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人手不足なのになぜ雇わない?会社の本音と“本当にヤバい会社”の見分け方

人手不足なのになぜか人を雇わない会社の「雇えない・雇わない・定着しない」という本音を整理し、“本当にヤバい会社”のサインと、自分の身を守るための具体的な判断基準と行動ステップをわかりやすく解説します。

毎日バタバタで残業続きなのに、「人を増やす気配がまったくない…」。
そんな職場にいると、「うちの会社、人手不足なのになぜ雇わないんだろう」「このまま働き続けて大丈夫かな」と不安になってしまいますよね。上司に訴えても、「今は余裕がない」「もう少し様子を見よう」で終わってしまい、モヤモヤだけがたまっていく人も多いはずです。

ただ、一口に「人手不足なのに雇わない会社」といっても、背景にはいろいろな事情があります。お金がなくて本当に雇えない会社もあれば、利益を優先してあえて雇わない会社、採用しても環境が悪くて人が定着しない会社もあります。会社の本音や事情をざっくりでも理解しておくと、「ただのブラックだから全部ダメ」と決めつけるのではなく、自分の状況を少し冷静に見られるようになります。

とはいえ、どんな事情があったとしても、あなたの心と体がボロボロになってまで支える必要はありません。このまま残って良いのか、それとも転職など外の選択肢を考えた方がいいのかは、会社の状態だけでなく、あなた自身の健康・生活・スキルやキャリアも含めて考えていくことが大切です。「しんどいけれど、何から手を付ければいいか分からない…」という状態から、一歩ずつ抜け出せるように整理していきましょう。

この記事では、まず「人手不足なのになぜか人を雇わない会社の3パターン」を解説し、そのうえで“本当にヤバい会社”のチェックリストを用意します。さらに、「残る/辞める」の判断基準や、今の職場にいながらできる備え・動き方も具体的なステップで紹介します。読み終えるころには、「自分の会社はどのタイプか」「これから何をしていけばいいか」が、今よりはっきり見えてくるはずです。

この記事はこのような人におすすめ!

  • 人手不足の職場で働きながら「なぜ新しい人を雇わないの?」と疑問や不満を感じている人
  • いまの会社がブラックなのか、ギリギリ踏ん張っていいのか、判断材料が欲しい会社員・パート・アルバイトの人
  • 上司や経営陣に人手不足を訴えても動いてもらえず、これ以上どうしたらいいか分からなくなっている人
  • 転職を考え始めているけれど、「本当に辞めていいのか」「次の職場も同じだったら」と不安を感じている人
  • 中小企業の経営者・管理職として、人手不足でも採用に踏み切れない一方で、現場の疲弊も気になっている人

目次 CONTENTS 

1. 「人手不足なのになぜ雇わない?」というモヤモヤをまず整理する

人手不足なのになぜか人を雇わない会社にも「雇えない・雇わない・定着しない」という事情の違いがあります。感情だけで判断せず、自分の職場がどのパターンに近いのか整理することで、これから取るべき行動を冷静に考えやすくなります。

人手不足で毎日クタクタなのに、新しい人を入れる気配がないと「どうして?」「私たちの頑張りを分かっていないのでは」と感じてしまいますよね。そんなとき、多くの人はまず「会社がケチだから」と考えがちですが、本当の理由はそれだけとは限りません。会社の事情を一度整理してみることで、モヤモヤを少し客観的に見られるようになります。

ただし、事情があるからといって、あなたが無制限に我慢し続ける必要はありません。大切なのは「この会社の状況」と「自分の心身の状態」は別物だと切り分けて考えることです。「人手不足なのになぜ雇わないのか」を理解しつつ、「じゃあ自分はどうするか」を考える準備を、この章で整えていきましょう。

ここではまず、人手不足が当たり前になりつつある背景と、「人手不足=すぐ人を増やすべき」とは限らない理由をおさえます。そのうえで、「この職場で頑張るのか」「別の道を探すのか」を考える前に知っておきたい基本の考え方を、一緒に整理していきます。

1-1. 人手不足なのになぜか人を雇わない会社が増えている背景

最近はニュースや身近な会話でも、「どこも人手不足だね」という言葉を聞くことが増えました。少子高齢化や働き方の変化などが重なり、そもそも働く人の数が足りない状況になっているからです。その結果、あなたの会社だけでなく、いろいろな業界で「人が足りないのに仕事は減らない」という状態が続いています。

一方で、会社にとって人を雇うことは、単に一人増えるという話ではありません。新しい人を採用すると、給与だけでなく社会保険や教育のコストも継続的にかかります。景気や売上の先行きが不透明な中で、「今増やして本当に大丈夫なのか」と慎重になっている会社も少なくありません。

また、求人を出しても、すぐに希望どおりの人が見つかるわけではないという事情もあります。応募自体が少なかったり、応募があっても条件や働き方が合わずに不採用になったりすることも多いものです。その結果、「人手不足なのに、採用のハードルだけが上がっている」というアンバランスな状態が生まれています。

さらに、「人を増やす前に、今いるメンバーでなんとかできないか」と考える経営者や管理職も多いです。たとえば、残業やシフト調整で一時的に乗り切ろうとしたり、業務の効率化や外注でごまかしながら続けてしまうケースもあります。現場から見ると「なぜ雇わないの?」としか思えませんが、会社側は「もう少し様子を見たい」と考えていることが少なくないのです。

このように、人手不足なのになぜか雇わない会社が増えている背景には、社会全体の変化と、会社ごとの事情が複雑に絡んでいます。ただ、どんな事情があったとしても、現場の人にばかり負担が集中している状態は健全とは言えません。背景を知ったうえで、自分の職場がどう動いているのかを冷静に見ていくことが大切です。

1-2. 「人手不足=すぐ採用すべき」とは限らない理由

現場の感覚としては、「人が足りないなら、早く増やしてほしい」と思うのが当然です。しかし、会社の立場から見ると、「人を増やすこと自体が大きなリスク」と感じられる場面もあります。売上が安定していない、先行きが読みにくい、取引先の動きが不安定といった状況では、「今はギリギリで回しておきたい」という判断になりやすいのです。

また、過去に採用で痛い目を見た会社ほど慎重になります。たとえば、せっかく採用した人がすぐ辞めてしまい、採用コストと教育コストだけが残った経験があると、「もう同じ失敗はしたくない」と考えるのは自然です。その結果、「本当は人を増やしたいけれど、採用するのが怖い」という矛盾した状態にはまり、動けなくなってしまうこともあります。

さらに、「人を増やす前に、業務を見直すべきだ」と考える人もいます。無駄な仕事や、やり方を変えれば楽になる仕事を見直さないまま人だけ増やすと、かえって管理が難しくなったり生産性が下がったりすることもあるからです。本来は業務の棚卸しと採用をセットで考えるべきですが、それができずに「とりあえず今の人数で頑張ろう」という方向に傾いてしまう会社も多いのが実情です。

こうした理由から、「人手不足=すぐ採用すべき」という単純な問題ではないことが分かります。ただし、会社に事情があるからといって、現場の負担が限界を超えても放置して良いわけではありません。重要なのは、「会社が慎重なのはなぜか」と「現場の声をどう扱っているか」の両方を見ることです。この視点を持つと、自分の会社が「慎重だけど話は聞いてくれる」のか、「ただ放置しているだけ」なのかが見えやすくなります。

1-3. 雇わない会社にいるとき、最初に押さえたい考え方

人手不足なのに人を雇わない会社にいると、どうしても「私がもっと頑張らなきゃ」と自分を追い込みがちです。責任感が強い人ほど、自分さえ我慢すれば周りに迷惑をかけないと思ってしまいますが、無理を続けると心身を壊してしまう可能性があります。まずは、「自分の限界ラインは自分で守っていい」と認めるところから始めてみてください。

次に意識したいのは、「会社の事情」と「自分の人生」は別だということです。会社には会社の都合があり、あなたにはあなたの生活や将来があります。会社の事情を理解しようとすること自体はとても大切ですが、その事情をすべて背負い込む必要はありません。「会社の問題」と「自分が抱え込んでいる問題」を整理して考えるだけでも、少し身軽になれます。

そのうえで、「この会社は本当に雇えない状況なのか」「あえて雇わないだけなのか」「人が定着しないだけなのか」を見極める視点を持つことが大切です。これを見分けるためのヒントが、次の章で紹介する3つのパターンです。どのパターンに近いかが分かると、「頑張るべきか、距離を取るべきか」の判断が少ししやすくなります。

最後に覚えておきたいのは、「今すぐ結論を出さなくてもいい」ということです。いきなり会社を辞めるか残るかを決めようとすると、不安ばかりが大きくなります。まずは情報を集めて整理し、自分の状態や選択肢を“見える化”することから始めてみましょう。その第一歩として、この章の内容を土台に、次の章以降で会社の本音や“ヤバいサイン”を一緒に確認していきます。

ポイント

  • 会社の事情と自分の心身・人生は切り分けて考える
  • 「雇えない・雇わない・定着しない」のどれに近いかを見極める
  • いきなり結論を出そうとせず、まず状況を整理することから始める

2. 人手不足なのになぜか雇わない会社の本音【3つのパターン】

「人手不足なのになぜ雇わない?」と感じる会社の裏側には、資金的に本当に雇えない会社・利益や効率を優先して雇わない会社・採用しても人が定着しない会社という3つのパターンがあります。それぞれの特徴を知ることで、自分の職場の“本音”を見抜きやすくなります。

人手不足なのになぜ雇わないんだろう」とモヤモヤしたとき、まず気になるのは会社の本音ですよね。実は、表向きの説明は同じでも、会社によって中身はまったく違います。ここでは、よく見られる3つのパターンに分けて、どんな考え方で人を増やさないのかを整理していきます。

大きく分けると、本当に雇う余力がない会社と、あえて人件費を増やしたくない会社、そもそも人が長く続かない会社の3つです。今の職場がどれに近いかイメージできると、「単なるケチなのか」「そもそも経営が危ないのか」「環境に問題があるのか」が見えてきます。ここを見誤ると、がんばるべきところで早まって辞めてしまったり、逆にもう限界なのに踏ん張り続けてしまったりするので注意が必要です。

この章では、それぞれのパターンの特徴と、現場目線から見たときに出やすいサインを紹介します。「あ、うちの会社はこれかも」と思えるところがあれば、後の章で出てくる危険サインのチェックリストと組み合わせて、より具体的に判断していきましょう。

2-1. 本当に「雇えない」会社:資金繰りや将来の見通しが苦しいケース

まず1つ目は、単純にお金の余裕がなくて「雇えない」会社です。売上が落ち込んでいたり、借入金の返済が重くのしかかっていたりすると、人を増やしたくても固定費を増やせません。経営側から見ると、1人採用することは毎月の支払いを長期で増やす決断なので、「ここで増やして、もし売上がさらに下がったら…」と足がすくんでしまうのです。

現場からは「忙しいから人を入れてほしい」と言いやすい一方で、社長や上司の頭の中には家賃・給与・仕入れ・返済などの支払いスケジュールがぎっしり並んでいます。こうした会社では、会議や朝礼で「売上が厳しい」「コストを抑えたい」といった話が頻繁に出たり、設備更新や備品購入が先送りにされることが多くなります。これは、「人を増やせる状態にすらなっていない」サインでもあります。

このタイプの会社は、経営陣も本当は人を増やしたいと考えていることが多いです。ただ、数字が追いつかないために、残業やシフト調整でなんとか回そうとしてしまう傾向があります。そのしわ寄せが、あなたを含む現場メンバーに集中してしまい、「なぜ雇わないの?」という不満につながっていきます。

もし自分の会社がこのパターンに近いと感じたら、「がんばればそのうち報われる」のか「そもそも立て直せる見込みが薄い」のかを見極めることが大切です。将来の投資の話がまったく出てこない、商品やサービスの魅力を磨く動きが見えないなど、“攻めの話”がほとんど聞こえてこない状態が続くなら、かなり慎重に様子を見る必要があります。

2-2. 意図的に「雇わない」会社:人件費と利益を最優先するケース

2つ目は、資金的な余裕はある程度あるのに、あえて人件費を増やしたくなくて「雇わない」会社です。こうした会社は、「少ない人数で高い利益を出す」ことを重視しており、できるだけ固定費を軽くしておきたいと考えています。決算書上の数字は悪くなくても、経営方針として「人を増やさない」を選んでいるパターンです。

このタイプの会社では、「人件費は最大のコスト」「人を増やす前に、まずは効率化」という言葉がよく出てきます。現場がどれだけ忙しくても、「もう少し様子を見よう」「工夫で乗り切れないか」と言われ続けることが多く、具体的な採用計画がなかなか示されません。売上が伸びても、現場の人数は変わらないのに、売上目標や業務量だけが積み上がっていく…という状態になりやすいのが特徴です。

また、このタイプの会社は、少人数で多くを回せる人を好むため、「できる人ほど仕事が集中する」傾向があります。あなたが真面目で責任感が強いほど、次々と新しい仕事を任されてしまい、「気づいたら何でも屋になっていた」ということも珍しくありません。その一方で、給与や評価がその負担増に見合っていないと、強い不公平感や消耗につながります。

意図的に雇わない会社がすべて悪いとは言えませんが、要注意なのは、現場の声をどこまで聞いてくれているかです。忙しさや限界を伝えたときに、「じゃあどう改善しようか」と一緒に考えてくれるのか、「みんな我慢している」「根性が足りない」で片づけられるのかで、健全さは大きく変わります。後者の場合、あなたがどれだけ頑張っても、構造的に負担が減らない働き方が続きやすいので、早めに対策を考えた方が安心です。

2-3. 雇っても「定着しない」会社:職場環境やマネジメントの問題

3つ目は、求人も出すし人も採用するけれど、すぐ辞めてしまって人手不足が続く会社です。このケースでは、会社としては雇う気があるのに、職場環境やマネジメントに問題があって、結果的に「人が定着しない仕組み」になってしまっています。求人広告には良いことが並んでいても、入ってみると現場の実態が違いすぎて、短期間で辞める人が多いパターンです。

こうした会社では、「また新しい人が入ったけど、すぐ見なくなった」「新人が続かないのが当たり前になっている」といった現象が頻繁に起こります。教える側の余裕がないために、教育が場当たり的になりがちで、「見て覚えて」「前にも言ったよね」で済まされてしまうことも多いものです。その結果、新人は自信をなくし、既存メンバーは「どうせまた辞めるんでしょ」とあきらめモードになってしまいます。

また、評価やコミュニケーションの仕組みが整っていないと、人によって負担や待遇の差が大きくなりやすいです。がんばっている人ほど押しつけられ、何となくサボっている人が許されているように見えると、「ここで長く働いても報われない」と感じるのは当然ですよね。こうした状態が続くと、新人だけでなく、中堅やベテランまで少しずつ職場を離れていく危険があります。

もし自分の職場がこのパターンに近いなら、「人が定着しないのは、自分の教え方だけの問題ではない」と知っておくことも大切です。もちろん、教え方を工夫する余地はありますが、制度や風土レベルでの改善が必要なことも多いからです。あなた一人の努力でどうにもならない部分まで背負い込んでしまうと、ゆっくりと消耗してしまいます。このあと出てくる“ヤバい会社”のチェックリストと合わせて、「これは組織全体の問題だな」と割り切る視点も持っておきましょう。

ポイント

  • 「雇えない・雇わない・定着しない」の3パターンで会社の本音を整理する
  • 売上や投資の話がなく、攻めの姿勢が見えない会社は要注意
  • 現場の声を聞くかどうか、定着しやすい仕組みがあるかが健全さの目安になる

3. “本当にヤバい会社”の見分け方チェックリスト

すべての「人手不足なのになぜか人材を雇用しない」会社が即ブラックとは限りませんが、放置すると危険なサインはいくつか共通しています。チェックリストで状態を見える化し、自分の会社が「要注意」なのか「赤信号」なのかを冷静に判断していきましょう。

人手不足なのになぜ雇わないの?」と感じても、会社側にはそれぞれ事情があります。ただ、どんな事情があっても、現場の人が心身をすり減らすほど働き続ける状態が当たり前になっているなら、黄色信号が点り始めていると考えてよいでしょう。まずは感情ではなく、具体的なサインに目を向けることが大切です。

とはいえ、少し忙しいだけで「すぐブラック認定」してしまうと、自分で自分の選択肢を狭めてしまいます。逆に、「どこもこんなものだろう」と思い込みすぎると、本当にヤバい状態に気づくのが遅れてしまうかもしれません。この章では、その中間を探るためのものさしとして、チェックリストを使っていきます。

ここで紹介するサインは、1つだけ当てはまるから即アウトというものではありません。複数が重なっているか、どれくらい長い期間続いているかがポイントになります。次の項目を読みながら、「うちの会社はどうかな?」と、できるだけ事実ベースで考えてみてください。

3-1. 要注意レベル:まだ立て直しの余地があるサイン

まずは、今すぐ転職サイトを開くレベルではないものの、「このまま放置すると危ないかも」という要注意レベルのサインから見ていきます。ここに当てはまる項目が多いほど、会社の体質や仕組みを見直す必要が出てきますが、動き方次第ではまだ改善の余地が残されている状態とも言えます。

たとえば、残業や休日出勤が恒常的に増えているのに、人員計画の話があいまいなままというのは、よくある要注意サインです。経営側は「しばらくの辛抱」と考えていても、現場としては「この“しばらく”はいつまで続くのか」が見えず、疲れと不安がたまっていきます。ここで、具体的な数字や期限の話が出てくるかどうかが、会社の本気度を見極めるポイントです。

また、退職者が出たときの対応も重要です。やむを得ない事情で辞める人もいますが、退職理由を振り返る場がなく、改善の話題も出ない場合は、同じことがくり返される可能性が高くなります。一方で、退職をきっかけに仕事の割り振りを見直したり、残ったメンバーへのフォローを考えたりしている会社であれば、まだ立て直そうとする意志があると受け取れるでしょう。

さらに、上司や経営陣とのコミュニケーションも、要注意レベルかどうかを判断する材料になります。人手不足や働き方の悩みを伝えたときに、きちんと話を聞こうとする姿勢があるかどうかはとても大きいポイントです。たとえすぐに完璧な解決策が出ないとしても、「現場の声をどう扱うか」に、その会社の将来性がにじみ出ます。

“本当にヤバい会社”かどうかを見極める10項目チェックリスト

以下の10項目について、当てはまるものの数を数えてみましょう。
「少し心当たりがある」程度でも、一度チェックを入れてみるのがおすすめです。

  1. 慢性的な長時間労働なのに、人員補充や業務見直しの具体的な計画が示されていない
  2. 退職者が出ても、理由の共有や振り返りの場がなく、表面的な説明だけで終わっている
  3. 売上や利益の話はよく出る一方で、人員計画・育成計画の話題がほとんど出てこない
  4. ミスやトラブルが起きたとき、いつも現場だけが責められ、仕組みの見直しには話が及ばない
  5. 経営層や上司が「昔はもっと大変だった」「根性が足りない」など、精神論で片づける発言が多い
  6. 体調を崩しても、「代わりがいない」「自己管理が甘い」と言われ、働き方を調整する選択肢が出てこない
  7. 採用情報に書かれている休日日数や残業時間と、実際の働き方に大きなギャップがある
  8. 給与や昇給、評価の仕組みについて質問しても、はっきり答えてもらえない、もしくは話をそらされる
  9. 仕事量や責任だけ増えていくのに、それに見合う権限やサポートが増えない
  10. 「辞めたい」「限界かもしれない」と相談しても、引き止めだけされて、根本的な問題には向き合ってもらえない

0〜2個なら、現時点では大きな危険は少ないかもしれませんが、今後増えていかないか注意して見ておきたい状態です。3〜5個当てはまる場合は要注意ゾーンで、「このまま同じ状態が1〜2年続いたらどうなるか」を一度真剣にイメージしてみる価値があります。6個以上なら、すでに赤信号に近づいている可能性が高く、次の項で触れる「早めに動いた方がいいサイン」がどれだけ当てはまるかも合わせて確認してみてください。

3-2. 赤信号レベル:早めに転職を検討した方がいいサイン

ここからは、先ほどのチェックリストの中でも、特に重なっていると危険度が高い赤信号レベルのサインを整理します。すでに「体調がかなりきつい」「メンバーが次々と辞めている」といった状況であれば、会社の事情よりも先に、あなた自身の安全を最優先に考えるべきタイミングかもしれません。

一つの目安になるのは、心身の不調がはっきり出ているのに、働き方を変える余地がほとんどない状態です。たとえば、睡眠時間が削られ続けている、休日も仕事のことが頭から離れない、胃痛や頭痛などが慢性的になってきたのに、シフトや業務量を減らす話すら出てこない。これは、個人の努力だけではどうにもならないレベルに来ているサインです。

また、会社全体の離職状況も重要です。短期間のうちに複数の人が辞めているのに、「最近の若い人は根性がない」で片づけられているなら、組織として学ぶ姿勢が欠けている可能性が高いと言えます。退職者が出るたびに現場の負担が増える一方で、仕組みや環境を変える動きが見られない会社は、長くいるほど疲弊してしまいやすい環境です。

さらに重いのは、「辞める相談をしたときの対応」です。引き止め自体が悪いわけではありませんが、不安や不満の理由を聞かず、勢いやプレッシャーだけで引き止めようとする場合は要注意です。退職の話をした途端に態度が変わったり、精神論や責任感だけに訴えかけたりするようであれば、その会社はあなたの人生ではなく、自社の都合だけを優先している可能性が高いでしょう。

こうした赤信号レベルのサインがいくつも重なっているときは、「どうにか踏ん張れないか」ではなく、「どうしたら安全に抜け出せるか」を考える段階に入っています。すぐに辞表を出す必要はありませんが、体調のケアや家計の確認、情報収集など、次のステップに向けた準備を少しずつ進めていくことが大切です。

ポイント

  • 「人手不足なのになぜか雇わない」会社でも、事情と危険度は3つのパターンで大きく異なる
  • チェックリストで当てはまる項目の数と、どれくらい長く続いているかをセットで見る
  • 心身の不調や離職の連鎖、相談への対応が雑な場合は、早めに外への選択肢も検討する

4. 残る?辞める?人手不足の職場での判断基準

「人手不足なのになぜ雇わない?」と思うような職場でも、残ってもよい場合と早めに離れた方がいい場合があります。会社・自分・市場という3つの軸で整理し、感情だけで決めずに、心身の限界ラインも踏まえた現実的な判断基準を持つことが大切です。

「このまま今の会社で頑張るべきか、それとも辞めるべきか」。人手不足の職場にいると、常にこの問いが頭の片隅にあるかもしれません。周りの人の目や家族のこと、お金のことを考えると、なかなか答えを出せずに立ち止まってしまう人も多いものです。

ただ、勢いだけで辞めてしまうのも、限界を超えてまで残り続けるのも、どちらもリスクがあります。大切なのは、「続けてもよいケース」と「早めに動くべきケース」を自分なりに言語化し、判断の基準を持っておくことです。基準があると、「なんとなく不安」ではなく、「この条件を超えたら動こう」と決めやすくなります。

この章では、まず残るか辞めるかを考えるときの整理の仕方を解説し、そのうえで、心身の限界ラインをどこに引くかも一緒に考えていきます。「まだ頑張れるのか」「もう十分頑張ったのか」を見極める材料として、ていねいに読み進めてみてください。

4-1. 「続けてもよいケース」と「早めに動いた方がいいケース」

人手不足の職場でも、「今は大変だけれど、ここで踏ん張る価値がある」ケースもあります。一方で、「これ以上ここにいると、じわじわ自分をすり減らしてしまう」ケースもあります。この違いを見極めるうえで役立つのが、会社の状態・自分の状態・外の選択肢という3つの視点です。

たとえば、会社側が人手不足を課題として認識し、採用や業務改善の具体的な動きを始めているなら、まだ状況が変わる余地があります。求人を出し始めた、業務の見直し会議が開かれた、残業削減の取り組みがスタートしたなど、小さくても前向きな変化が見えるかどうかは重要なポイントです。変化のスピードが遅くても、「なんとかしよう」という姿勢が感じられるなら、少し様子を見てもよい場合があります。

逆に、長期間にわたって具体的な改善策が何も出てこない場合は注意が必要です。人手不足が当たり前になり、「忙しいのは仕方ない」「みんなやっている」の一言で終わってしまうようなら、その職場は問題を問題として扱えていない可能性があります。こうした環境では、あなたがどれだけ頑張っても、根本の構造が変わらないまま、疲れだけが蓄積していきがちです。

また、自分自身が今どんな状態かも、とても大切な判断材料です。多少忙しくても、仕事から得られる学びややりがいがあり、生活もなんとか回っているなら、「しばらくここで経験を積もう」という選択もありえます。しかし、帰宅しても疲れ切って何もできない、休日は寝ているだけで終わる、趣味や家族との時間がほとんど取れないといった状態が続いているなら、残るメリットと引き換えに失っているものが大きくなっているかもしれません。

そして忘れてはいけないのが、会社の外にどんな選択肢があるかです。自分の年齢やスキル、地域の求人状況をざっくりでも把握しておくと、「外に出たらどうにもならないのでは」という漠然とした不安が少し和らぎます。外の選択肢を知ること自体が保険になり、「今の職場にしがみつきすぎずに済む」安心感につながっていきます。

迷ったときの3つの判断軸(会社・自分・市場)

続けるか辞めるか迷ったときは、次の3つの軸でそれぞれ10点満点くらいのイメージで採点してみると整理しやすくなります。

  1. 会社の将来性の軸
    • 事業やサービスに伸びしろがあるか
    • 人手不足を解消しようとする具体的な動きがあるか
    • 上司や経営陣に、話を聞こうとする姿勢があるか
  2. 自分の心身・生活の軸
    • 睡眠や食事の時間が確保できているか
    • 家族や大切な人との時間がほぼ失われていないか
    • この働き方をあと1〜2年続けても大丈夫だと素直に思えるか
  3. 労働市場での選択肢の軸(外の可能性)
    • 同じ業界・職種で転職できそうな求人があるか
    • 今の経験が他社でも通用しそうだと感じられるか
    • 少し勉強すれば、別の選択肢にも手を伸ばせそうだと思えるか

それぞれざっくり点数をつけてみて、3つの合計点が高いなら「もう少し残って様子を見る余地あり」、会社の将来性だけ極端に低い・自分の心身だけボロボロ・外の選択肢だけ見えていない、というようにどこか1つが真っ赤なら、その軸を優先して考える必要があります。

たとえば、「会社の将来性はそこまで悪くないけれど、自分の心身・生活の軸が3点くらい」という状態なら、まずは働き方を変えられないかを相談してみる、そこで変わらなければ外の選択肢を真剣に検討する、という流れが現実的です。3軸すべてが低い場合は、無理に踏ん張るよりも、早めに外に目を向けた方が安全だと考えた方がよいでしょう。

4-2. 心身の限界ラインと、これ以上頑張らない方がいい状態

どれだけ判断軸を整理しても、最後は「自分の心と体がどう感じているか」を無視することはできません。人手不足の職場では、頑張り屋さんほど限界を越えてしまいやすいので、「ここを超えたら無理をやめる」という目安をあらかじめ決めておくことが大切です。

一つのサインは、体からのSOSです。寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、起きても全く疲れが抜けていない、食欲が極端に落ちた、逆にストレスで食べ過ぎてしまうなど、生活リズムの乱れが続いているときは要注意です。休日も仕事のことが頭から離れず、日曜の夜になると強い憂うつ感に襲われるようなら、すでにかなり負担が積み重なっていると考えていいでしょう。

心の面でも、「仕事のことを考えると涙が出そうになる」「朝起きたときに会社のことを思い出して動けなくなる」といった状態が続くなら、もう一人で抱え込む段階ではありません。信頼できる人に話を聞いてもらったり、必要であれば専門家のサポートを視野に入れることも選択肢にしてみてください。心身の健康は、一度大きく崩れると回復に時間がかかります。

さらに、「自分らしさ」が失われてきている感覚も大事なサインです。以前は楽しめていた趣味にまったく手が伸びなくなったり、笑うことが減ったり、家族や友人に当たってしまうことが増えてきたら、仕事が日常生活の大部分を支配し始めている証拠かもしれません。仕事以外の自分の時間がほぼゼロになっている状態が続くのは、長期的に見てかなり危険です。

こうしたサインが複数当てはまり、「小さな工夫や休み方ではどうにもならない」と感じるなら、それは「もっと頑張れ」というサインではなく、「そろそろ環境を変えることを真剣に考えていい」という合図です。今すぐ辞めるかどうかは別としても、転職情報をチェックしたり、身近な人に相談したり、一歩外の世界に目を向けることから始めてみてください。

最後に覚えておいてほしいのは、会社は代わりがきいても、あなたの心と体は一つだけだということです。人手不足の職場を支えているあなたの存在は、とても貴重です。でも、どれだけ貴重でも、倒れてしまっては元も子もありません。限界ラインを引くことは、わがままではなく、自分と周りを守るための大事なスキルだと考えてみてください。

ポイント

  • 残るか辞めるかは「会社・自分・市場」の3軸でバランスを見る
  • 心身の不調や生活リズムの乱れが続くときは、判断基準より先に体調を優先する
  • 「もっと頑張れないか」ではなく、「ここまで頑張った自分をどう守るか」という視点を持つ

5. 人手不足なのになぜか雇わない職場で「今できること」

今すぐ辞めるかどうか決められなくても、「人手不足なのになぜか人を雇わない」職場で消耗しすぎないために、できることはあります。状況を書き出す・伝え方を工夫する・外の選択肢を少しずつ準備することで、追い詰められた気持ちから抜け出しやすくなります。

「人手不足なのになぜ雇わないんだろう」と考え始めると、つい会社への不満ばかりが頭の中をぐるぐるしてしまいますよね。とはいえ、いきなり会社を辞める決断をするのは怖いという人も多いはずです。「辞める/残る」の二択で悩み続けるよりも、その前にできる小さな一歩に目を向けてみると、少し気持ちがラクになります。

ここで大事なのは、今の状況を変えるために、自分にコントロールできる部分できない部分を分けて考えることです。会社の方針や経営状態を一人で変えることは難しくても、働き方の記録をつけたり、伝え方を工夫したり、外の情報を集めたりすることは、今日からでも始められます。

この章では、「まず自分の状況を見える化すること」「上司への伝え方を整えること」「いつでも動けるように出口を用意しておくこと」という3つの軸で、今できる具体的なアクションを一緒に整理していきます。「全部やらなきゃ」と気負う必要はありません。できそうなところから、一つずつ試してみるイメージで読んでみてください。

5-1. まずは「いまの状況」を紙に書き出して客観視する

最初の一歩は、職場の状況と自分の状態を紙やメモアプリに書き出すことです。頭の中で考えているだけだと、「忙しい」「しんどい」という感情だけが膨らんでしまい、どこから手をつければいいか分からなくなりがちです。言葉と数字にして整理してみることで、問題の「量」と「中身」が少しずつ見えてきます。

おすすめなのは、1週間分の働き方を記録することです。出社時間・退社時間・大きな仕事の内容・残業時間・休憩が取れたかどうかなどを、ざっくりでいいので書いてみてください。完璧に記録する必要はありませんが、振り返ったときに「この日は特にキツかった」「この作業にすごく時間がかかった」というのが分かるくらいには残しておくと役立ちます。

次に、その1週間のメモを眺めながら、自分が特に負担を感じている業務を3つほどピックアップしてみましょう。「毎日残業の原因になっている仕事」「どうしても一人に集中している作業」など、心身の負担が大きい仕事に印をつけていきます。ここで大切なのは、「会社が悪い」「上司が悪い」と裁くことではなく、事実として「今こういう状態になっている」と把握することです。

この作業をすると、「ただ忙しい」ではなく、「○時に仕事が終わっていない」「特定の業務に時間とストレスが偏っている」といった具体的な課題が見えてきます。後で上司に相談するときも、「最近しんどくて…」という抽象的な悩みより、「先週は毎日○時間残業で、この業務にこれだけ時間がかかっています」と伝えた方が、相手も状況をイメージしやすくなります。

今日から始める5ステップ(辞める前にできる備え)

  1. 1週間、勤務時間・残業時間・業務内容をメモする
  2. 自分が特に負担を感じている業務を3つに絞り込む
  3. 上司に事実ベースで共有し、具体的な相談を1つだけする
  4. 転職サイトや求人情報を軽く眺めて、行けそうな仕事をざっくりリストアップする
  5. 睡眠・食事・休息について、自分なりの最低ラインのルールを決める

この5ステップは、「全部一気にやらなきゃいけない」ものではありません。まずは1と2の見える化ステップだけでも十分な前進ですし、3〜5はできそうな順番で少しずつ取り組んでOKです。

ポイントは、「会社を動かすこと」と同じくらい、自分を守る準備も同時に進めるという発想を持つことです。たとえば、4の求人リストは、今すぐ応募するためではなく、「もしものときの避難先がゼロではない」と知るための保険のような役割があります。5の生活ルールも、「どれだけ忙しくても、これ以上は削らない」という自分との約束にしておくと、無理のしすぎを防ぎやすくなります。

5-2. 人手不足と自分の負担を、上司に具体的に伝えるコツ

状況を書き出したら、次は上司への伝え方を整えていきます。人手不足の職場では、「忙しい」「しんどい」といった感情だけをぶつけても、なかなか動きにつながりません。一方で、言いづらさから何も言わずに我慢し続けてしまうと、周りから「問題がない」と思われたまま、あなたの負担だけが増えてしまう可能性があります。

まず意識したいのは、「感情」と「事実」を分けて伝えることです。「忙しすぎてもう無理です」だけではなく、記録しておいた具体的な数字や出来事をセットで話してみてください。たとえば、「先週は5日中4日が2時間以上の残業で、そのうち○○の業務に毎日3時間以上かかっています」といった具合です。こうすると、上司も「何がボトルネックになっているか」をイメージしやすくなります。

次に、「すべてを変えてほしい」と丸投げするのではなく、相談したいことを1つに絞るのも大切なコツです。「人を増やしてください」と言っても、今すぐ採用できるとは限りません。代わりに、「この業務だけでも他のメンバーと分担できないか」「週に1日は残業しない日を作れないか」といった、現実的な提案を1つだけ持っていくと、話し合いが前に進みやすくなります。

また、話すタイミングや場づくりも意外と重要です。上司が明らかにバタバタしているときに捕まえて話すより、「少しご相談したいことがあるのですが、○分ほどお時間いただけますか」と、あらかじめ時間を取ってもらう方が落ち着いて話せます。面と向かって話すのが緊張する場合は、先に簡単なメモやメールで概要を伝えておき、「口頭でもお話しさせてください」と添えるのも一つの方法です。

それでも、きちんと伝えたうえで何の反応もない、話をそらされてばかりという場合は、その姿勢自体がその会社の限界を示すサインかもしれません。あなたの伝え方を責めるのではなく、「ここまで具体的に伝えても動かないなら、次は自分の身をどう守るかを考えよう」と切り替えていくことも大事です。

5-3. 転職・副業・スキルアップなど“出口”も並行して用意する

今の職場でできることをしつつ、いつでも外に出られる準備も少しずつ進めておくと、心の余裕がまったく違ってきます。「ここしかない」と思うと、どんなにしんどくても踏ん張り続けてしまいがちですが、「他にも道がある」と感じられるだけで、今の職場とも少し距離を置いて向き合えるようになります。

最初の一歩としておすすめなのは、転職サイトや求人検索で、今の自分の経験で応募できそうな仕事をざっくり眺めてみることです。すぐに応募しなくても構いません。「同じ業界でこんな会社があるんだ」「このスキルなら他の職種にも活かせそうだ」と分かるだけでも、自分の市場価値を確認する材料になります。気になる求人があれば、ブックマークしておくだけでも十分な一歩です。

次に、時間と心の余裕が許す範囲で、小さなスキルアップや情報収集も取り入れてみましょう。完全に新しい資格を目指さなくても、今の仕事に役立つ知識をオンライン講座や書籍で少しずつ学ぶだけで、「この経験は次の職場でも評価されるかもしれない」と感じやすくなります。副業が認められている環境なら、負担にならない範囲で試してみることで、収入源や経験の幅を広げることもできます。

大切なのは、「今の職場を否定するために外の選択肢を探す」のではなく、自分の人生の選択肢を増やすために準備するというスタンスです。準備をしてみた結果、「意外と今の会社でやれることもある」と感じるかもしれませんし、「やっぱり近いうちに動いた方がよさそうだ」と思うかもしれません。どちらに転んだとしても、「選べる状態」を作っておくこと自体が、あなたの安心感につながります。

もし、今は動き出すエネルギーがないと感じるなら、まずは休む・寝る・食べるといった基本から整えるだけでも立派な一歩です。体力と気力が少し戻ってきたときに、また求人を見たり、信頼できる人に相談したりしてみれば大丈夫。出口を用意することは、「逃げ」ではなく、未来の自分を守る準備だと考えてみてください。

ポイント

  • まずは働き方と負担を見える化し、自分の状態を客観視する
  • 上司には感情ではなく事実と具体的な相談をセットで伝える
  • 今の職場でできる工夫と並行して、外の選択肢やスキルアップの準備を進めておく

6. 経営者・人事向け:雇わないことのリスクと現実的な選択肢

人手不足なのになぜ雇わないかには経営上の理由がありますが、「雇わない」選択を続けることにも大きなコストがあります。既存社員の離職やサービス低下など見えにくいリスクを整理し、すぐに採用できなくても始められる現実的な人手不足対策のステップをまとめます。

「人手不足なのになぜ雇わないのか」と問われたとき、経営者や人事としては、資金繰りや売上の不安が真っ先に頭をよぎることが多いでしょう。人を一人増やすというのは、毎月の固定費を増やす決断であり、景気や取引先の状況が不透明な中では、どうしても慎重になってしまいます。

一方で、現場から見ると「こんなに忙しいのに、なぜ誰も入れないのか」と不信感が高まりやすくなります。いくら経営の理屈があっても、最前線で働く人が納得できなければ離職リスクは高まる一方です。「雇わない」ことで守っているつもりの利益が、従業員の疲弊やサービス低下を通じて、じわじわと失われていく可能性もあります。

この章では、まず人手不足でも雇わないことで起きるダメージを整理し、そのうえで、すぐに正社員を増やせなくてもできる現実的な対策を考えていきます。「採用する/しない」の二択ではなく、「採用できる状態に近づくために今できること」を一つずつ積み上げる視点で読んでみてください。

6-1. 「人を増やさない」ことでじわじわ起きるダメージ

人手不足のまま人を増やさない選択を続けると、まず影響を受けるのは現場のパフォーマンスです。残業や休日出勤が常態化すると、一人ひとりの集中力はどうしても落ちていきます。その結果、ミスやクレームが増え、フォローのためにさらに時間とコストがかかる、という悪循環が起こりがちです。

次に大きいのが、既存社員の離職リスクです。がんばってくれる人ほど負担が偏り、「このままここにいて大丈夫だろうか」と不安を抱えやすくなります。本来なら組織を支える中核メンバーが、「ここで倒れる前に」と転職を選ぶケースも少なくありません。一度キーパーソンが抜けると、業務の引き継ぎや再育成にも大きなコストがかかります。

顧客側にも影響が出てきます。人手不足を補うためにサービスの質が落ちたり、納期遅延や対応の粗さが増えたりすると、少しずつ信頼を失ってしまいます。目先の人件費は抑えられても、顧客離れやブランドイメージの低下によって、中長期的な売上がじりじりと削られていく可能性があります。

さらに見落とされがちなのが、採用ブランドへの影響です。口コミサイトやSNSで「人手不足なのに雇わない」「いつも求人を出しているのに人が残らない」といった情報が広まると、採用を本気で始めたときに応募が集まりにくくなります。つまり、「今は雇わない」という選択が、将来「雇いたいときに雇えない」状況を自ら作り出してしまうこともあるのです。

6-2. すぐには採用できなくてもやっておきたい3つのこと

とはいえ、すべての会社がすぐに人を増やせるわけではありません。売上や受注の見通しが読めない時期に、固定費を一気に増やすのは怖いという感覚も当然です。そこで考えたいのは、「今すぐ正社員を増やさなくても、人手不足のダメージを少しでも和らげるためにできること」です。

ポイントは、いきなり「フル採用」ではなく、業務の棚卸し・軽減できる部分の整理・採用前提の土台作りをセットで進めることです。これにより、短期的なリスクを抑えながら、中期的に「雇っても大丈夫な状態」を目指せます。

小さく始める人手不足対策の3ステップ

  1. 現場ヒアリングで「ボトルネック業務」と「不必要な仕事」を洗い出す
    まずは、現場のメンバーから具体的な声を集めます。「どの業務が一番負担になっているか」「やめても問題なさそうな仕事はないか」を聞き取り、一覧にしてみましょう。ここで大事なのは、上から決めつけるのではなく、現場の実感を尊重する姿勢を見せることです。
  2. 外注・システム化・業務削減など、採用以外の軽減策を試す
    洗い出した業務の中から、外注やパートタイムでも回せる仕事、ツール導入で自動化できそうな作業を選び、一部だけでも手放していきます。すべてを一気に変えようとする必要はありません。まずは「毎週○時間分だけでも削減する」と決めて、小さな改善を積み重ねていきましょう。
  3. 採用を前提とした「先に環境を整える」投資を始める
    すぐに人を増やせなくても、教育マニュアルやOJTの仕組み、評価・フィードバックの流れなど、人が入ってきたときに定着しやすい仕組みは少しずつ整えられます。これを先に整えておくことで、採用に踏み切るハードルが下がり、「雇ってもすぐ辞めてしまうのでは」という不安も和らぎます。

この3ステップは、「採用しない」前提で現場に我慢を強いるのではなく、採用しても耐えられる土台作りとセットで考えるための道筋です。ステップ1と2を進めることで、今いる人の負担を少し軽くしつつ、どの部分に本当に人を割くべきかがクリアになります。ステップ3で環境を整えていけば、将来的に採用する際にも、「ここまで準備しているので、一定の成果は期待できます」と自信を持って判断しやすくなるでしょう。

また、このプロセス自体が、現場との信頼関係づくりにもつながります。「人手不足なのになぜ雇わないのか」を説明するだけでなく、「その代わりにこういう対策を進めている」という具体的なアクションを見せることで、従業員は「本気で考えてくれている」と感じやすくなります。結果として、離職リスクを下げ、組織全体のエンゲージメントを高める効果も期待できます。

ポイント

  • 「雇わない」ことで守っているつもりの利益が、離職やサービス低下で失われていないかを確認する
  • いきなり採用に踏み切れなくても、業務の棚卸しと負担軽減、教育や評価の仕組みづくりから始められる
  • 「人手不足なのになぜ雇わないか」を説明するだけでなく、同時に具体的な対策を見せることで現場との信頼を保ちやすくなる

7. Q&A:よくある質問

「人手不足なのになぜ雇わない?」と感じたときに多くの人が抱きやすい疑問にまとめて答えます。すべての会社が即ブラックではありませんが、“本当にヤバい会社”のサインや、自分を守るための考え方をQ&A形式で整理します。

人手不足の職場で働いていると、「この状態って普通なの?」「もう辞めた方がいいのかな?」と、頭の中が疑問でいっぱいになりますよね。ここでは、これまでの章で触れてきた内容を、よくある質問の形であらためて整理します。読みながら、自分の状況に近いものからチェックしてみてください。

7-1. Q. 人手不足なのに人を雇わない会社は、すべてブラック企業ですか?

A. すべてがブラック企業とは限りません。資金的に本当に「雇えない」会社もあれば、利益や効率を優先してあえて「雇わない」会社、採用しても人が「定着しない」会社など、事情はさまざまです。大切なのは、人手不足そのものよりも、現場の声をどう扱っているかです。忙しさを伝えたときに、事実を受け止めて改善しようとするのか、「どこもこんなもの」「根性が足りない」で終わらせるのかで、健全さは大きく変わります。

7-2. Q. 上司に人手不足を訴えても動いてくれないとき、どうすればいいですか?

A. まずは、感情ではなく事実ベースで伝えることを意識してみてください。「忙しいです」より、「先週は5日中4日が○時間以上の残業で、その原因はこの業務です」と具体的に話す方が、上司も状況をイメージしやすくなります。また、お願いごとは欲張らず、相談テーマを1つに絞るのがコツです。「人を増やしてください」ではなく、「この業務だけ他の人と分担できませんか」など、現実的な提案をセットで持っていくと動きやすくなります。それでも何も変わらない場合は、その反応自体が会社の限界を示すサインと受け止め、次の選択肢も視野に入れてよいでしょう。

7-3. Q. 「人が入ってもすぐ辞める」会社にいるのは危険でしょうか?

A. 定着しない会社には、職場環境やマネジメントに問題があることが多いため、長くいるほど負担が増えやすいのは事実です。新人が次々と辞めていくのに、教育方法や仕事の割り振り、評価の仕組みが見直されないままだと、既存メンバーにしわ寄せが続きます。ただし、改善の動きがまったくないのか、一部でも見直しが始まっているのかで、危険度は変わります。退職をきっかけに何かを変えようとしているか、新人に対して最低限のサポート体制が整えられているかを、冷静に観察してみてください。

7-4. Q. 転職したいけれど、次の職場も人手不足だったらと思うと不安です。

A. どの職場にも大なり小なり人手不足の要素はありますが、「構造的な忙しさ」と「放置されている忙しさ」は別物です。完全に問題がない会社を探すより、「忙しくても改善しようとする職場」を見抜くことを意識してみましょう。求人票だけでなく、面接で人手不足の状況や離職率、改善のためにやっていることを質問するのも有効です。また、今の経験でどんな会社に行けそうかをリサーチしておくと、「どこに行っても同じかも…」という漠然とした不安が薄れます。完璧な職場はなくても、今より自分に合う環境はきっとあります。

7-5. Q. 人手不足なのに雇わない会社から、円満に辞めるコツはありますか?

A. まず意識したいのは、「感情のぶつけ合いで終わらせない」ことです。いくら不満があっても、辞める理由は事実と自分の希望を中心に伝えた方がスムーズです。「人手不足で大変だから辞めます」ではなく、「この働き方が続くと体力的に厳しいので、○○な働き方ができる環境に移りたいと考えました」といった伝え方がよいでしょう。また、引き継ぎ資料をきちんと作る、スケジュール感を早めに共有するなど、最後まで仕事を整えて出る姿勢も大切です。円満退職を目指すことは、次の職場での信用にもつながりますし、自分自身が後悔しないためにも役立ちます。

ポイント

  • 「人手不足なのに雇わない」だけで即ブラックとは限らず、会社の反応や改善の姿勢を見ることが大事
  • 相談するときは、感情だけでなく具体的な事実と小さな提案をセットで伝える
  • どこに行っても人手不足はあり得るが、「放置されているか」「改善しようとしているか」で職場の質は大きく変わる

8. まとめ

「人手不足なのに雇わない」背景には会社ごとの事情がありますが、あなたの心身や人生を犠牲にしてまで支える必要はありません。会社の本音と“本当にヤバい会社”のサイン、そして自分を守るための判断軸とアクションを押さえ、いつでも自分で選べる状態をつくっていくことが大切です。

8-1. 全体の振り返り・押さえておきたい前提

この記事では、「人手不足なのになぜ雇わないのか」という素朴な疑問からスタートし、会社の内側で何が起きているのかを見てきました。表面上は同じ悩みに見えても、実際には雇えない会社・雇わない会社・定着しない会社という3つのパターンがあり、それぞれ事情もリスクも異なります。まずは自分の職場がどのタイプに近いのかを知ることが、冷静な判断の第一歩になります。

同時に、「人手不足だから=すべてブラック」と決めつける必要もありませんし、「どこも大変だから仕方ない」と自分のしんどさをなかったことにする必要もありません。大切なのは、会社の事情と自分の人生を切り分けて考える視点です。会社には会社の都合があり、あなたには守りたい健康や生活、将来のプランがあります。

そして、“本当にヤバい会社”には共通するサインがあることも押さえておきたいポイントです。慢性的な長時間労働が放置されている、退職理由の振り返りがない、体調不良より数字が優先される、相談しても精神論や引き止めだけで終わる…。こうしたサインが重なっている場合、状況が自然に良くなる可能性は高くありません。チェックリストで状態を見える化することは、「なんとなく不安」を「これは危険」と具体的に認識するための大切な作業です。

8-2. 今後も意識したいポイント

これからも人手不足が続く社会の中で働く以上、「どこなら楽か」だけを探すのは現実的ではありません。むしろ、「忙しくても改善しようとする職場」と「忙しさを放置する職場」を見分ける目を育てるほうが、自分を守りやすくなります。現場の声をどう扱うか・小さくても改善の動きがあるかといった視点を持って、今の職場も将来の候補先も見ていきましょう。

また、判断に迷ったときは、会社・自分・市場の3つの軸で考えるクセをつけておくと役立ちます。会社の将来性だけでなく、自分の心身の状態、外にどんな選択肢があるかというバランスを見て、「今は留まる」「そろそろ準備を始める」「本格的に動く」といった段階的な判断をしていくイメージです。

何より忘れてほしくないのは、心と体のサインを軽く扱わないことです。眠れない、何をしても楽しくない、家族や友人に当たってしまう…。こうした変化は、「もっと頑張れ」というメッセージではなく、「今のやり方を見直すタイミングだよ」という大事なサインです。仕事は大事ですが、あなた自身の人生の一部にすぎません。

8-3. 今すぐできるおすすめアクション!

ここまで読んで「確かにそうだな」と感じても、具体的に何をすればいいか分からないと動きづらいですよね。最後に、今日からでも取り組めるアクションをまとめておきます。全部でなくてかまいません。できそうなものを1つ選んで始めるだけでも十分です。

  • 1週間の働き方を記録する
    出社・退社時間、残業時間、主な業務内容をざっくりメモし、自分の負担がどこに集中しているかを見える化してみましょう。
  • 負担の大きい業務を3つ書き出す
    「これがあると毎日きつい」という業務を3つに絞ってリスト化し、どこを減らせれば一番ラクになるか考えてみてください。
  • 上司への相談内容を1つに絞って準備する
    「忙しい」で終わらせず、「この業務だけ分担できないか」など、具体的にお願いしたいことを1つ決めてメモにしておきましょう。
  • 求人情報を軽くチェックして“避難先候補”をストックする
    転職サイトや求人検索で、今の経験で応募できそうなものを眺め、気になる求人をいくつか保存しておくだけでも安心材料になります。
  • 自分なりの健康ルールを決める
    「睡眠時間は最低○時間」「週に1回は完全オフの日を作る」など、これ以上削らないと決めるラインを具体的に書き出してみましょう。
  • 信頼できる人に今の気持ちを話してみる
    同僚・家族・友人など、安心して話せる相手に、いま感じている不安やしんどさを言葉にしてみるだけでも気持ちが軽くなります。
  • 「いつまでにどうなっていたいか」をメモに書いてみる
    半年後や1年後の自分について、「こうなっていたらいいな」を一行でもいいので書き出して、そのために今日できる小さな一歩を考えてみてください。

どんなに人手不足でも、あなた一人がすべてを支える必要はありません。状況を知ること・サインを見分けること・自分を守る行動を少しずつ積み重ねることができれば、今の職場に残るとしても、別の道を選ぶとしても、きっと後悔の少ない選択につながっていきます。まずは今日、この中から1つだけでも行動に移してみてください。きっと、それが次の一歩を踏み出す力になります。

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