同じ公務員への転職でも年収・昇進・働き方・人間関係・退職金に大きな差があり、事前に5つのポイントをチェックすることで「こんなはずじゃなかった…」という後悔をぐっと減らせる内容です。
「今の職場はしんどいけれど、民間に行くのはもっと不安だから、公務員から公務員に移ろうかな……」と考えているとき、頭をよぎるのが「転職して後悔したらどうしよう」という不安ではないでしょうか。同じ“公務員”同士でも、給与テーブルや昇進スピード、異動の多さ、職場の雰囲気は意外なほど違いがあり、そこを見落として決めてしまうと、あとから「前のほうがまだ良かったかも」と悩みがちです。
とはいえ、転職前の段階では、ネットの口コミもバラバラで、どこまで本気にしていいのか分かりにくいものです。上司や同僚には相談しづらく、家族にも「安定してるんだから、今のままでいいんじゃない?」と言われてしまうと、ひとりでモヤモヤを抱えたまま時間だけが過ぎてしまいますよね。このままなんとなく決めてしまうと、数年後の自分が「ちゃんと調べておけばよかった…」と感じてしまう可能性があります。
そこで本記事では、公務員から公務員に転職して後悔しないための5つのチェックリストとして、転職前に最低限おさえておきたい「お金」「昇進」「働き方」「人間関係」「退職金・老後」の5つの観点を整理します。チェックリスト形式で自分の状況と照らし合わせながら読めるようにしているので、「本当に今、動くべきか」「どんな条件なら転職しても納得できそうか」が具体的に見えてくるはずです。
また、すでに公務員から公務員へ転職したあとで「失敗したかも……」と感じている方に向けて、今の職場でできる工夫や、再転職を視野に入れるときの考え方もあわせて解説します。読み終えたころには、「勢いで決める」のではなく、「自分と家族にとって納得できる選択肢」を落ち着いて選べるようになることを目指しています。
この記事はこのような人におすすめ!
- 今の職場にモヤモヤがあり、公務員から公務員への転職をぼんやり考え始めている人
- すでに応募先の候補があり、「本当に転職して後悔しないか」を冷静に確認したい人
- 公務員を続けるか、民間に出るかも含めて、自分のキャリアと生活を一度じっくり整理したい人
目次 CONTENTS
1. 公務員から公務員に転職して後悔しやすい理由とは?
同じ公務員同士の転職でも、給与や昇進、働き方や人間関係のギャップが大きく、「前の職場のほうがよかった」と感じてしまう典型パターンを整理して全体像をつかむ章です。
「同じ公務員なんだから、そんなに変わらないだろう」と思っていたのに、いざ転職してみると残業時間や手当の付き方がまるで違う、という話は少なくありません。制度上は似たように見えても、自治体や機関ごとに運用ルールや慣習が違うため、「想像していた働き方」と「現実」とのギャップが生まれやすいのです。
また、給与や昇進のスピードだけでなく、仕事の裁量の大きさや求められるスキル、上司との距離感なども職場によってかなり変わります。ここを事前にイメージできていないと、「条件は良くなったけど、仕事がしんどすぎる」「逆に、やりがいはあるけれどお金の面で苦しい」といった別の悩みを抱えやすくなってしまいます。
さらに厄介なのは、公務員同士の転職は外から見ると安定しているように映るため、周囲から「贅沢な悩み」と見られやすいことです。「誰にも分かってもらえない」と感じてしまうと、一人で抱え込みやすくなり、後悔の気持ちも大きくなりがちです。この章では、そうしたギャップの中身を整理し、「なぜ後悔が起こりやすいのか」を先に知っておくことを目指します。
1-1. 公務員から公務員への転職で起こりがちなギャップ
まず大きいのが、「お金まわり」のギャップです。基本給の水準は似ていても、地域手当や住居手当、残業代の付き方などで、手取りが数万円単位で変わることがあります。ボーナスの支給月数や評価のつき方も組織ごとにクセがあるため、「年収はそこまで変わらないはず」と思っていたのに、実際の生活感はかなり違う、ということも起こりやすいポイントです。
次に、昇進スピードやポストの上限も意外と見落とされがちです。若手登用に積極的な組織もあれば、年功序列が色濃く残っている組織もあります。転職前の自治体ではすでに係長クラスを狙える位置だったのに、転職先では年齢構成やポストの空きが少なく、「ここから昇進するのはかなり時間がかかりそうだ」と感じるケースも珍しくありません。
また、仕事の中身にもギャップがあります。事務職のつもりで転職したのに、実際には現場色の強い部署で住民対応が多く、精神的な負荷が高かったというケースもあれば、その逆に、淡々としたルーティン業務が中心で「もっと企画や調整に関わりたい」と物足りなさを感じることもあります。同じ「一般行政職」でも、扱う分野や部署によって求められるスタイルはかなり違います。
さらに、多くの人が想像以上に悩みやすいのが、組織文化や人間関係の違いです。前の職場ではフラットな雰囲気で意見も出しやすかったのに、転職先は上下関係が厳しく「前例踏襲」が強い、というようなケースはよくあります。その逆に、スピードや成果を重視する文化に変わり、「ゆっくり慎重に進めたい自分には合わない」と感じてしまう人もいるでしょう。
最後に、勤務地や異動の範囲も見逃せないポイントです。通勤時間が少し伸びるだけならまだしも、将来的な転勤・出向の範囲がどこまで想定されているかで、ライフスタイルは大きく変わります。「子どもの進学までは転勤がないと思っていたのに、数年で広域異動の対象になってしまった」というケースもあり、ここでも「聞いていた話と違う」と後悔しやすくなります。
1-2. 後悔しやすい人の考え方や決め方のクセ
後悔しやすい人に多いのが、「今の不満だけで決めてしまう」クセです。たとえば「残業が多いから、今より楽そうなところへ行こう」「上司と合わないから、とにかく人間関係をリセットしたい」といった気持ちはとても自然ですが、それだけを基準に選ぶと、他の条件が大きく下がってしまうリスクがあります。不満の原因が何なのかを分解しないまま動くと、「こんなはずじゃなかった」と感じやすくなってしまうのです。
また、「同じ公務員なら大差ないだろう」という思い込みも、後悔のもとになりがちです。制度名や給与表の形式が似ているため、細かい違いを軽く見てしまい、「聞かなくても大丈夫だろう」と判断してしまうことがあります。実際には、評価のつき方や異動の運用など、「中で働いてみて初めて分かる」部分が大きく、この前提で決めてしまうとギャップに驚く可能性が高まります。
もうひとつのクセは、「情報源が偏っている」状態で決めてしまうことです。採用パンフレットやホームページだけを見て判断したり、たまたま話を聞けた一人の意見を全体の印象として受け取ってしまったりすると、良い面・悪い面のバランスが見えにくくなります。複数の人から話を聞いたり、違う立場の人の意見を集めたりする前に決めてしまうと、「こんな面があるなら早く知りたかった」と感じやすくなります。
さらに、締め切りや年齢を気にして「焦って決めてしまう」パターンも要注意です。「今年受けないとチャンスがないかもしれない」「30代前半のうちに動かないと」といった不安から、十分に比較検討する前に出願してしまうことがあります。時間をかけすぎて動けなくなるのも困りますが、焦りだけで決めると、あとから冷静になったときに後悔の感情が強く残りやすいでしょう。
1-3. 「転職でしか解決できない悩みか」を切り分ける視点
後悔を減らすうえで大切なのは、今抱えている不満が「転職しないと変えられないものなのか」「今の職場の中でも工夫できるものなのか」を見分けることです。たとえば、組織全体の給与水準や退職金の制度は、自分の力だけでは変えにくい部分なので、転職を通じて環境を変える必要があります。一方で、業務の負担や配属先については、異動や業務分担の見直しで改善できる余地もあるかもしれません。
このとき役に立つのが、不満を書き出してみて、「制度・仕組み」「人・関係性」「自分の働き方」のどこに属する悩みかを分類してみることです。制度や仕組みに属する不満が多いなら、組織を変える意味は大きいといえますが、主な不満が上司との相性や一部の人間関係に集中しているなら、部署異動や関わり方の工夫で改善できる可能性もあります。
また、「転職後も同じ悩みを繰り返しそうか」という視点も大切です。たとえば、完璧主義で仕事を抱え込みやすい人は、どの職場に行っても忙しくなってしまうかもしれません。「環境を変えれば解決する悩み」と「自分のクセとうまく付き合う必要がある悩み」を分けて考えることで、転職に期待しすぎず、現実的な判断がしやすくなります。
そして、「転職しない場合の選択肢」も一度冷静に並べてみると、気持ちが落ち着きやすくなります。異動希望を出す、信頼できる上司や同僚に相談する、業務の進め方を工夫するなど、今の職場の中でもできることを書き出してみると、「転職するか/しないか」だけでなく、いくつかのルートから選べる状態に近づきます。そのうえで、「それでも自分は転職を選びたい」と思えたなら、後悔はかなり小さくできるはずです。
ポイント
- 「同じ公務員でも条件や文化の違いが大きい」と理解しておく
- 今の不満を分解し、転職でしか変えられない部分かを見極める
- 焦りだけで決めず、複数の選択肢から選ぶ状態をつくる
2. 公務員から公務員に転職して後悔しないための5つのチェックリスト
転職前に「お金・昇進・働き方・人間関係・退職金」の5つをチェックリストで確認することで、同じ公務員間の転職でもギャップを見える化し、「こんなはずじゃなかった」という後悔を大きく減らすことを狙う章です。
公務員から公務員に転職する時期は、どうしても「今の職場のつらさ」に意識が向きやすくなります。ですが、転職後に待っている現実は、いま感じている不満とは別のポイントでしんどいことも少なくありません。「あのとき、ここを確認しておけばよかった」とならないように、事前に整理しておきたい観点を5つに絞ってお伝えします。
ここで紹介するチェックリストは、「転職するべきかどうか」を白黒つけるためのものではありません。自分にとって譲れない条件と、妥協してもよい条件をはっきりさせるための道具だと考えてみてください。すべてが完璧な職場はほぼ存在しないので、「どこなら納得して受け入れられるか」を言葉にしておくことが大切です。
読み進めながら各項目に◯/△/×をつけていくと、「このまま今の職場で頑張る」「条件が揃えば公務員から公務員に転職する」「民間も含めて幅を広げて考える」といった、次の一歩が見えてきます。焦って結論を出す前に、一度ゆっくり自分の本音と向き合う時間をとってみましょう。
2-1. チェック1:年収・手取り・各種手当はどう変わるか
転職で後悔しやすいポイントの筆頭は、やはり年収や手取りの変化です。「大して変わらないだろう」と思っていたのに、住居手当が減ったり、地域手当がなくなったりして、手取りベースではマイナスになってしまう人もいます。毎月の生活費や貯金ペースに直結する部分なので、ここはシビアに確認したいところです。
また、公務員はボーナスの比重も大きくなりがちです。ボーナスの支給月数や評価のつき方が少し違うだけでも、年ベースの収入には意外と差が出てきます。基本給だけでなく、「年間でいくらくらいになるか」という感覚で比べると、後悔しにくくなります。
転職前に確認したいお金まわりのチェック項目
以下のチェックリストを、候補先ごとにざっくり埋めてみるのがおすすめです。
- 基本給の水準(今と比べて上がるのか・下がるのか)
- 地域手当・住居手当・扶養手当の有無と金額感
- 時間外手当の付き方(みなしなのか、実績に応じるのか)
- ボーナスの支給月数と評価の影響度
- 通勤手当・交通手段の想定(自家用車か公共交通機関か)
- 将来的な昇給カーブのイメージ(何年後にどのくらいを想定しているか)
すべてを完璧に把握することは難しくても、「最低限ここまでは確認したい」というラインを自分の中で決めておくことが大切です。採用説明会や面接の場で、聞き方を工夫しながら質問してみるのも一つの方法でしょう。
チェックリストを埋めてみて、もし「年収は下がるが、残業が減る」「手取りはほぼ同じだが、手当の内訳が変わる」などの結果が見えてきたら、その代わりに何を得たいのかも一緒に考えてみてください。お金だけでなく、時間・心の余裕・家族との時間といった要素も含めてトータルで納得できるかがポイントになります。
2-2. チェック2:昇進スピードとポストの天井を確認できているか
もう一つ、転職後に「しまった」と感じやすいのが、昇進スピードや役職ポストの上限です。今いる職場では順調に昇任を目指せていたのに、転職先では年齢構成や組織規模の関係で、上のポストがほとんど空かない、ということも珍しくありません。長く勤めるほど効いてくる部分なので、早めにイメージしておきたいところです。
「そんな先のことまで分からない」と感じるかもしれませんが、昇任試験の有無や受験条件、過去の昇任実績といった情報を集めるだけでも、だいぶ見え方が変わります。係長級までは年齢と評価で誰でも行きやすいのか、限られた人しか上がれないのかによって、自分のキャリアの描き方が変わってくるからです。
昇進スピードとポストの違いを比較するポイント
以下の点を中心に、できる範囲で情報を集めてみてください。
- 昇任試験や選考の有無(試験制なのか、推薦なのか)
- 平均的な昇任年数(何歳頃に係長級・課長級になる人が多いか)
- 管理職の年齢構成(若手登用に積極的かどうか)
- ポストの数と組織規模(本庁・出先機関それぞれのポスト状況)
- 専門職・一般職のコース分け(コースによる昇進の違い)
全部を正確に知ることはできなくても、「今よりチャンスが多そうか、少なそうか」くらいの感覚をつかんでおくことが大事です。もし今の職場よりも昇進のチャンスが明らかに限られているなら、「それでも自分はこの組織に行きたい」と思える理由が必要になるでしょう。
また、昇進だけがキャリアのすべてではありませんが、将来の年収や責任範囲にもつながる要素です。今はあまり気にならなくても、10年後・20年後に「もう少し上を目指したかった」と感じるかもしれません。目先の条件だけでなく、少し先の自分も想像しながら判断してみてください。
2-3. チェック3:勤務地・異動範囲・働き方の実態はどうか
公務員から公務員に転職するとき、「勤務地はなんとなく近くなりそう」「異動も今と同じくらいだろう」とイメージで捉えてしまうことがあります。しかし、通勤時間や異動範囲、残業時間の違いは、毎日の生活の満足度に直結します。ここを見誤ると、「思ったよりも家族との時間が減ってしまった」と後悔することになりかねません。
とくに小さなお子さんがいる場合や、親の介護が視野に入っている場合には、将来的な転勤や出向の有無・頻度も重要なポイントです。「今は大丈夫でも、数年後に生活が一変する可能性があるのか」を、できる範囲で確認しておきましょう。
勤務地・異動で後悔しないための確認リスト
候補先について、次のような点をメモしておくと比較しやすくなります。
- 現在の通勤時間と、転職後の想定通勤時間
- 異動・転勤の頻度(何年サイクルが多いのか)
- 異動の範囲(市内のみ・県内全域・全国など)
- 残業時間の目安と繁忙期のピーク
- 休日出勤や宿直・当直の有無
- テレワークやフレックス勤務の運用状況
こうした情報は、求人票だけでは分かりにくいことも多いものです。可能であれば、実際に働いている人の声を聞く、庁舎や施設を見に行くといった一手間をかけてみると、雰囲気も含めてイメージしやすくなります。
チェックしていく中で、「通勤は少し伸びるけれど残業が減りそう」「異動範囲は広がるが、やりたい分野に近づく」といったトレードオフが見えてくるかもしれません。自分や家族にとって、どの組み合わせなら納得できるかを考える材料にしてみてください。
2-4. チェック4:組織文化・人間関係の傾向は自分に合いそうか
転職後の満足度を大きく左右するのが、組織文化と人間関係です。同じ公務員でも、「前例重視で慎重な組織」と「新しいことに積極的な組織」では、仕事の進め方もストレスの種類もまったく違います。どちらが良い・悪いではなく、自分の性格や価値観に合うかどうかが重要です。
とはいえ、事前にすべてを知ることはできません。それでも、採用情報・説明会・OB訪問などから雰囲気をつかむことはできます。ホームページの雰囲気や広報紙のトーン、トップのメッセージなども、組織の空気をうかがうヒントになります。
合わない職場のサインになりやすいポイント一覧
次のようなポイントは、事前に意識してチェックしておきたいところです。
- 「前例」「慣例」という言葉が頻繁に出てこないか
- 上司との距離感が近いのか、指示命令型なのか
- ミスに対して責める空気が強いか、フォローする文化があるか
- 飲み会や付き合いがどの程度期待されていそうか
- 若手の意見や提案が活かされている事例が見えるか
これらのポイントを見て、今の自分の価値観と照らし合わせてみてください。たとえば、「安定したルールの中でコツコツ働きたい人」には前例重視の組織が合いやすいかもしれませんし、逆に「新しい取り組みを考えるのが好きな人」にとっては、ストレスになる可能性があります。
一方で、どんな職場にも「合う人」と「合わない人」がいるものです。完璧にフィットする環境を探すよりも、「多少合わない部分があっても、自分なら工夫してやっていけそうか」という視点で考えてみると、現実的な判断がしやすくなります。
2-5. チェック5:退職金・年金・ライフプランへの影響をイメージできているか
最後のチェックポイントは、退職金・年金を含めた長期的なお金とライフプランです。公務員から公務員への転職では、勤続年数の扱いや退職手当の計算方法が変わることがあります。若いうちはピンとこなくても、将来の安心感に関わる部分なので、ざっくりでもイメージしておきたいところです。
とくに、「今いる職場で定年まで働いた場合」と「転職して新しい職場で定年まで働いた場合」で、どの程度の差が出そうかを想像してみることが大切です。そこまで詳しい数字が分からなくても、「ある程度減っても、やりたいことや暮らしの満足度が上回るか」を考える材料になります。
退職金・年金への影響をざっくりイメージするための項目
以下の項目を、ノートなどに書き出して整理してみてください。
- 今の職場にこのままいた場合の勤続年数の見込み
- 転職先で何歳くらいまで働くイメージか
- 退職金が一社完結か、複数に分かれるか
- 老後に毎月どのくらいのお金が必要だと考えているか
- 住宅ローンや子どもの教育費のピーク時期
これらを書き出してみると、「今のままのほうが金銭的には有利だが、心身の負担が大きい」「多少退職金が減っても、健康や家族との時間を優先したい」など、自分にとっての優先順位がはっきりしてきます。そのうえで決めた選択なら、将来振り返ったときに「当時の自分なりに考えて決めた」と受け止めやすくなるはずです。
お金の話はどうしても不安を感じやすいテーマですが、「なんとなく怖い」ままにしておくと、動くことも、留まることも決めにくくなってしまいます。完璧なシミュレーションでなくてもよいので、自分なりのざっくりした見通しを持つことが、後悔しないための大きな一歩になります。
ポイント
- 年収や手取りだけでなく、手当・ボーナス・昇給カーブまで含めて比較する
- 働き方・異動・組織文化・人間関係を「自分や家族に合うか」で見直す
- 退職金やライフプランも含め、譲れない条件と妥協できる条件を言語化する
3. すでに公務員から公務員に転職して後悔しているときの対処法
すでに公務員から公務員に転職して「失敗したかも」と感じている人に向けて、感情と事実を整理し、今の職場でできる工夫と再転職も含めた現実的な選択肢を整理し直す章です。
公務員から公務員に転職したあと、「前の職場のほうがよかったかもしれない」「あのときの判断は間違いだったのでは」と感じてしまうことは珍しくありません。転職は人生の大きな決断なので、うまくいかなかった部分ばかりが目につき、つい自分を責めてしまいがちです。
しかし、「後悔している」という感情と、「本当に取り返しがつかないかどうか」は別の話です。冷静に状況を整理してみると、今の職場の中でも変えられることや、数年スパンで見ればプラスに転じる可能性が見えてくることもあります。この章では、「もう転職してしまった」という前提から、どう気持ちと行動を立て直していくかを一緒に考えていきます。
まずは、今感じているモヤモヤを書き出して、何に対して後悔しているのかをはっきりさせるところから始めましょう。そのうえで、「今の職場でできること」と「外に出る選択肢」を整理し直していくと、「自分にはもう何もできない」という感覚から少しずつ抜け出しやすくなります。
3-1. 「本当に取り返しがつかないのか」を冷静に整理する
後悔の気持ちが強いときは、つい「すべてが失敗だった」と感じてしまいます。けれども、まずやってみてほしいのは、事実と感情を分けて紙に書き出すことです。「給料が下がった」「仕事内容が合わない」「人間関係がつらい」など、起きていることを箇条書きにし、その横に「どう感じているか」を書いてみてください。
書き出してみると、なかには時間が解決してくれるものや、「部署が変われば状況が変わりそうなもの」も混ざっているはずです。たとえば、「今の部署は忙しすぎる」という悩みは、異動によって改善する余地があります。一方で、「退職金が減りそう」という点は、制度上は簡単に変えられないかもしれません。このように、性質の違う後悔を全部ひとまとめにしてしまうと、出口が見えなくなってしまいます。
次に、今の不満を「短期(1年以内)」「中期(数年)」「長期(10年以上)」の時間軸で見てみるのもおすすめです。短期的にはつらくても、中期・長期で見れば経験やスキルになることもありますし、その逆に、放っておくと長期的なダメージになりそうな問題もあります。「今のつらさ」と「将来まで続く影響」を切り分けることで、優先して手を打つべきポイントが見えてきます。
そして最後に、「本当に取り返しがつかないこと」と「考え方や行動次第でまだ変えられること」を分けてみましょう。たとえば、「すでに下がってしまった年収」自体はすぐに元に戻らないかもしれませんが、「今後の昇給や昇進でどこまで挽回できそうか」を考える余地はあります。こうした整理をすることで、「すべてが終わった」という感覚から少し距離を置きやすくなります。
3-2. 異動・配置転換・業務調整など職場内でできる打ち手
状況整理ができてきたら、次は今の組織の中でできることを一つずつ検討していきましょう。公務員組織には、異動・配置転換・業務内容の調整など、外からは見えにくい選択肢が意外とあります。「もう辞めるしかない」と考える前に、使えるカードがないかを確認しておくのはとても大事です。
たとえば、仕事内容が合わない場合には、上司に業務の進め方や分担を相談してみる、人事担当に異動希望を伝える、といったアクションが考えられます。「この仕事が嫌です」とストレートに言うのではなく、「○○の業務にはやりがいを感じるが、□□の業務は負担が大きいので、進め方を一緒に考えてほしい」と、具体的に相談してみると話が進みやすくなります。
人間関係のストレスが大きい場合も、いきなり職場を変える前に、距離の取り方や関わり方を見直す余地があります。感情的なやり取りを避ける工夫をしたり、信頼できる同僚や別部署の先輩に話を聞いてもらったりするだけでも、受け止め方がかなり変わることがあります。「自分が悪い/相手が悪い」と決めつける前に、できる範囲で環境との付き合い方を調整してみるイメージです。
後悔の種類別・今できる現実的な選択肢一覧
代表的な後悔のパターンごとに、「今の職場内で取りうる打ち手」をざっくり整理すると、次のようになります。
| 後悔の主な理由 | 今の職場でできる現実的な打ち手 |
|---|---|
| 給料・手当が想像より低かった | 昇任・資格取得による昇給の道を確認する/副業の可否を確認する(認められる範囲で) |
| 仕事内容が合わない・きつい | 上司に業務量や内容の相談をする/異動希望を正式に出す/得意分野の仕事を増やせないか提案する |
| 人間関係がしんどい | 直接対立を避ける関わり方を工夫する/信頼できる上司・同僚に相談する/メンタル面の相談窓口を利用する |
| 残業・働き方がきつい | 業務の優先順位や進め方を見直す/チームとして負担の偏りを見直してもらう/休暇の取り方を整える |
| 将来のキャリアが描けない | 上司にキャリアの相談をする/他部署や別の分野への異動を検討する/外の世界の情報収集を始める |
この表に自分の状況を書き足しながら、「今の職場でも試せること」を探してみてください。いきなり大きく環境を変えるのではなく、小さな調整を積み重ねるだけで、日々のしんどさが和らぐこともよくあります。
もちろん、すべてがうまくいくとは限りません。それでも、「できる範囲のことは試した」と思えるだけで、後で振り返ったときの納得感は大きく変わります。そのうえで、「やはり自分には合わない」という結論に至ったなら、次のステップを検討する準備が整ったと考えてよいでしょう。
3-3. 再転職を視野に入れるときの考え方と準備ステップ
今の職場でできる工夫を試しても、どうしても状況が改善しないこともあります。そのときは、再転職を含めた次の選択肢を視野に入れることも、一つの現実的な判断です。「また失敗したらどうしよう」と思うのは自然なことですが、一度経験しているからこそ、前より落ち着いて準備できる部分もあります。
まず意識しておきたいのは、「前回の転職がすべて間違いだった」と決めつけないことです。転職を通じて得た経験や気づきは、次のキャリアを考えるうえでの貴重な材料になっています。「こういう仕事は自分に合う」「こういう上司とは相性が良くない」など、以前より自分のことをよく分かっているはずです。その学びを次に活かせれば、同じ失敗を繰り返す可能性はぐっと下がります。
再転職を検討するなら、次のようなステップで準備を進めていくと、気持ちが少し軽くなります。
- 自分の棚卸しをする
これまでの仕事内容・身についたスキル・得意だった場面や役立った経験を書き出し、「自分には何ができるのか」を整理します。同時に、「こういう環境は避けたい」という条件も明確にしておきましょう。 - 情報収集の幅を広げる
公務員から公務員だけでなく、民間も含めてどのような選択肢があるかを調べてみます。いきなり応募しなくても、求人情報を眺めたり、キャリア相談を利用したりするだけでも、「外の世界」のイメージが具体的になります。 - タイミングと準備期間を決める
いつまでにどの程度情報を集め、いつごろまでに決断するか、ざっくりとしたスケジュール感を持っておきます。「今すぐ決めなければならない」と思うと余計につらくなるので、「この半年は情報収集と準備の期間」と決めてしまうのも一つの方法です。
再転職を考えることは、決して「負け」ではありません。むしろ、自分や家族にとってより良い働き方を模索する前向きな行動だと捉えてみてください。今の職場でやれることをやり切ったうえで、それでも別の道を選ぶのであれば、その決断はきっと以前よりも落ち着いて受け止められるはずです。
ポイント
- すでに転職して後悔していても、「本当に変えられないこと」と「まだ動かせること」を切り分ける
- 異動・配置転換・業務調整など、今の職場内で使えるカードを一度洗い出す
- 再転職を視野に入れるときは、経験からの学びを棚卸しし、焦らず準備のステップを踏む
4. 公務員から公務員への転職か、民間への転職か迷うときの判断軸
公務員から公務員に転職するのか、それとも民間に出るのかで迷ったときに、「安定・収入・やりがい・家族の生活」の4つの軸で整理し、自分に合った選択をしやすくするための章です。
「今の職場はつらいけれど、公務員から公務員に移るべきか、それとも思い切って民間に出るべきか…」と悩むとき、頭の中がぐるぐるして決めきれなくなりがちです。どちらにもメリットとデメリットがあるからこそ、情報を集めれば集めるほど不安が増えてしまう、という人も多いでしょう。
こういう場面では、「どちらが正解か」ではなく、自分にとって何を優先するかをはっきりさせることが大切です。安定した収入や身分を最重視するのか、収入が変動してもやりたい仕事を選びたいのか、家族の生活やライフプランを最優先したいのか…。価値観によって、選んで後悔しにくい道は変わってきます。
この章では、まず「安定・年収・やりがい」の優先順位を決めるところからスタートし、その後で公務員から公務員/公務員から民間の違いをざっくり比較していきます。最後に、家族や将来設計の視点をどう織り込むかを整理し、「自分なりの答えの出し方」を一緒につくっていきましょう。
4-1. 安定・年収・やりがいの優先順位を決める
最初にやってみてほしいのは、紙に大きく「安定」「年収」「やりがい」と書いて、自分にとっての優先順位をつけてみることです。もちろん、どれも大事ですし、本音を言えば全部ほしいものばかりです。それでもあえて順位をつけることで、「今の自分が一番守りたいもの」が見えやすくなります。
たとえば、「安定>年収>やりがい」という人は、公務員から公務員への転職や、今の職場での工夫・異動など、「公的な枠組みの中での選択」が向いているかもしれません。逆に、「やりがい>年収>安定」という人は、民間や別の業界も含めて検討したほうが、自分らしく働ける可能性が高くなります。
ここで重要なのは、「世間一般ではこう言われているから」ではなく、自分と家族にとってどうかを基準にすることです。たとえば、独身で身軽な時期と、子育て真っ最中の時期では、同じ人でも優先順位が変わります。ライフステージごとに「今はここを一番大事にしたい」と決め直してもかまいません。
優先順位を決めたら、それぞれについて「どこまでなら妥協できるか」も書き添えておきましょう。たとえば、「安定は手放したくないが、年収が多少下がってもやりがいがあるなら許容できる」「やりがいはほどほどでよいから、一定以上の年収とワークライフバランスを守りたい」など、具体的な言葉にしておくと、求人や転職先を見るときの判断がぐっとラクになります。
最後に、「今の職場でその優先順位を満たすことは本当に不可能なのか」も、一度落ち着いて考えてみてください。異動や働き方の工夫でかなり近づけるなら、転職以外の選択肢も候補に残しておいたほうが、結果的に後悔は少なくなります。それでもなお、「今の組織ではどう頑張っても届かない」と感じるなら、外に目を向けるタイミングかもしれません。
4-2. 家族・生活と将来設計から考えるキャリアの選び方
次に考えたいのは、家族や生活、将来設計とのバランスです。自分一人の人生なら多少の無茶もできますが、パートナーや子どもがいる場合、仕事の選択はそのまま家族の暮らしに影響してきます。どの選択が正解かは家庭によって違うので、「うちの家族にとってベストに近いのはどこか」という視点で見ていきましょう。
ここでは、ざっくりと「公務員→公務員」と「公務員→民間」を比較しながら、どんな違いが出がちかを整理してみます。
公務員→公務員/公務員→民間のざっくり比較表
| 観点 | 公務員→公務員 | 公務員→民間 |
|---|---|---|
| 安定性 | 身分・制度面の安定は維持しやすい | 会社や業界によって大きく変わる |
| 年収の伸び | 大きなアップは期待しにくいが極端なダウンも少なめ(例外あり) | 上がる可能性も下がるリスクも大きい |
| 働き方 | ルールが比較的明確で読みやすい | 裁量権が増える代わりに負荷も増えやすい |
| キャリアの幅 | 公的分野での経験を深めやすい | 業界によっては専門性が大きく広がる |
| 家族への影響 | 生活リズムの変化は比較的小さめ | 勤務地・時間・収入が大きく変わることも |
この表を見ながら、自分の家庭に当てはめて考えてみてください。たとえば、「子どもの進学や住宅ローンのことを考えると、当面は収入と勤務時間の予測しやすさを優先したい」という場合は、公務員から公務員の範囲での選択が合いやすいかもしれません。一方、「子どもが独立したので、これからは自分のやりたいことを優先したい」と考えるタイミングでは、民間も含めて視野を広げるのも一つの選択肢です。
また、将来のライフプランをざっくりでいいので書き出してみるのもおすすめです。何歳ごろに子どもの進学や親の介護がありそうか、いつまでに住宅ローンを返したいかなどを並べてみると、「今から数年間はあまりリスクを取りたくない」「このタイミングならチャレンジしてみたい」といった感覚が見えてきます。
最後に大切なのは、「どの選択をしても、すべてが完璧にうまくいくわけではない」と認めることです。どの道にも良い面と大変な面があり、どこかで何かを手放す必要が出てきます。そのうえで、自分と家族が納得して選べたかどうかが、後悔の大きさを左右します。ひとりで抱え込まず、パートナーや信頼できる人とも話し合いながら、「うちにとってのベストに近い答え」を一緒に探してみてください。
ポイント
- 「安定・年収・やりがい」の優先順位を自分の言葉で決める
- 家族の状況やライフプランに照らして、公務員→公務員/公務員→民間の違いを比較する
- どの選択も完璧ではない前提で、「自分と家族が納得して選べるか」を判断基準にする
5. 公務員から公務員に転職する前にやっておきたい準備・情報収集
応募先をよく知らないまま決めてしまうとギャップや後悔につながりやすいため、事前に情報収集の手順と質問の仕方、そして「逃げ」に見えない志望動機の作り方を押さえ、落ち着いて判断できる状態をつくる章です。
「とにかく今の職場を変えたい…」と感じているときほど、準備や情報収集はおろそかになりがちです。しかし、事前の準備が薄い転職ほど、後から『聞いておけばよかった』と感じる可能性が高くなるものです。逆に言えば、少し丁寧に下準備をしておくだけで、転職後の満足度は大きく変わります。
とはいえ、どこから手をつければ良いのか分からず、「とりあえず受けてから考えよう」となってしまうこともありますよね。そこでこの章では、応募前に押さえたい情報収集の4ステップと、面接で「なぜこの公務員なのか」をしっかり伝えるためのポイントを整理します。「やみくもに調べる」のではなく、「必要なことから順に押さえる」イメージで読み進めてみてください。
準備をしながら、自分の中で条件や優先順位が変わることもあります。それ自体は悪いことではなく、考えが変わるからこそ、より納得のいく選択に近づけるともいえます。途中で「やっぱり今は動かない」という結論になっても、それは立派な前向きな決断です。
5-1. 応募先を見極める情報収集のコツと質問例
応募先を冷静に見極めるためには、「求人票に書いてあること」だけでなく、現場の雰囲気や運用の実態に近い情報を集めることが大切です。とはいえ、限られた時間の中であれもこれも調べようとすると、かえって疲れてしまいます。そこで、無理なく進められるように、情報収集を4つのステップに分けて整理してみましょう。
まずは、公的な情報で大きなミスマッチがないかを確認し、そのうえで口コミや現場の声を補うイメージです。公務員の場合、公式の説明と現場の肌感覚の間にギャップが生じやすいので、どちらか片方だけで判断しないことがポイントになります。
転職前の情報収集4ステップ
- 公式情報で基本条件を確認する
募集要項・採用パンフレット・自治体や機関のホームページなどで、給与・手当・勤務時間・異動範囲など制度として明示されている情報を押さえます。ここでは細かいところまで深追いしすぎず、「応募する価値があるかどうか」の大枠を見ていきましょう。 - 議会・広報などから組織の方向性をつかむ
自治体であれば議会だよりや広報紙、首長のメッセージなどを眺めると、今どんな政策に力を入れているかが見えてきます。病院や大学などであれば、取り組んでいるプロジェクトや方針を確認し、「自分が関わりたいテーマと重なるか」を考えてみてください。 - 可能ならOB・OGや現役職員の話を聞く
説明会やOB訪問、知人経由のつながりなどで、実際に働いている人の声を聞けると理想的です。「残業や異動の実態」「上司との距離感」「人事評価の雰囲気」など、求人票には出てこない部分を中心に質問してみると、具体的なイメージがつきやすくなります。 - 自分の条件と照らし合わせて整理する
集めた情報をもとに、「年収」「働き方」「人間関係」「将来のキャリア」など、自分が大事にしたい観点ごとに◯/△/×をつけて整理します。こうすると、「なんとなく良さそう」ではなく、「この点は合うが、この点は妥協が必要」という見え方になり、判断しやすくなります。
情報収集の際に役立つ質問例も、いくつか押さえておきましょう。たとえば、説明会や面接で聞きやすいのは次のような質問です。
- 「最近力を入れている取り組みや、今後重視していきたい分野はどのあたりでしょうか?」
- 「若手職員がどのような場面で活躍していますか? 具体的な事例があれば教えてください」
- 「繁忙期と落ち着いている時期の働き方の違いを教えていただけますか?」
ポイントは、「残業は多いですか?」とストレートに聞くのではなく、仕事の流れや繁忙期を切り口にして実態をイメージする質問に言い換えることです。また、「こういう働き方ができる職場を探している」という自分の希望も交えながら質問すると、双方のミスマッチに早めに気づきやすくなります。
5-2. 面接・志望動機で「なぜその公務員なのか」を伝えるポイント
公務員から公務員への転職では、面接で「なぜ同じ公務員なのか」「なぜこの自治体・機関なのか」を問われることが多くなります。このとき、「今の職場が嫌だから」という理由だけが前面に出てしまうと、どうしても“逃げ”の印象を与えてしまいがちです。
もちろん、今の職場でつらい思いをしていること自体は悪いことではありません。ただし、志望動機として伝える際には、「何から逃げたいのか」ではなく「これから何を実現したいのか」に焦点を移すことが大切です。そのためには、ネガティブな理由を一度受け止めたうえで、ポジティブな言葉に言い換える準備をしておきましょう。
避けたいNG志望動機とOK志望動機の言い換え例
よくあるパターンを、NGとOKの形で並べてみます。自分の状況に近いものがあれば、参考にしながら言葉をアレンジしてみてください。
| NGに見えやすい言い方 | OKに言い換えた例 |
|---|---|
| 「今の職場は残業が多くてつらいので、もう少し楽な環境で働きたいです」 | 「これまでの経験から、メリハリのある働き方の中で成果を出すほうが力を発揮しやすいと感じています。御庁の取り組みは、業務改善やチームでの仕事の進め方に力を入れている点に魅力を感じました」 |
| 「人間関係がよくないので、雰囲気の良い職場に行きたいです」 | 「前職では、意見の食い違いから苦労した経験もありました。その中で、目的を共有しながら協力していくことの大切さを強く感じています。御庁の○○の取り組みでは、部門を越えた連携を重視されており、自分もその一員として貢献したいと考えています」 |
| 「今の仕事はやりがいがなく、別のことをやりたいです」 | 「現職では主に△△業務を担当してきましたが、以前から□□の分野に関心があり、住民の方と接しながら施策を形にしていく仕事に携わりたいと考えるようになりました。御庁が進めている○○のプロジェクトに、これまでの経験を活かせると感じ志望しました」 |
このように、まず自分の本音をNGの形で書き出してから、相手の立場から見ても納得しやすい形に言い換える練習をしてみると、志望動機の質がぐっと上がります。大事なのは、「今の職場が嫌だから」だけで終わらせず、「だからこそ、こういう環境でこういう貢献をしたい」という一歩先の視点をセットで伝えることです。
面接全体を通して意識したいのは、「自分のキャリアを自分で選び取っている姿勢」です。「たまたま空いていたから応募した」のではなく、「自分の経験・価値観と、応募先の方向性がどのようにつながるのか」を具体的に説明できると、説得力が増します。
ためしに、次の3つを1枚の紙に書き出してみてください。
- これまでの仕事で、やりがいを感じた経験
- これから身につけたいスキルや関わりたい分野
- 応募先の自治体・機関で、特に興味を持っている取り組み
この3つが自然につながるようにストーリーを組み立てられれば、「なぜその公務員なのか」を自信を持って語れる志望動機に近づきます。完璧な言葉でなくても構いません。自分の言葉で、少しずつ形にしていくことが何より大切です。
ポイント
- 情報収集は「公式情報→組織の方向性→現場の声→自分の条件整理」の4ステップで進める
- 質問は、残業や人間関係を直接聞くより、仕事の流れや具体的な場面を切り口にする
- 志望動機は「今から逃げたい理由」ではなく「これから実現したいこと」を中心に言い換える
6. Q&A:公務員から公務員に転職して後悔しないためのよくある質問
公務員から公務員に転職するときに多くの人が気にする「年収」「退職金」「出戻り」「相談先」「年齢ごとのリスク」について、よくある質問と答えをまとめ、不安を具体的に整理できるようにする章です。
ここまで読んで、「なんとなく分かってきたけれど、自分の場合どう考えればいいのかまだ不安」という気持ちが残っているかもしれません。そこでこの章では、実際によく出てくる質問をピックアップし、できるだけ具体的にお答えしていきます。
細かい条件やルールは自治体や機関によって違うため、ここでの回答はあくまで「考え方の目安」として読んでみてください。そのうえで、気になったポイントは必ず応募先に確認し、自分のケースに当てはめて判断していくことが大切です。
6-1. Q. 公務員から公務員に転職して年収が下がることは多い?
A. 年収が下がる可能性は十分あります。とくに、地域手当や住居手当、残業代の付き方が変わると、基本給が同じくらいでも手取りは大きく変わります。ボーナスの支給月数や評価の反映度合いも組織によって違うため、「同じくらいかな」と思い込みで判断するのは危険です。
一方で、残業時間が減ることで実質的な時給が上がるケースもあります。年収が多少下がっても、心身の負担が減る・家族との時間が増えるなど、他のメリットが上回るかどうかも大事な判断材料です。「いくらまでなら許容できるか」を先に決めたうえで、候補先の収入イメージをできる範囲で確認していくとよいでしょう。
6-2. Q. 勤続年数は転職先でリセットされて退職金が大きく減りますか?
A. 勤続年数の扱いは組織ごとのルール次第です。前歴として一部が評価されるところもあれば、原則として新規採用と同じ扱いになるところもあります。一般的には、「同じ系統の公務員かどうか」「職種や採用区分がどうか」によって取り扱いが変わることが多いと考えられます。
ただし、若いうちの数年と、50代以降の数年では退職金への影響の大きさが違います。自分が転職を考えている年齢と、今後どれくらい働くつもりかによっても判断は変わってきます。「多少減っても納得できるのか」「老後の生活設計に支障が出ないか」をざっくりでもイメージしたうえで、人事担当への確認も含め、慎重に考えてみてください。
6-3. Q. 一度転職したあとに元の自治体・職種に戻ることはできますか?
A. まったく不可能とは限りませんが、基本的には簡単ではないと考えておいたほうが無難です。同じ自治体でも、採用区分や募集要件が変わっている場合、再度受験し直す必要があったり、年齢制限に引っかかってしまったりする可能性があります。「困ったら戻ればいいや」という前提で転職するのは、リスクが高いと言えるでしょう。
ただし、「元の分野に近い別の自治体」や「前職の経験を評価してくれる関連機関」に移る、といった形で“完全な出戻り”ではなく“近い領域への再チャレンジ”を叶えている人もいます。戻ることを前提にするのではなく、「戻れなかったとしても、その後のキャリアをどう描くか」をセットで考えておくと、決断への納得感が高まりやすくなります。
6-4. Q. 「もう辞めたい」と感じたときはどこに相談すべき?
A. いきなり退職届を書く前に、信頼できる相談先を確保することがとても大切です。まずは、職場内で話しやすい上司や先輩、同僚がいれば、悩みを整理する意味でも一度話を聞いてもらうとよいでしょう。同じ組織の中でも、部署が違えば見える景色が変わることも多いからです。
もし職場内で話しづらい場合は、家族や友人、外部の相談窓口やカウンセリングを頼るのも選択肢です。感情的に追い込まれているときほど視野が狭くなりやすいため、「自分の状態を客観的に見てくれる人」を持っておくと安心です。転職エージェントなどに相談するのも一つですが、「今すぐ転職ありき」ではなく、現職での選択肢も含めて一緒に考えてくれる相手かどうかを見極めるのがポイントになります。
6-5. Q. 20代と40代では公務員から公務員への転職リスクは変わりますか?
A. 年齢によって、感じるリスクの種類は変わります。20代であれば、経験年数がまだ短く、多少の回り道があっても挽回しやすい一方で、「そもそも公務員を続けるかどうか」という選択肢も含めて広く考える余地があります。学び直しや別業界へのチャレンジを視野に入れても、時間的な余裕は比較的大きいと言えるでしょう。
40代になると、家族や住宅ローン、老後資金など、守るべきものが増えているケースが多くなります。そのぶん、収入や退職金への影響を慎重に見極める必要が出てきますが、逆に「これまでの経験を活かして、よりフィットする組織に移る」という発想も持ちやすくなります。年齢が高いほどリスクが大きい、という単純な話ではなく、「何を守り、何を変えたいのか」を年代ごとに整理することが大切です。
ポイント
- 年収・退職金・出戻りの可能性は「一般論+自分の条件」でセットで考える
- 「もう辞めたい」と思ったときほど、職場内外の相談先を確保してから動く
- 年齢によるリスクの違いは、「守るもの」と「これから挑戦したいこと」のバランスで整理する
7. まとめ
同じ公務員への転職でも、条件や文化の違いで後悔が生まれやすいため、「感情だけで決めない」「5つのチェックポイントで見える化する」「今の職場内でできる工夫も含めて選ぶ」ことが、納得できるキャリア選択につながることを振り返る章です。
7-1. 全体の振り返りと押さえておきたい前提
ここまで見てきたように、公務員から公務員に転職するのは、一見「安全そう」に見えますが、実際には年収や昇進、働き方や人間関係など、思っている以上に違いが出やすい世界です。「公務員ならどこも同じ」という前提で動いてしまうと、後からギャップに驚き、「前のほうがまだよかったかもしれない」と感じてしまうこともあります。
一方で、今の職場で我慢を続ければいいかというと、決してそうとも限りません。心身の負担が大きすぎる環境や、自分の価値観と大きくズレた職場に無理をして居続けると、体調や自信を大きく損なってしまうこともあります。大切なのは、「どちらが正しいか」ではなく、「自分にとってどちらがより良いか」を冷静に見ていく姿勢です。
そのための土台になるのが、「後悔しやすい理由」を知ったうえで、5つのチェックリストで自分の条件を言語化することでした。お金・昇進・働き方・人間関係・退職金といった観点で、自分が何を大事にしたいのか、どこまでなら許容できるのかを書き出しておくと、感情に振り回されずに判断しやすくなります。
また、すでに転職したあとで「失敗したかも」と感じている場合も、すべてが手遅れというわけではありません。異動や業務調整など今の職場でできる選択肢と、再転職も含めた外の選択肢を並べ直すことで、「自分はまだ動ける」と思える感覚を取り戻しやすくなります。
7-2. 今後も意識したいポイント
これから先も、公務員として働くなかで迷う場面はきっと何度か訪れます。そのたびに、一から考え直すのは大変なので、判断の軸になるポイントをいくつか心にメモしておくと安心です。
ひとつは、決断の前に「転職でしか解決できない悩みかどうか」を確認することです。給与水準や退職金制度など、組織を変えないと動かしにくいものもあれば、部署異動や業務の工夫で改善できるものもあります。すべてを「辞めるか・辞めないか」の二択にしてしまうと、余計に追い込まれてしまいます。
もうひとつは、「安定・年収・やりがい・家族の生活」のバランスを定期的に見直すことです。ライフステージや健康状態が変われば、優先したいものも変わります。数年に一度で良いので、紙に書き出して「今は何を一番大事にしたいか」を整理しておくと、選択のブレが少なくなります。
そして、迷ったときほど一人で抱え込まず、信頼できる人や外部の相談窓口を頼ることも大切です。誰かに話すことで、自分の考えが整理され、「本当は何を不安に思っているのか」が見えてくることがよくあります。弱音を吐くことは悪いことではなく、より良い選択のための大事なステップだと考えてみてください。
7-3. 今すぐできるおすすめアクション!
ここまで読んで、「大事なのは分かったけれど、結局何から始めればいいのか迷う」という気持ちもあると思います。そこで最後に、今日から無理なく取り組める小さなアクションをまとめました。すべてやらなくても大丈夫なので、「これならできそう」と感じるものから試してみてください。
- 今の不満と満足を書き出す
紙やスマホのメモに、今の職場で「つらいこと」と「良いと感じていること」をそれぞれ3つずつ書いてみましょう。感情を整理することで、本当に変えたい部分が見えやすくなります。 - 5つのチェックリストで自分の条件を可視化する
年収・昇進・働き方・人間関係・退職金の5項目について、「譲れない条件」と「妥協できる条件」を箇条書きにしてみます。これが、求人や転職先を選ぶときのマイルールになります。 - 職場内でできる工夫を1つだけ試す
いきなり転職のことを考える前に、業務の進め方を見直す、上司に相談してみるなど、今日からできる小さな一歩を一つだけ実行してみましょう。それだけでも、状況が少し動くことがあります。 - 公式情報と現場の声を1つずつ調べてみる
気になっている自治体や機関があれば、公式サイトや広報をざっと眺め、可能なら現役職員やOB・OGの声も探してみてください。一方的な情報だけで判断しない癖をつけておくと、後悔しにくくなります。 - 家族や信頼できる人と「今後の3年」を話してみる
転職するかどうかだけでなく、「3年後にどうなっていたいか」を一緒に話してみましょう。収入・働き方・住む場所などを共有しておくと、決断に伴う不安を分け合えるようになります。 - 「転職しない」という選択肢も一度真剣に考えてみる
あえて、「転職せずに今の職場で続ける場合に、何を変えれば少し良くなるか」を考えてみてください。その選択肢もちゃんと検討したうえで、それでも動くと決めたなら、後悔はぐっと小さくなります。
どの選択をしても、100点満点の未来が保証されるわけではありません。それでも、自分なりに情報を集めて考え、納得して選んだ道は、時間が経ってから振り返っても受け止めやすいものになります。焦らなくて大丈夫です。できるところから少しずつ、自分と家族にとって「後悔の少ない選択」を一緒につくっていきましょう。
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