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有給が好きな時に取れない?職場で認められる交渉例

有給休暇は本来「好きな時に取れる権利」。拒否される場合の交渉術と対処法を具体例で解説します。

「有給休暇って好きな時に取れるんじゃないの?」
そんな疑問を抱きながらも、実際には申請しても上司に断られたり、職場の空気を読んで取りづらかったりと、“思った通りに休めない”経験をしたことはありませんか?

多くの働く人が一度はぶつかるのがこの「有給が好きな時に取れない」問題です。
制度上はしっかりと認められている権利のはずなのに、現実には「時期が悪い」「忙しい」「他の人も休んでるから」などの理由で申請を見送ったり、断念したりするケースが後を絶ちません。

では、本当にこれは仕方のないことなのでしょうか?
結論からいえば、正当な理由なしに有給を拒否されることは原則として違法です。とはいえ、職場の慣習や人間関係、上司との相性など、現実の職場には法律だけでは割り切れない“壁”があるのも事実。

そこで本記事では、次のような視点から問題の本質に迫ります。

  • 「有給が好きな時に取れない」現状の背景と制度の誤解
  • 会社が拒否できる「例外」条件と実際のトラブル例
  • 上司や同僚との関係を壊さずに交渉するための伝え方
  • 成功談と失敗談から学ぶ“通る申請”と“落とされる申請”の違い
  • 万一拒否された場合の具体的対処法と相談先

さらに、有給取得に前向きな職場に変えていくヒントや、よくある疑問をまとめたQ&Aもご用意しています。

「自分の時間を守りたい」「家族や友人との予定を大切にしたい」「体調回復に専念したい」
そんなときに、誰にも気兼ねせずに休みが取れる職場づくりは決して夢ではありません。
あなた自身が“最初の一歩”を踏み出すことで、周囲の環境も少しずつ変えていけるのです。

この記事では、法律的な原則を押さえつつ、現場で実際に役立つ言い回しや成功事例を交えて、「どうやって有給を取得するか」の具体策を提案します。
読み終えたとき、あなたの選択肢が今より確実に広がっていることをお約束します。

この記事は以下のような人におすすめ!

  • 有給休暇を申請したが、断られた経験がある
  • 上司や同僚に気を遣って休みが取りづらい
  • 法律上の自分の権利を正しく理解したい
  • 有給取得を上手に交渉する方法を知りたい
  • 働き方改革を自分の職場でも進めたい

目次 CONTENTS 

1. 有給が好きな時に取れないのはなぜ?仕組みと誤解を整理

有給休暇の本来の権利と会社側の制約が混同され、誤解が多く発生しています。

日本では「有給休暇」は労働基準法によって認められた正当な権利です。
しかし現実には、「好きな時に取れると思っていたのに、断られた」「そもそも申請しにくい空気がある」といった声が多く、制度の趣旨が正しく理解されていないことが少なくありません。

この章では、有給休暇の本来の仕組みや労働者の権利、そして職場で生じやすい誤解について整理していきましょう。

1-1. 「好きな時に取れる」は本当?制度上の基本と誤認

有給休暇とは、正確には「年次有給休暇(年休)」と呼ばれるものです。労働基準法第39条によって定められており、一定の条件を満たせば誰でも取得できる労働者の当然の権利です。

労働者が有給を取りたい日を「時季指定」することで、原則として会社はそれに応じなければなりません。つまり、「会社が許可するから取れるもの」ではなく、「申請すれば取れるのが原則」となっているのです。

ところが現実には、こうした仕組みがきちんと共有されていない職場も多くあります。「上司の許可が出なかった」「忙しいからダメだと言われた」という事例が後を絶ちません。

また、「取得するには理由を説明しなければならない」と誤解しているケースも散見されますが、これは完全な誤認です。有給の取得に理由の提示義務はありません。たとえ「旅行」「ライブ」「寝たいだけ」でも、申請理由として法的にはまったく問題ないのです。

それでも好きな時に取れない背景には、制度理解の不足職場文化に根ざした思い込みが根深く絡んでいます。

1-2. 上司の許可制ではない?申請と取得の仕組みを解説

有給は「上司に許可を得るもの」ではなく、「取得の意思を示すだけ」で成立します。これを「時季指定権」と呼びます。
この時季指定権は、労働者側にあるというのが制度上の原則です。

では、会社はどんなときにこれを拒否できるのかというと、「事業の正常な運営を妨げる場合」のみとされています。これがいわゆる「時季変更権」です。
例えば、部署全体のシステム入れ替え作業や、担当業務の引き継ぎができないほどの急な人員不足など、「やむを得ない事情」があるときだけ行使できます。

逆にいえば、単に「忙しいから」「みんな休んでるから」「上司が不機嫌だから」といった理由での拒否は、制度上認められていないのです。

実務では申請フォームやメール、勤怠システムで申請するケースが多く、そこに「理由欄」がある場合もありますが、法的には空欄でも問題はありません。
ただし、あくまで“制度上は”そうであっても、現実には「黙って空欄提出」はトラブルを招きやすいため、後述する“伝え方の工夫”が必要です。

1-3. 有給取得に関するよくある職場の誤解トップ3

最後に、有給について職場でよく見られる誤解を3つ紹介します。

  1. 「有給は理由が必要」
    →必要ありません。旅行や私用でも全く問題なし。
  2. 「上司の許可がないと取れない」
    →法的には「申請=取得」であり、許可制ではありません。
  3. 「繁忙期だから絶対取れない」
    →時季変更権が行使されるのはごく限られた例。繁忙期でも協議のうえ取得可能です。

これらの誤解が放置されていると、結果として「有給を取りづらい雰囲気」が強化され、職場全体が休みづらくなってしまいます。
大切なのは、法的な仕組みと実務上の調整との違いを正しく理解し、制度を踏まえたコミュニケーションをとることです。

ポイント

  1. 有給は「申請=取得」が原則であり、許可制ではない点が鍵。
  2. 会社側が拒否できるのは、正常な業務運営を著しく妨げる場合に限られる。
  3. 職場に根付いた誤解が、有給取得の障壁になっているといえる。

2. 拒否される理由は?会社の都合と「時季変更権」の落とし穴

企業側が拒否できるのは例外であり、正当性をもつには明確な条件が必要です。

有給休暇は原則として労働者が自由に取得できるものですが、現実には「繁忙期だから」「他の人と被るから」などの理由で申請が通らないケースがあります。
一見もっともらしく聞こえるこうした理由の多くは、実は法的根拠が不十分であることも少なくありません。

この章では、企業側が使う「拒否の理由」とその正当性の判断基準、そして“万能の拒否カード”として誤解されがちな「時季変更権」の正しい理解について解説します。

2-1. 「時季変更権」は万能ではない!行使の条件とは

会社が有給取得の申請を拒否できる唯一の方法が、「時季変更権(じきへんこうけん)」の行使です。
これは、労働基準法第39条第5項に定められた制度であり、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限って、時季(タイミング)を変更できるという非常に限定的な権利です。

重要なのは、変更「できる」だけであって、「取得を拒否できる」わけではないという点。
つまり、「その日はダメだから、別の日にしてね」と調整する余地があるケースでのみ成立するのです。

たとえば、以下のようなケースでは、時季変更権が認められやすくなります。

  • 飲食店の年末年始、全スタッフが希望休を出してしまい店舗運営ができない場合
  • 医療現場で人員不足により急患対応ができなくなる事態
  • 単独担当業務で引き継ぎが不可能な状態

ただし、それらも「本当に他の手段がないか」「一時的な対応で乗り切れないか」などが検討される必要があり、会社側には“代替措置努力義務”が求められます。
裏を返せば、ただ忙しいという理由だけでは通らないのです。

2-2. 忙しさを理由に拒否?それって合法?

結論からいえば、「忙しいからダメ」という理由だけでは合法とは言えません
実際のところ、「忙しい」は非常に曖昧で、定量的な根拠が伴わないケースが大半です。

例えば、月末の締め処理など、担当者の不在が致命的になる場合には一時的な調整が必要ですが、その忙しさが「代替要員で補えないほどか」「他の時期では代替できないのか」といった観点で精査されます。

特にブラック企業などで、「忙しい」を口実に有給申請を常に却下するような場合、違法性が強く疑われるでしょう。
会社には、時季変更権を行使するにあたって「事業運営への重大な支障」の証明責任があるとされています。

現場では、しばしば“暗黙の圧力”がかかり、「今はやめておこうかな……」と自発的に諦めてしまうケースもありますが、これはまさに本来の趣旨を損なう状況です。
「忙しいから無理」と言われたら、その場で納得せず、「具体的にどのような支障が出るのか」を尋ねるだけでも、会社側の姿勢が明らかになることがあります。

2-3. 実際に違法と判断された企業事例に学ぶ

過去には、以下のような事例が「違法」と判断されています。

  • 製造業の工場勤務者が年末に有給を希望し、会社側が「繁忙期で全体のシフトに影響が出る」として拒否 → 労基署は“時季変更権の乱用”と判断
  • IT企業での開発チームメンバーが締切前に有給を申請し、「進行が止まる」と上司が口頭で却下 → 申請記録がなく、労働者が証拠を残していなかったため是正指導止まり

これらのケースに共通するのは、会社側が拒否理由を具体的に示せていないことです。
また、申請が口頭だったことで証拠が残らなかった場合、労基署も動きにくくなるため、記録に残すことの重要性も浮き彫りになります。

一方で、航空会社や警察官、自衛官のような“公共性が非常に高く、代替が利かない職種”では、事業運営を理由とする変更が認められやすい傾向があります。
しかしこれも、“いつでも拒否していい”という意味ではなく、個別の事情が加味されて判断されるのが原則です。

ポイント

  1. 時季変更権は「例外中の例外」であり、常用はできない制度である。
  2. 「忙しいから」だけでは拒否の理由として不十分と判断されることが多い。
  3. 企業側には具体的説明責任があり、記録がなければ違法性の追及が難しくなる。

3. 職場別・上司別で見る「有給が取りにくい」傾向と対策

業種や組織文化、上司の価値観で取得しやすさは大きく異なります。

「制度上は取れるはずの有給」が、職場によってはほとんど使えない――。
そうした声は業種・規模・組織文化によって色濃く分かれています。中には、就業規則には明記されているのに、実質“空文化”している職場すら存在します。

この章では、「どんな職場・上司が有給を取りづらくさせているのか?」という実態と、その対処法や考え方について解説します。

3-1. 医療・福祉・小規模事業所は特に注意が必要

有給取得率の低い職場には共通点があります。それは、人員に余裕がなく業務が属人化していることです。

代表例が、以下の業界や環境です

  • 医療・介護業界:日常的にシフト制が敷かれ、代替人員の確保が難しい
  • 福祉施設・保育所:利用者ありきの運営で、現場の都合が最優先される
  • 小規模の事業所:部署の人数が少なく、ひとり抜けると業務が停滞する

こうした業種では、有給を取ることが「同僚に迷惑をかける行為」とされ、心理的圧力が非常に高くなる傾向があります。
また、管理職自身が休めていない環境も多く、「休むとはこういうものだ」というモデルが存在しないのです。

それでも、有給取得は“迷惑をかけない人だけの権利”ではなく、全労働者に平等に与えられた正当な権利です。

取れない環境にいる場合は、まず「代替案を考える習慣」をチームで持つことが第一歩になります。具体的には、「この日に休みたいので、前日までにこれを終えておきます」など、代替措置を自ら提案することが、有給取得の実現可能性を高めます。

3-2. 有給を出しづらい上司の特徴と対応策

「うちの上司が怖くて申請できない」「毎回機嫌で判断が変わる」といった悩みも少なくありません。

有給申請がしにくい上司には、いくつか共通する特徴があります

  • “仕事は我慢”と考える根性型管理職
  • 自分が有給を取っていないため部下の取得にも消極的
  • 予定変更や業務調整の手間を嫌う現実主義者

こうした上司に対しては、単に「休みたい」と言うだけでは不十分です。大切なのは、“業務に支障がないこと”を先に提示することです。

例えば

「○○の対応は◯日に前倒しで済ませておきます。そのうえで、○日にお休みをいただければと思います。」

といった言い回しを使うことで、上司の懸念を払拭し、了承を得やすくなります。

また、定例ミーティングの場で「〇月中に取得予定の有給があれば申告してください」という形式があれば、それを活用しましょう。
申請が“特別な行為”ではなく、“ルーティンの一部”に組み込まれるだけで心理的ハードルが大きく下がります。

3-3. 組織文化と“空気読み”圧力への向き合い方

有給が取りにくい最大の要因のひとつが、「空気」です。
特に日本では、「自分だけ休むのは申し訳ない」「他の人が休んでいないのに」などの“同調圧力”が強く働きます。

実際、「取ろうと思えば取れたけれど、言い出しにくかった」という理由で見送られている有給は相当数にのぼります。
これはもはや制度や上司の問題ではなく、「職場全体の文化」の問題といえるでしょう。

このような職場では、最初の1人が取得することの意味がとても大きいです。
誰かが先陣を切って休んでも大丈夫なことを示すことで、周囲の“心理的ハードル”がぐっと下がります。

また、チームであらかじめ「来月有給を使いたい日を出し合おう」などとスケジューリングの文化を取り入れれば、「調整前提」の風土が生まれ、個人任せでなくなります。

空気を読むよりも、空気を変える。
これが、有給を“誰もが取れる”文化にするための一歩です。

ポイント

  1. 医療・福祉・小規模企業などは、制度より“属人性”が壁になる場面が多い。
  2. 上司タイプ別に応じて“業務への影響の少なさ”を先に伝えるのが効果的。
  3. 同調圧力の強い職場では、最初の1人になる勇気と工夫が文化を変える鍵。

4. 有給を認めてもらうための交渉術と伝え方【成功と失敗】

正面から要求せず、“協調的な言い回し”と“段階的交渉”がカギになります。

制度上は労働者に認められた権利である有給休暇ですが、現場では「どう伝えるか」で結果が大きく変わる現実があります。
正論を主張すればするほど、逆に関係がこじれてしまうこともあり、現場で認められる申請には“言葉の選び方”と“タイミング”が重要です。

この章では、筆者や周囲の体験談を交えながら、実際に通った伝え方のパターンや、逆に失敗した例とそこから得た教訓を紹介します。

4-1. 成功した人の「伝え方」ベスト3と活用例

実際に有給を通すことに成功した人たちが共通して使っていたのが、“配慮+事前調整+感謝”の3点セットです。
以下に有効だった言い回しの例と、それぞれの背景を紹介します。

①「来月この日をお休みしたいのですが、業務の引き継ぎも済ませますのでご確認いただけますか?」
→ “相談風”に始めつつ、調整済みであることを先に伝えて不安を払拭。上司の承認心理を刺激する表現です。

②「この時期に休暇を取りたいのですが、代わりの対応もこちらで整理しておきます。○○さんと確認済みです」
→ 他のチームメンバーとの連携が明示されており、“チームを巻き込んで休む姿勢”が好印象を与えます。

③「ご多忙のところ恐縮ですが、体調管理もあり休暇を取得したく、調整案を提示させてください」
→ “健康・配慮”という理由付けが上司の共感を引き出しやすい。柔らかくも理論的なアプローチです。

これらに共通するのは、「いきなり押し付けない」「相手の懸念を先回りして解消する」「礼儀を忘れない」という点です。

形式としては口頭よりも、メールやチャットツールで明文化されたやりとりを残すことがベターです。上司に考える時間を与えるメリットもあります。

4-2. 同僚との連携で取得できた体験談

筆者のかつての同僚であるAさん(30代・営業職)は、繁忙期に旅行の計画を立てており、「どうしてもその日だけは外せない」という事情がありました。

直属の上司は厳格な人物で、過去には有給を突っぱねられた人もいたため、Aさんは慎重に以下の準備を進めました。

  • チーム内でその週の業務を分担し、事前にAさん不在時の対応を共有
  • お客様対応についても事前アナウンスし、担当者変更を完了
  • 上司には、「チームで共有済み、○○さんが代行」と記載した計画書を提出

結果、上司からは「ここまでやってあるならいいだろう」と初の“OK”をもらえたのです。

この体験談がきっかけで、チーム内に「きちんと準備すれば取れる」という空気が広まり、翌月には他のメンバーの取得率も上昇しました。

「申請は個人の問題ではなく、チームの文化にも影響を与える」という好例です。

4-3. 拒否され続けた失敗例とその改善策

一方で、うまくいかなかった失敗例も存在します。

筆者が人事に在籍していた当時、ある若手社員Bさん(20代・技術職)が、繁忙期にいきなり「○日は私用で有給を取ります」とメール一本で通知してきました。
その日は既に別のメンバーも有給申請中で、現場が手薄になることが明らかだったため、やむなく上司が時季変更を申し入れました。

Bさんは「有給は労働者の権利だ!」と反論しましたが、事前の調整もなく、交渉の余地も示さず、ただ制度だけを盾にして主張したため、信頼関係が損なわれてしまいました。

ここでの問題は、正論自体ではなく、伝え方と順序にあります。
制度を理解していても、それを“どう使うか”で結果は真逆になります。

後日、Bさんは人事面談の場でフィードバックを受け、次回以降は「業務の影響と事前調整」を明記して申請するよう改善。結果、スムーズな取得が可能になりました。

ポイント

  1. 成功例に共通するのは、相談形式・事前調整・感謝表現の3点セット。
  2. チーム内連携が有給取得を後押しし、文化そのものを変える起点になる。
  3. 制度を盾にせず、配慮を持って伝えることで信頼と理解を得られる。

5. それでも取れないときは?正しい対処ステップと相談先

証拠の記録と段階的対応、最終的には法的手段を視野に入れる選択もあります。

いくら準備を整えても、上司に配慮した言い回しをしても、どうしても有給を取らせてもらえないケースがあります。
「忙しいから今は無理」「人手不足だから我慢してほしい」といった言葉が繰り返され、結果としてずっと休めないまま。
そんな状況に直面したとき、あなたはどう対処しますか?

ここでは、有給申請が理不尽に却下されたときの正しい対応手順と、頼れる相談先について、実務に即したステップで解説します。

5-1. 口頭申請は危険?メール・紙で残すべき理由

最初に注意しておきたいのは、「口頭だけで申請を済ませるのは非常にリスクが高い」という点です。
口頭だと「そもそも申請がなかった」「了承した覚えはない」といった言った・言わないのトラブルが発生しやすく、労働者側が不利になることが少なくありません。

そのため、有給申請は必ず以下のいずれかで記録を残すことが大切です

  • メール(件名に「有給申請」など明示)
  • 勤怠システム(スクリーンショットも保存)
  • 紙ベースで提出する場合は、写しを自分で保管する

また、拒否された場合もその理由を文面で残してもらうことで、後に客観的な証拠となります。
「忙しいからダメ」といった抽象的な回答が繰り返される場合、繰り返し文面で申請・記録を残すことで、時季変更権の濫用として違法性を主張できる足がかりになります。

5-2. 社内相談窓口や労働基準監督署への相談法

上司に相談しても改善が見られない場合は、社内の別のルートに相談することを検討しましょう。

多くの企業では、以下のような相談先が設けられています

  • 人事部門(勤怠・制度管理担当)
  • ハラスメント・コンプライアンス窓口
  • 労働組合(ある場合)

これらの窓口に申し出ることで、直属の上司と距離を置いた形で対応してもらえる可能性があります。
ただし、相談後の対応スピードや影響力は企業によって異なりますので、状況が長期化する場合は外部機関の力を借りることも選択肢になります。

もっとも実用的なのが、労働基準監督署(労基署)への相談です。
全国各地にあり、匿名でも相談が可能。以下のようなケースで力を発揮します

  • 正当な理由なく有給を何度も拒否されている
  • 時季変更権が明らかに乱用されている
  • 上司や会社からのパワハラ的言動を受けた

相談時には、以下の情報があるとスムーズに進みます

  • 有給申請日・希望日・却下理由の記録
  • メールやメモなどの証拠(形式は問わず)
  • 拒否された経緯を簡潔にまとめたメモ

なお、労基署は「裁判のように強制的な処罰を下す」場所ではありませんが、是正勧告指導により、会社の対応を変えるきっかけになります。

5-3. 限界を感じたら…転職を考えるべきタイミングとは

最善を尽くしても有給が取れない――。それは、単なる制度や上司の問題ではなく、その職場自体の価値観に根本的なズレがある可能性を示しています。

こんな状態が続くと、次第に以下のような影響が出てきます

  • 心身の不調(疲労蓄積、モチベーション低下)
  • プライベートとの両立困難(家庭・育児・学業との両立が崩れる)
  • キャリアへの影響(自己研鑽の時間が取れない)

これらが慢性化してしまう前に、自分にとっての“ライン”を明確にし、「ここまで我慢したら転職も検討する」という指標を持つことが大切です。

最近では、「有給取得率が高い企業」や「制度と実態が一致している会社」を可視化するサービスも増えており、自分に合った働き方がしやすくなっています。

転職を考えることは、逃げではありません。
むしろ「自分の時間を大切にしたい」という、健全な自己決定の一つなのです。

ポイント

  1. 有給の申請と拒否は必ず記録に残し、証拠として保管しておくのが鉄則。
  2. 社内外の相談機関を段階的に活用し、冷静かつ実務的に対処することが重要。
  3. 休めない職場に固執せず、自分の価値観を守る転職という選択肢も考えてみましょう。

6. 有給を「取れない職場」から「取りやすい職場」へ変えるには

制度と意識、そして小さな実践の積み重ねが職場文化を変えていきます。

「制度では取れるはずなのに、実際は取れない」――。
これは、法制度や上司個人の問題だけでなく、“職場文化”そのものに根ざした構造的な問題でもあります。

有給休暇を誰もが気兼ねなく取得できる職場にするには、ただ上司に申請するだけでは不十分です。
この章では、企業全体・チーム単位・個人の工夫と意識改革の3段階から、「取りやすい職場」の作り方を具体的に考えていきましょう。

6-1. 取得率向上を実現した企業の工夫と成功要因

実際に有給取得率が高い企業には、いくつか共通点があります。

✅ 年間の取得計画をあらかじめ提出させる制度
✅ 部署単位で「取得率目標」を掲げる
✅ 上司の取得が積極的に行われている(ロールモデル)
✅ 勤怠システムで上司承認を不要にしている
✅ 社内報などで“休みを取ること”のメリットを定期発信

たとえば、あるIT企業では、上司と部下が年初に年間有給取得計画を立てて提出する制度を導入。
その際、「最低5日は必ず取るように」と明示されており、上司側にも取得を促すKPI(目標)があります。

この企業では、数年で取得率が70%以上に向上し、離職率の低下や健康診断結果の改善も報告されました。

つまり、有給取得の文化は「放っておくと取れなくなる」ものであり、組織が意識的に仕掛けていく必要があるのです。

6-2. 自分が最初の一人になる勇気とその影響

「誰も取っていないから、自分も取れない」――この思考が最も文化を停滞させる原因です。

けれど、逆に「自分が取ることで周りに道を開く」という行動は、職場にとって非常に大きな意味を持ちます。

ある介護施設で働く30代女性は、ずっと“有給を出しづらい”雰囲気の中で働いていました。
ある日、彼女は「家庭の事情でどうしても必要」と伝え、勇気を出して2連休の有給申請を出したところ、想像以上にあっさりと通ったのです。

このエピソードがきっかけで、「〇〇さんが休めたなら、自分も」と他の職員も動き始め、2ヶ月後にはチーム全体の取得率が20%改善したといいます。

「空気」に流されるのではなく、自ら“空気を変える人”になる――。
それが、文化改革の起点です。

6-3. 職場でルールと慣習を可視化する仕組み作り

有給が取りにくくなる背景には、制度と実態のズレがあります。
例えば、「取得推奨」と書いてあるが、実際には「忙しいから無理」と言われる職場では、“見えない慣習”が制度の上にのしかかっているのです。

そこで効果的なのが、制度と現場のルールを“見える化”することです。

以下のような方法が有効です

  • 年間の取得状況をチーム内で共有する(数値だけでOK)
  • 月初に「取得予定日」を表形式で書き出して共有
  • 上司も同様に“いつ休むか”を明示し、モデル化する
  • チャットツールや掲示板に「今月の有給取得者」を記録する

こうした取り組みは、「誰がいつ休むか」が明確になり、調整しやすくなる環境作りにも繋がります。

大切なのは、「制度を守る」だけではなく、仕組みによって“取得しやすい雰囲気”を生み出すこと
文化は、目に見えるものと行動の積み重ねでしか変わりません。

ポイント

  1. 有給取得率が高い職場には制度的・文化的な工夫がセットで整備されている。
  2. 最初の1人が取得する勇気が、職場全体の空気と慣習を変える原動力になる。
  3. ルールと現場の実態を可視化し、日常の仕組みに落とし込むことが改革の鍵。

7. Q&A:よくある質問

7-1. 有給は好きな日に取れるのが法律上の原則?

はい、原則として労働者が指定した日に取得できるのが法律のルールです。

労働基準法第39条では、年次有給休暇は労働者が「時季を指定」して取得するものとされており、会社が勝手に拒否したり、理由を求めたりすることはできません。

ただし、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限って、会社が時季を変更すること(時季変更権)が認められています。
この例外は非常に限定的で、「単に忙しいから」「誰かとかぶるから」などは本来通用しません。

7-2. 「忙しいからダメ」と言われたら、どうすればいい?

まずは口頭ではなく、文面で申請を行いましょう
メールや勤怠システムで記録を残しておくことで、言い逃れを防げます。

次に、「どのような理由で時季変更が必要なのか?」と丁寧に尋ねてみてください。
法的に許される拒否はあくまで「事業の運営に著しい支障が出る場合」のみであり、忙しさを理由に断ることは原則NGです。

拒否が繰り返される場合、社内の人事部門や、労働基準監督署など外部機関への相談も検討しましょう。

7-3. 派遣社員やアルバイトでも有給は取れる?

はい、条件を満たせば全ての労働者に有給休暇は発生します。

派遣社員・契約社員・パートタイマー・アルバイトなど、雇用形態を問わず、下記の条件を満たせば有給の権利が発生します

  • 雇用開始から6か月が経過している
  • 所定労働日の8割以上を出勤している

フルタイムでない場合は、出勤日数に応じて比例付与される形ですが、「社員じゃないから有給はない」というのは完全な誤解です。

7-4. 他の人との調整が前提なのは違法?

調整自体は悪いことではありませんが、それが強制になると問題です。

「誰かと相談してからじゃないと申請できない」「先に休んだ人が優先」といった職場の慣習は、労働者の時季指定権を制限する行為になりかねません。

協力的に休むことは望ましいですが、調整を強制されることで取得を断念してしまう状態が常態化しているなら、それは制度としても問題があります。

そのような場合は、上司に「協力の意志はあるが、調整が前提となるなら申請が事実上難しくなっている」と丁寧に説明してみましょう。

7-5. 有給を申請しただけで評価に響くのは違法?

評価の仕組みに「有給を使わないこと」が反映されている場合、違法の可能性があります。

たとえば、以下のような評価制度はリスクが高いです

  • 有給を取ると「やる気がない」とみなされる
  • 取得数が少ない社員を“勤怠が安定している”と高評価
  • 休暇取得者に対し「周囲に迷惑をかけている」とコメント

有給取得は労働者の正当な権利であり、それを使ったことでマイナス評価を受けることは原則として許されません
ただし、休暇中に連絡が取れない、業務引き継ぎを怠ったなど、行動面での評価とは分けて考える必要があります。

もし評価制度そのものに偏りがあると感じた場合は、上司ではなく人事や外部相談機関に共有するのが効果的です。

ポイント

  1. 労働者は原則「好きな時に有給を取れる」法的権利を持っている。
  2. 口頭での申請や曖昧な断りには記録を残し、冷静に対応することが重要。
  3. 非正規雇用でも条件を満たせば有給は必ず付与される。

8. まとめ:有給が取れない現状から抜け出すための視点と行動

職場の慣習に屈せず、情報と交渉力で有給取得を現実にしていきましょう。

本記事を通じて、「有給が好きな時に取れない」問題に直面している方に向けて、制度の仕組みから具体的な交渉方法、そして職場環境の改善まで、段階的なアプローチを提示してきました。

振り返れば、有給休暇は法的に保障された労働者の正当な権利であり、本来は誰にも気兼ねせず、自由に使えるものであるはずです。
しかし現実には、制度の誤解、組織文化、上司の価値観、同調圧力などが複雑に絡み合い、「実質的には取れない」状況が生まれています。

「有給を取る」ことは“特別”ではなく“日常”にするべき

職場によっては、有給取得を「特別なお願い」のように捉える文化が残っており、「空気を読め」「忙しいときに申請するな」といった声が暗に存在しています。
この空気に屈してしまうと、制度があっても絵に描いた餅にすぎません。

しかし、有給を取るという行為は、自分の健康・家族・学び・回復・余暇を守るために不可欠な“自己投資”でもあります。
他者への配慮はもちろん大切ですが、自分の時間や体調を犠牲にし続けることは、決して美徳ではありません

小さな実践の積み重ねが“文化”を変える

取れないなら諦めるのではなく、まずは「どうすれば取れるか」を前提に考えましょう。

  • 伝え方を工夫する
  • チーム内で調整する
  • 記録を残して申請する
  • 相談窓口を活用する
  • 最後は職場そのものを変える選択もある

こうした行動のひとつひとつが、職場全体の文化にじわじわと影響を与えていきます。
そして、あなたが「取れるようになった」ことが、周囲の人たちにとっても“取得しやすさ”の道しるべになるのです。

「我慢の美徳」から「選択の主体」へ

かつての日本型雇用では、「休まず働くこと」が忠誠心と見なされ、評価される時代がありました。
しかし今は違います。心身の健康、ワークライフバランス、多様な働き方が重視される社会へと変化しています。

「取れるのに取らない」状態は、もはや自己責任ではなく職場全体の課題です。
まずは自分が声を上げ、小さな一歩を踏み出すこと。
それが、「休める職場」を実現する確かな原動力になります。

ポイント

  1. 有給を取れない空気に流されず、自分の生活と権利を守る行動を起こすことが重要。
  2. 伝え方、準備、相談先の活用など、現実に即した実践が文化を変える力となる。
  3. “我慢”ではなく、“選択できる自分”を目指す姿勢が、働きやすさを導く。

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