで分からなくなっているのかを一緒に見つけることです。

子ども自身も、なぜできないのかを言葉にできないことがあります。「分からない」と言っていても、数字を覚えていられないのか、10のまとまりが見えていないのか、繰り下がりで止まっているのかは違います。

6-1. 「なんでできないの?」より「どこで分からなくなった?」と聞く

子どもが暗算で止まったとき、「なんでできないの?」と聞くと、子どもは責められているように感じやすくなります。本人にも理由が分からないからです。

代わりに聞きたいのは、「どこまで分かった?」「どの数字で迷った?」「頭の中で何が消えた?」という質問です。できない理由を責めるのではなく、止まった場所を探す質問に変えます。

たとえば「8+7」で止まる子に、「答えは?」と急かすより、「8を10にするには、あといくついる?」と聞きます。ここで「2」と言えたら、次に「7から2を使ったら、残りはいくつ?」と分けます。

この聞き方なら、子どもは答えを丸ごと当てる必要がありません。計算を小さな段階に分けて、一つずつ確認できます。

NG声かけと改善声かけ

場面 避けたい声かけ 変えたい声かけ
答えが出ない 「なんで分からないの?」 「どこで迷ったか一緒に見よう」
何度も間違える 「さっきもやったでしょ」 「同じところで止まっているか確認しよう」
指を使う 「指を使わないで」 「指で確認してから、10のまとまりにしてみよう」
時間がかかる 「早くして」 「急がなくていいから、まず分けて考えよう」
計算を嫌がる 「逃げないでやりなさい」 「今日は短く、2問だけ一緒にやろう」

声かけを変える目的は、甘やかすことではありません。子どもが計算中に何をしているのかを見えるようにするためです。

暗算が苦手な子は、答えを急がされるほど頭の中が混乱しやすくなります。落ち着いて手順を分ける方が、結果的に正しい答えに近づきやすくなります。

6-2. 指を使う・絵にする・メモすることを禁止しない

暗算の練習では、「指を使わない方がいい」と思われることがあります。たしかに、ずっと指だけに頼っていると、計算の型が育ちにくい場合もあります。

ただし、暗算が苦手な子にいきなり指やメモを禁止すると、頭の中だけで処理しなければならなくなります。数字を覚える、数を分ける、途中の答えを保つ。この負荷が一気に増えます。

最初は、指、絵、ブロック、線、メモを使って構いません。見える形にすると、子どもは「何を足したのか」「何が残っているのか」を確認しやすくなります。

大事なのは、道具を使わせっぱなしにすることではなく、道具を使って考え方を見えるようにすることです。たとえば、指で8と7を数えるだけで終わらせず、「8を10にするために2を使った」と言葉にします。

発達障害教育推進センターの情報でも、学習障害のある子どもへの支援では、困難の状態を把握し、本人に合った支援を考える視点が示されています。暗算が苦手な子に対しても、同じように「できない」とまとめず、何に困っているかを見ることが大切です。

道具を使った支え方

道具 使い方 目的
いくつ足すか、いくつ残るかを確認する 数の動きを見えるようにする
ブロック 10のまとまりを作る 量の感覚をつかむ
紙のメモ 途中の答えを書く 数字を忘れても戻れるようにする
線や丸 足した数・引いた数を目で見る 繰り上がりや繰り下がりを確認する
電卓 最後に答えを確認する 間違いの原因を見つける

道具を使うときは、少しずつ外していきます。最初は全部見える形にする。次に途中の答えだけ書く。慣れたら、10を作る部分だけ頭の中で考える。

この順番なら、暗算が「いきなり頭の中だけでやるもの」ではなくなります。子どもにとっても、できる部分が少しずつ増えていく感覚を持ちやすくなります。

6-3. 学校や専門機関に相談する目安

暗算が苦手でも、家庭での練習や学校のサポートで少しずつ進む子はいます。計算に時間がかかるだけなら、焦って専門相談を考える必要はない場合もあります。

一方で、困りごとが長く続いているなら、家庭だけで抱え込まない方がよいこともあります。特に、暗算だけでなく、筆算、数の大小、お金、時間、文章題でも強く困っている場合は、相談を考える材料になります。

相談の入口は、まず学校で構いません。担任の先生、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーなどに、家庭での様子を具体的に伝えます。

伝えるときは、「暗算ができません」だけではなく、どの場面で、何が、どのくらい困るのかをメモしておくと話が進みやすくなります。

相談を考えたいサイン

サイン 見たいポイント
練習しても強い苦手さが続く 方法が合っていない可能性
筆算でも桁や手順が崩れる 暗算だけでなく計算全体の確認が必要
数の大小や量の感覚がつかみにくい 数概念の理解を見直す必要
お金や時間の理解でも困る 日常生活への影響を確認する
計算のたびに強く泣く・固まる 学習への不安や失敗体験への配慮が必要
学校の授業についていくのが難しい 学校での支援や配慮を相談する

相談することは、子どもに問題があると決めつけることではありません。本人に合った学び方を探すための手段です。

家庭では気づきにくいことも、学校では別の形で見えていることがあります。逆に、学校では頑張っていても、家で強く疲れている子もいます。両方の様子を合わせて見ることで、必要な支え方を考えやすくなります。

ポイント

  • 子どもを責めるより、どこで計算が止まったかを一緒に探す
  • 指・絵・メモは、考え方を見えるようにする道具として使ってよい
  • 暗算以外の数や計算でも困るなら、学校や専門機関への相談を考える

7. Q&A:よくある質問

7-1. 暗算できないのは頭が悪いからですか?

暗算できないだけで、頭が悪いとは判断できません。紙に書けば計算できる人は、計算の意味ではなく、頭の中で数字を残して操作する部分でつまずいている可能性があります。まずは、暗算・筆算・数の理解を分けて見てください。

7-2. 大人なのに暗算できないのはおかしいですか?

大人でも暗算が苦手な人はいます。レジや割り勘、仕事の数字確認で焦ると、普段より数字が飛びやすくなることもあります。大人の場合は、無理に暗算で即答するより、電卓・メモ・確認フレーズを使って正確に処理する方が現実的です。

7-3. 紙に書けばできるのに暗算だけできないのはなぜですか?

紙に書くと、数字や途中式が目に見える形で残ります。一方、暗算では途中の数字を頭の中に置き続ける必要があります。その負荷が高いと、計算方法は分かっていても途中で数字が消えたり、別の数字と混ざったりします。

7-4. 暗算できないのは算数障害の可能性がありますか?

暗算が苦手なだけで、算数障害とは言えません。ただし、暗算だけでなく、筆算、数の大小、お金、時間、文章題でも強く困っている場合は、相談を考える材料になります。自己判断で決めつけず、困る場面を具体的に整理することが先です。

7-5. 暗算を練習するなら何から始めればいいですか?

最初は二桁暗算ではなく、10のまとまりを作る練習から始めるのがおすすめです。たとえば「8+5」を、8に2を足して10、残り3を足して13と考えます。速く答えるより、数をどう分けるかを毎回同じ形で確認します。

7-6. 電卓やメモを使うのは甘えですか?

甘えではありません。数字を正確に扱うための道具です。特に仕事やお金の場面では、暗算で急いで間違えるより、電卓やメモで確認した方が安全です。練習では暗算を少しずつ増やし、日常では道具で補うと考えると楽になります。

7-7. 子どもが暗算できないとき、親はどう接すればいいですか?

まず叱らずに、どこで止まっているかを一緒に見ます。「なんでできないの?」ではなく、「どの数字で迷った?」「10にするにはあといくつ?」と聞く方が、つまずきが見えやすくなります。指やメモも、最初は考え方を見えるようにする助けになります。

7-8. 暗算は大人になってからでも改善できますか?

改善できる部分はあります。ただし、いきなり速く暗算することを目標にすると苦しくなりやすいです。10のまとまり、数の分解、途中メモ、電卓での答え合わせを使いながら、できる範囲を少しずつ広げる方が続けやすくなります。

8. まとめ

まとめ-1. 全体の振り返り

暗算できないからといって、それだけでおかしいとは判断できません。

紙に書けばできる人、時間をかければ分かる人、人前だと焦って止まる人では、つまずいている場所が違います。必要なのは「もっと頑張る」ではなく、まず自分がどこで混乱しているのかを分けて見ることです。

暗算が苦手な原因は、数字を頭に残す力、10のまとまりを作る感覚、繰り上がり・繰り下がりの手順、緊張や焦りなどに分けられます。原因が違えば、合う練習も変わります。

まとめ-2. 今後も意識したいポイント

暗算の練習は、速さから始めなくて大丈夫です。

最初は、10のまとまりを作る、数を分ける、途中でメモする、電卓で確認する。このように、計算中に迷子にならない型を作る方が続けやすくなります。

また、日常生活や仕事では、暗算にこだわらなくてよい場面もあります。お金や仕事の数字は、早く答えるより正確に確認する方が大切です。メモや電卓を使うことは、甘えではなくミスを減らす工夫です。

まとめ-3. 今すぐできるおすすめアクション

まずは、今日から1つだけ試してみてください。

「8+5」「13−8」のような10をまたぐ計算を、10のまとまりに分けて考える。レジでは無理に小銭を計算しない。仕事や割り勘では「正確に確認するね」と言って電卓を使う。

子どもが暗算で困っている場合は、「なんでできないの?」ではなく、「どこで分からなくなった?」と聞いてみてください。答えを急がせるより、止まった場所を一緒に見つける方が、次の練習につながります。

まとめ-4. 最後に

暗算が苦手だと、数字を出されるだけで身構えてしまうことがあります。

でも、暗算は能力のすべてではありません。書けば分かる、確認すれば正確にできる、道具を使えば困りごとを減らせる。そうした力も、数字と付き合うための大事な方法です。

無理に「暗算できる人」になろうとする前に、自分が安心して数字を扱える形を作っていきましょう。

9. 参考文献

文部科学省.更新年不明. 学習障害児に対する指導について(報告). https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/002.htm

〈要約:学習障害について、全般的な知的発達に遅れはないものの、読む・書く・計算する・推論するなど特定の能力に著しい困難を示す状態として説明している資料です。本文では、暗算が苦手なことを知的な力全体の問題と決めつけないための根拠として使用しました。〉

発達障害情報のポータルサイト.限局性学習症. https://hattatsu.go.jp/supporter/healthcare_health/about-sld/

〈要約:限局性学習症の概要と、算数障害に関わる領域として数処理、数概念、計算、数的推論があることを説明しているページです。本文では、暗算だけでなく数全般の困りごとを見る必要があるという説明に使用しました。〉

発達障害教育推進センター.更新年不明. 学習障害(LD)のある子ども. https://cpedd.nise.go.jp/individual_cat/ld/

〈要約:学習障害のある子どもへの理解や支援について、困難の状態を把握し、本人に合った支援を考える視点を示しているページです。本文では、子どもが暗算できないときに叱るのではなく、どこでつまずいているかを見て支える説明に使用しました。〉

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